未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

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異次元からの侵略者

第156話 神武七龍神をもうひとり登場させてみた

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 超高次元空間に突入したマイとユアとメドーラの三人。
 三人の戦闘機が変形合身したオメガクロス、そこから二段変形したバイワンラァン。
 これらを駆使してついに、神武七龍神ブルードラゴンを討ち取った。
 しかし、それに対する犠牲も大きかった。
 ユアが死に、この次元空間で生きていたケイも犠牲になった。
 ふたりの魂は、召喚される前の元の時代に還された。
 元の肉体がまだ処分されてなければ、生き続ける事は出来る。
 しかし、その肉体が無ければ、死ぬだけだ。
 この時代への召喚は、ひと夜の夢の様に例えられる。
 しかしそれは、長期間の召喚ならば、その限りではなかった。
 ブルードラゴンはミズキと言う少女の姿で、オメガクロスの手の中で眠っている。


 超高次元空間にて立ち尽くすオメガクロス。
 マイとメドーラは、元の次元空間、衛星基地ソゴムへの帰還方法を失っていた。
 次元を超越するには、三機の機体によるトライフォースが必要だった。
 しかし今、ユアがいない。
 戦闘機三機を必要とするトライフォースは出来なかった。
 そしてその三機が変形合身したオメガクロスには、次元を超越する機能は無かった。
 今変形合身を解除したら、再びオメガクロスになる事も出来ない。

「困りましたわ、マイお姉さま。どうしましょう。」
「そんなの、僕に分かるわけないじゃん。」
 メドーラに問いかけられても、マイは困惑するだけだった。
「だから、今の頼みの綱はミズキだけなんだけど。」
 マイはオメガクロスの手をゆする。
 オメガクロスの手のひらの上で寝息をたてるミズキは、そのまま寝続ける。
 ブルードラゴンは己れの全ての燐気を投入した、超巨大なブルードラゴンの姿で、討ち取られた。
 だから今、ミズキの姿とは言え、その姿を顕現させてる事自体、奇跡と言える。

 メドーラには、その事がよく分かっていた。
「打つ手なし、ですわね。」
「そんなの、駄目だよ。
 ねえ、起きてよ、ミズキ。」
 マイはオメガクロスの手のひらをゆすり、ミズキに呼びかけ続ける。
「マイお姉さま、おそらくミズキはこのまま目覚めません。」
 メドーラはマイの行為を諌める。
「駄目だよ、そんなの。
 僕達は、帰らなくちゃいけないんだ。」
 そう言うマイも、オメガクロスの手のひらをゆするのをやめる。
 ミズキの健やかな寝顔を見るうちに、このまま寝かせておきたいと、思ってしまった。

「僕達は、帰らなくちゃいけないのに。」
 マイはミズキの寝顔を見ながら、涙ぐむ。
「いいではありませんか。」
 対してメドーラは、達観する。
「ここでマイお姉さまと過ごすのも、悪くない気がします。」
 メドーラは目を閉じてほほえむ。

 千年前に死んだはずのケイも、この超高次元空間で生きていた。
 それはつまり、ここは時間の流れが違うという事だろう。
 この超高次元空間への移動も安定して可能になる時が、いつかきっとくる。
 その時この超高次元空間を訪れた人に救助を頼めば、帰還は可能。
 そして時間の流れが違うらしいこの次元空間なら、生きてるうちにその時は、きっとくる。
 問題は、元の次元空間に戻った時、何年経過してるかだけだ。
 おそらく、千年、二千年単位でのズレは、覚悟しなければなるまい。

「だから、駄目だって。そんなの。」
 マイは涙ながらに、メドーラの意見を否定する。
「マイお姉さま?」
 メドーラは閉じてた瞳を開けて、マイ見つめる。
「僕達の帰りを待ってる人がいるんだよ、帰らなくちゃ。」
 マイはミズキの寝顔を見て、涙があふれる。
「ちゃんと、ユウにも言わなくちゃ。ユアの事を。」

 ユウとは、この超高次元空間で犠牲になったユアの、パートナーであるサポートAIである。
 サポートAIとのつながりが絶たれている今、ユウはユアの事を知らない。

「ですが、現状どうしようもありませんわ。」
 メドーラはマイに、優しく話しかける。
「でも、僕達は帰らなくちゃ。」
 マイはあふれる涙にこらえきれず、その瞳を閉じる。

「そんなの、ミズキを叩き起こせばいいじゃろ。」

「それが出来ないから、悩んでるんじゃないか!」
 マイは涙をふいて眼を見開き、メドーラに怒鳴る。
 メドーラは首をふる。
 今の台詞は、自分ではないと。
「え、じゃあ誰?」
 マイはそう言うが、その心当たりはあった。

「ナツキ、なの?」
 マイがその名を口にすると、オメガクロスのコックピットの前方の空間に、ひとりの女性が現れる。
 緑色の簡易ドレスに身を包んだ18歳くらいのこの女性こそ、神武七龍神のグリーンドラゴンが化身した姿だった。

「マイよ、礼を言うぞ。我が友ブルードラゴンを止めてくれて。」
 ナツキはにっこりとほほえむ。
「でも、ユアが死んじゃった。僕達も帰れなくなっちゃった。」
 応えるマイの声がしずむ。
「ユアとな?
 その者はちゃんと、生きておるぞよ。」
「え、ほんと?」
 ナツキの言葉に、マイの瞳にも希望が戻る。
「本当じゃとも。元の時代で、元気にしておるぞよ。」
「よかった。本当によかった。」
 マイの瞳から、涙があるれる。
 とは言え、ユアはもうこの時代には存在しない。
 永遠の別れである事には、違いない。

「ちゃんとユウにも報告しなければ、なりませんですわね、マイお姉さま。」
「うん、分かってるよ。」
 メドーラの呼びかけに応えるマイ。
 マイの表情は、ユアとはもう会えない悲しみよりも、ユアが生きていてくれた事への喜びの方が、まさっていた。

「あとは、どうやってこの次元空間から、抜け出るか、ですね。」
 メドーラはマイに対してほほえみかける。
「そうだよ。ねえ、ナツキ。」
 マイは顔をあげ、ナツキに呼びかける。
「あなたなら、この次元空間から僕達を、脱出させる事が出来るんじゃない?」
 マイの問いかけに、ナツキの表情が一瞬くもる。

「その事なのじゃが、ここはミズキの精神世界のようなもの。
 いくらグリーンドラゴンの我とて、自由に出入りは出来ぬのじゃ。」
 ナツキはマイの言霊を経て、この次元空間に顕現出来た。
 そんなナツキも、ここから抜け出る方法は、マイ達と変わらない。
「つまり、ここから脱出すのには、ブルードラゴンの力が必要って事ですね。」
 気落ちするマイに代わって、メドーラが尋ねる。
「そういう事じゃ。」
「でも、ミズキを起こすなんて、出来ないよ。」
 マイはオメガクロスの胸の位置にある、コックピットの前方にいるナツキから視線をそらして、手のひらの上で眠るミズキに視線を向ける。
 6歳くらいのかわいらしいこの寝顔を、マイは護りたかった。

「その事なら、我に任せろ。
 なぜ我がここに来たと、思うておるのじゃ。」
 ナツキの言葉に、きょとんとするマイ。
 対して何かを察したメドーラ。
「帰れるのですね、私達。」
「え、そうなの?」
 マイは事態をのみこめないまま、ナツキに尋ねる。
「ああ、我に任せるのじゃ。」
 と言って、ナツキはニヤリとほくそえむ。

 それを見て、マイの表情にも希望の光が現れる。
 そんなマイの表情を見て、ナツキも少し安堵する。

「さて、後はミズキに我の燐気を分けてやれば、げ。」
 ミズキの寝顔を見て、ナツキは絶句する。
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