未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

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異次元からの侵略者

第164話 お伽話って以外と科学的

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 北部戦線に姿を現したブルードラゴンは、マイ達三人の戦闘機を手にしている。
 三身合体オメガクロスの形状から、元の三機の戦闘機に戻っていた。
 そしてマイ達の生死は不明。
 コックピットを破壊されたユアは絶望的だとして、マイとメドーラは生存の可能性は高い。
 リムはそう信じている。
 三人の機体を引き取りに向かうリム。
 その足取りは、文字通り軽かった。


「身体が軽いわ。」
 リムは自分の戦闘機へと走る。
「信じられません。アバター体の損傷が、全て治っています。」
 ナコもリムの現状に驚く。
 右目の視界が、青みがかる以外、リムのアバター体は完全復活している。
 だけど、ナコは感じる。
 今のリムは、アバター体と言うより、生身の身体に近い事を。
 しかし、ナコは敢えてその事の明言をさける。
 リムの死亡リスクは無くなったのかもしれないが、この身体が脱出用システムに対応出来るか、よく分からなかった。

「状況は、分かってるわよね。
 あの竜の事も、ちゃんと伝わった?」
 リムは走りながら、ナコに尋ねる。
 前回の青い竜との会話。
 青い竜の存在は、この北部戦線にて、リムしか感じ取れなかった。
 と言うか、青い竜はリムとしか会話していない。
 もし、リム以外にも青い竜の存在を感じ取れた者が居たなら、青い竜の独り言に聞こえただろう。
 リムの側にいて、リムの声が聞こえない限り。

「相手は竜でしたか。
 私は、あなたが感じ取った言葉しか、分かりませんでした。」
「なら、現状認識は、一致してるわね?」
「ええ、その竜を怒らせたら、ヤバい。
 我々は、瞬時に全滅する。」
 ナコの答えに、リムはうなずく。

「まったく、厄介な相手よね。
 マイ達は、あの竜を相手にしたのかしら。」
 あの竜がマイ達の機体を手にしてるという事は、そう考えるのが妥当だろう。
 そうこうするうちに、リムは格納庫にたどり着く。

「もしかしたら、神武七龍神かもしれません。」
「神武七龍神?」
 戦闘機に飛び乗るリムに、ナコはそう話しかける。
「ええ、宇宙開闢以前から存在すると言われる、伝説の存在。」
「何そのお伽話。」
 戦闘機の計器類をいじりながら、リムはそう答える。

 お伽話。
 当時は科学的に解明されていなかった事も、今の時代なら、科学的に解明されている。
 桃に中に男の子がいた事も、竹の中に女の子がいた事も。
 それは当時の常識を超越していたため、当時の常識の範囲内で表現したにすぎない。
 つまりリムは、神武七龍神という言葉も、その様なものと解釈した。

「なんなの、これ。」
 リムは、戦闘機の状態に驚く。
「誰が整備したのかしら。」
 それは、ナコも同様だった。
 シリウスシリーズの戦闘機の整備には、特殊な工具が必要だった。
 この戦艦にその様な整備用具は無く、それが出来る人もいなかった。
 それに、ほとんど空だった燃料も、ほぼ満タンになっている。
 この燃料も、専用な物が必要で、この戦艦には無い物だった。
「何でしょう、このお伽話。」
 ナコは、先ほどのリムの言葉を借りる。
「そのうち、解明される日がくるわ。お伽話なら。」
 リムは、戦闘機を発進させる。

 北部戦線に飛び出すリムの戦闘機、シリウスベータエックス。
 リムの飛ぶ北部戦線は、驚くほど静まりかえっていた。
 こちら側の無数の戦艦は、動きを止めている。
 そして相手方の戦艦なのだが、青いモヤに隠れているのか、一隻も確認出来なかった。
 先ほどまで、あれほど激しく戦闘を繰り広げたと言うのに。
 これにはリムも、何か不気味な物を感じる。

「アイの眼が覚めました。」
 マイ達三人の所へ到着直前に、ナコが気がつく。
「ほんと、マイは無事なの?」
 リムはナコに尋ねる。
「駄目。寝ぼけてて、要領を得ないわ。
 リム、そっちは任せるわ。」
「分かった。」
 ナコは、目覚めたアイの相手をする。
 それは、リムの戦闘機の車輪が下されるのとほぼ同時だった。

「マイ、無事ぃ?」
 アイが起きたのなら、パートナーであるマイにも、何か変化あるかもしれない。
 リムはマイに話しかけてみる。
 リムは戦闘機の上から、三機の戦闘機を見下ろす。
 マイとメドーラの機体には、これと言った損傷は見られない。
 だけどユアの機体だけ、損傷していた。
 コックピット部分だけ、すっぽり切り抜かれたかのようだった。

「リム?」
 マイから通信が入る。
「リム無事だったんだね。よかった。」
 マイの声は、涙声だった。
「ちょっと、何であなたが泣くのよ。普通は逆でしょ。」
 マイの第一声に、リムは少し呆れる。
「だって僕、リムは死んじゃったと思ったから。」

 それは、マイが衛星基地ソゴムを目指す際、足止めを受けた所をリムに助けられた。
 マイはこの時、リムは死んでしまったと思っていた。
 パートナーのアイも、リムの生死を明確にしなかった。

「わ、私があれくらいで死ぬわけないでしょ。」
 とリムも強がってみせる。
 もし助けが来なければ、リムは死んでいた。
 だけどリムは、その事を隠したままにした。

「マイ、ユアはやっぱり、」
 リムはユアの事を聞いてみるが、それ以上言葉にならなかった。
「うん。僕がしっかりしていれば、」
 マイも、言葉がつまる。
「そう、この竜を相手にだと、一筋縄では行きそうにないわね。」
「違う。ユアを殺したのは、僕だよ。僕が、」
 とマイは言いかけて、リムがこの竜と言ったのが気にかかる。
「竜?」
 よく見るとこの場所は、竜の左手みたいだ。
 それに気がついたマイは、反射的に後ろを見る。
 左手に呼応して、顔があるであろう位置を。

 その場所には、青い竜の顔があった。
「ミズキ。それがこの次元での姿なのね。」
 それは、超高次元空間でマイが目にした、どのブルードラゴンの形態とも違っていた。
 青い竜の顔は、高い位置からマイ達を優しげな表情で見下ろしている。
「ありがとう、ミズキ。」
 マイは礼を言う。
 この次元に帰って来れた事に対して。
 青い竜は、かすかにうなずく。
 この次元に留まれるのも、あとわずかなのだが、マイは気がついていない。

「ミズキ?」
 リムもマイが口にしたその名を口にする。
「そう、神武七龍神のミズキが、僕たちを助けてくれたんだよ。」
「神武七龍神?あのお伽話の?」
 リムは少し前の話しを思い出す。
「お伽話じゃないよ。本当の話しだよ。」
 と言ってマイは、青い竜の顔を見上げる。
 そして、青い竜を形作る青いモヤが、薄れている事に気がつく。

「そうだミズキ。
 こっちはみんな、避難出来たの?」
 マイは衛星基地ソゴムに目を落とす。
「ああ。そこにはすでに、誰もいない。
 後は痕跡を消すだけだ。」
「そう、後は僕たちが早く退くだけね。」
「ああ、話しが早くて助かる。」

 マイ達のいる青い竜の手のひらが、消えかける。
「リム、ユアの機体をお願い。
 僕はメドーラの機体を運ぶから。」
「わ、分かったわ。」
 こちらに指示を出すマイに、リムは少しめんくらう。
 少し前の、衛星基地ソゴム突入以前のマイには、考えられない事だった。
 考えられる事とすれば、ユアの死が、マイに何かをもたらしたのだろう。
 ここら辺の事は、サポートAIとはつながっていなかった時の事のため、マイに直接聞く必要がある。
 少し前のマイとは違い、今のマイなら、自分から話してくれるかもしれない。

「ヒューマノイドチェンジ!」
 リムは機体を人型に変える。
 そしてユアの機体を抱えると、その場を後にする。
 リムは、後方に遠ざかる青い竜に、意識を向ける。
「あなた、ミズキって言うのね。」
 対して、答えはなかった。
 青いモヤの残存量からして、意思疎通に使える余力は、ないのだろう。
「さよならは言わないわ。また会いましょう、ミズキ。」

「ヒューマノイドシルエット!」
 マイは自分の戦闘機に、人型機体のイメージを投影する。
 操縦系が投影されたイメージとつながると、メドーラの機体を抱きかかえる。
「マイお姉さま?」
 眼が覚めたばかりのメドーラは、どこか寝ぼけまなこだ。
「帰るよ、メドーラ。」
「はい、マイお姉さま。」
 マイの機体も、その場を後にする。

 リムとマイの機体が戦艦に収容されると同時に、青いモヤは消える。
 と同時に、青い閃光が炸裂!

 この場の全ての戦艦が、一光年ほど後方に、瞬時に飛ばされる。
 なぜか、コアブレイカーだけを残して。

 そして、衛星基地ソゴムは破壊された。
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