未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

文字の大きさ
121 / 215
異次元からの侵略者

第121話 限界を越えた

しおりを挟む
 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 激戦を極めた北部戦線の戦い。
 異次元からの侵略者は、衛星基地ソゴムの内部に出来た次元の扉からやってきていた!
 ソゴム内部の次元の歪みを切り裂いて、裏の次元にやってきたマイとユアとメドーラの三人。
 次元の歪みの向こうに広がる、ソゴムと同様の景色に驚くが、情報収集のため、第五作戦本部に向かう。
 そしていつ間にか、120話になったこの作品。
 今まではひとつの章に40話使ってきたのだが、この章の終わりは、まだ見えない。


 霊源甲冑を壊しながら、出口へ向かうマイ達三人。
 最初に出口にたどり着いたのは、メドーラだった。
 メドーラの装備するグローブは、インパクトの瞬間、殴られた物体から生じる作用反作用の法則のチカラのベクトルを、正反対にする事が出来る。
 柔らかい物体にはさほど効果はないが、硬い物体には効果はバツグン。
 さらにメドーラは今、強化アシストパーツを装備中。
 霊源甲冑など、劣化プラスチックみたいに、すんなりと粉々に破壊される。

 それに比べて、マイは苦戦する。
 マイのトンファーでの打撃は、強化アシストパーツで強化されている。
 それでもマイの打撃は、霊源甲冑をへこませるだけだった。
 そのへこみに二撃三撃加えて、やっと表面を裂く事が出来た。

 出口にたどり着いたメドーラが振り返ると、ユアが霊源甲冑の裏側に剣を突き立てるのが、見てとれる。
「ふふ、そうだった。」
 メドーラは、霊源甲冑の弱点を思い出す。
 乗り手の霊力が集中する部位を壊せば、霊源甲冑は動かなくなる。

 そんな事も思い出せないなんて、私もまだまだだな。

 メドーラの心の奥底から、先ほどまでの激しい憎悪が、嘘のように消えていく。
 つか、そんなさっきまでの自分が、おかしく思える。

「どったの、メドーラ。すごい笑顔だけど。」
 メドーラの居る出口にたどり着いたユアが、メドーラの表情を見て、ひと言言った。

 そっか、今の私は、笑顔なんだ。
 メドーラもユアに言われて、はじめて気がついた。
「これも、ユアお姉さまのおかげですわ。」
 霊源甲冑の弱点に気づかせてくれたユアに対し、礼を言う。
「え、私は何もしてないよ?」
 いきなり自分のおかげと言われても、ユアは戸惑う。

「いいえ、あなたは行動で示してくださいましたわ。」
 そう言いながら、メドーラのソウルブレイドが形を変えていく。
 両手のグローブはゴツい光線銃に、その形状を変える。

「それって、ロックオンレーザー?」
 メドーラの作り出す武器の形状を見て、ユアは驚く。

 ロックオンレーザーとは、文字通りロックオンした標的を撃ち抜くレーザーである。
 そのロックオン出来る標的は、数に限りはない。
 無限にロックオンでき、一度に破壊する事が出来る。
 当然、ソウルブレイドを展開させて作り出すような武器ではない。
 戦闘機などの搭乗型や、操作型の兵器に搭載する代物である。
 人が携帯して使うにしても、専用のユニットパーツが必要である。
 そしてこの武器の運用には、サポートAIの補助が必要である。

 ロックオンレーザーの性質をユアが思い出してる横で、メドーラの持つロックオンレーザーの銃口に、エネルギーが集まっていく。
 霊源甲冑の霊力増幅装置を次々にロックオンしているのが分かる。

「駄目よ、メドーラ!」
 ユアは思わず叫ぶ。

 ソウルブレイドとは、文字通りソウル、精神力を具現化した武器である。
 ブレイドと言いながら、様々な武器に形状変化出来る。
 しかし、剣からかけ離れた武器を作り出す場合、かなりの精神力を必要とする!
 光線銃くらいならともかく、ロックオンレーザーなんて、精神力が保つ訳がない!

「ごめんなさい、ユアお姉さま。」
 メドーラも、ユアの言いたい事は分かる。
「私には、こいつらをこのまま放っておく事など、出来ません。」
 メドーラの霊源甲冑に対する憎しみは、余りにも根深かった。

 メドーラはユアの不安を吹き飛ばすよう、マイに向かって叫ぶ。
「マイお姉さま、遅いですわよ!」
 マイはまだ、半分の距離しか進んでいない。
 トンファーごときでやみくもにぶっ叩いても、霊源甲冑には、あまり効果はなかった。
「ごめん、メドーラ。武器の選択、ミスったみたい!」
 マイは、霊源甲冑を壊して進もうと言った手前、メドーラに申し訳なく思う。

「あとは私がやりますので、マイお姉さまも、こちらに来てください。」
 メドーラはにこやかな声で、マイに応える。
 マイも、メドーラが何か攻撃しようとしてる事に、気がついた。
「分かったよ、メドーラ。」
 マイはトンファーを元のソウルブレイドのクダに戻すと、霊源甲冑を無視して出口に向かう。

「ホーミング、シュート!」
 ビビビビピッツァアアーンン!!

 ロックオンレーザーは、けたましい爆音とともに放たれ、全ての霊源甲冑の霊力増幅装置を、破壊する。
 同時に、ロックオンレーザーは元のソウルブレイドのクダに戻り、床に落ちる。
 クダの先から煙が立ち上り、全体的に火花がパチパチいっている。
 無茶な使い方をしたため、ぶっ壊れたのだ。
 そしてメドーラはしゃがみこむ。

「ばか、なんでこんな無茶すんのよ!」
 ユアはメドーラの左肩に右手を置き、どなる。
 メドーラの精神力はすでに尽き、意識を保っている事が奇跡な状況だ。
「わ、私は平気。」
「どこがよ!」
 強がるメドーラを、ユアは否定する。
 そんなユアを無視するかのように、メドーラは右手を動かして、前方を指さす。
「私より、マイお姉さまが、」
 メドーラの言葉に、ユアはハッとして後ろを振り向く。

 マイは仁王立ちしたまま、息が荒い。
 強化アシストパーツからは、火花が散っている。

「もう、無茶な使い方するから。」
 ユアはマイに駆け寄ると、マイの強化アシストパーツをはずす。
 その間、マイは仁王立ちしたまま、肩で息をするだけだった。

 身体を思うように動かせない。
 頭で身体を動かそうとしても、その神経伝達が何かに阻害されてるような感覚だった。
 マイはユアにお礼をひと言言いたかったが、その言葉を発する事さえ出来ない。
「今は呼吸を整えて。」
 そんなマイに、逆にユアが声をかける。
「チカラを出し過ぎた反動がきてるのよ。
 深く呼吸して。酸素を身体の隅々に行き渡らせるイメージで。」
 マイは言われた通り、深く呼吸する。

 この強化アシストパーツとは、瞬間的なパワーが欲しい時に使う物である。
 継続的なパワーの維持の為に、使う物ではない。
 人の身体は、持てるチカラの三割しか、普段は発揮出来ない。
 十割のチカラに、人の身体は耐えられないからだ。
 強化アシストパーツも、その普段は使っていないチカラを引き出しているに、すぎない。
 マイ達召喚者のアバター体も、人の身体と原理は同じだ。

 マイは知らなかった。
 強化アシストパーツとは、どの様な物であるのかを。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Re:コード・ブレイカー ~落ちこぼれと嘲られた少年、世界最強の異能で全てをねじ伏せる~

たまごころ
ファンタジー
高校生・篠宮レンは、異能が当然の時代に“無能”として蔑まれていた。 だがある日、封印された最古の力【再構築(Rewrite)】が覚醒。 世界の理(コード)を上書きする力を手に入れた彼は、かつて自分を見下した者たちに逆襲し、隠された古代組織と激突していく。 「最弱」から「神域」へ――現代異能バトル成り上がり譚が幕を開ける。

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

処理中です...