未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

文字の大きさ
165 / 215
異次元からの侵略者

第165話 少し昔の話しをしよう

しおりを挟む
 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 北部戦線の激戦に、ついに終止符が打たれる。
 北部戦線一帯を、突然覆った青いモヤ。
 この青いモヤの中では、いっさいの戦闘行為が不可能だった。
 そしてこの青いモヤは、あるひとつの武器を除いて、全ての存在を一光年ほど遠ざけた。
 この場に残された武器とは、コアブレイカーだった。
 そしてこのコアブレイカーにより、衛星基地ソゴムは破壊される。
 この戦場から、侵略者達の姿が消えた。
 誰を相手に、何を賭けて戦っていたのか。
 それに答えてくれる敵は、もうこの場にはいない。
 戦う相手がいなくなり、北部戦線の激戦は終わった。


 そんな北部戦線からは、時空を遠く離れたある星のある場所。
 湖畔に建つ別荘の一室で、ひとりの女性が目を覚ます。
「っ。」
 女性は身体を右にひねろうとしたが、身体は動かなかった。
 それに対して声が出る所だったが、うまく発音出来なかった。

「あら、眼が覚めたのね。」
 女性の動きを察知して、側にいた別の女性が声をかける。
 寝ていた女性は、その声のする方へと首を傾ける。
 しかし、身体はうまく動かせない。

「無理をしないで、ユア。あなたはずっと寝たきりだったんだから。」
「ユア?」
 側にいた女性は、自ら動いて、ユアと呼ぶ寝ている女性の視界に入る。

 グラマラスな女性。
 ユアと呼ばれた女性は、そのもうひとりの女性を見て、直感的にそう感じた。
 白衣を着たその女性は、見事な赤い髪をしていた。
 腰まで伸びたその赤い髪は、軽くウエーブがかかっている。
 普通はこの赤い髪に最初の印象がいきそうだが、グラマラスな体格に気がいったのは、何故だろうか。
 寝ている方の女性も赤い髪だったが、これほど見事な赤い色はしていない。

「私の名前は、ユアじゃないわ。」
 ユアと呼ばれた女性は、その名を否定する。
「あら、それなら、あなたの名前は、何かしら?」
 グラマラスな女性は、にっこりとユアと呼ぶ女性に問いかける。
「私の名前は、あれ、何故かしら、思い出せないわ。」
 ユアと呼ばれた女性は、自分の名前を思い出せなかった。

「お、お嬢さま。」
 丁度この時、寝室の扉が開かれる。
 この館のメイドが、ユアと呼ばれた女性が目覚めている事に驚く。
「ええ、お嬢さまにはまだ安静が必要だけど、眼が覚めたわ。」
 グラマラスな女性が、メイドに声をかける。
「はい。旦那さまがたに、お知らせして参りますわ。」
 メイドは喜びに涙を浮かべ、扉を閉めるとそのまま駆け出した。

「ねえ、お嬢さまって、私の事?」
 ユアと呼ばれた女性は、グラマラスな女性に問いかける。
「あら、自分がなんて呼ばれてたのかも、思い出せないのね。
 まだ記憶が混濁しているようね。」
 と答えるグラマラスな女性を、ユアと呼ばれた女性は、じっと見つめている。

「あなたには、会った事がある様な気がするわ。
 ねえ、あなたの名前を、教えてくださらない?」
 ユアと呼ばれた女性は、問いかける。
「私?私の名前は、ユウよ。」
「ユウ?あなたはあなた〔you)なの?」
「ええ、そうよ。私はユウ。」
 ユウと答えた女性は、ユアと呼ばれた女性の視線を、しっかりと受け止める。
 そして、優しく見つめ返す。

 そんな名前のはずがない。
 と思うのだが、何故かその名がしっくりときた。
 そして自分に対するユアと言う名前も、何故かしっくりくる。
「何故かしら、そんな気がしてきたわ。
 夢で会ったのかしら。」
 名前については全否定したいのだが、それを出来ない自分がいた。

「どんな夢を、見てたのかしら。」
 ユウと名乗るグラマラスな女性が、問いかける。
「夢?」
 ユアと呼ばれた女性は、夢の記憶をさかのぼる。
 そして、おもむろに右手を宙に伸ばし、虚空を掴む。
「剣で、戦ってた様な、気がするわ。」
「剣?」
「剣と言うか、剣は握りの部分しか無くて、刀身は自在に伸びてくる感じだったわ。」
 と、ユアと呼ばれた女性は、ふりかえる。

「まるで、ライトセイバーみたいね。スターウォーズの。」
 ユウと名乗る女性は、SF映画の名を口にする。
「ライトセイバー?」
「そ、知らない?スターウォーズ。」
「それは知ってるわ。」

 ユアと呼ばれた女性の、スターウォーズに対する知識。
 それは人類がまだ宇宙に飛び立てなかった原始時代、当時の妄想を元にして作られた、SF映画。
 その後の宇宙の知識が深まるたびに、映像技術が進歩するたびに、何度も創り続けられた作品だった。
 その映画に出てくるライトセイバーは、5000年以上経ったこの時代でも、再現不能だった。

「でも、ライトセイバーとは違ったわ。」
 ユアと呼ばれた女性は、伸ばした右手の握り方を、色々変えてみる。
「色んな武器に、変化したわ。
 光線銃なんかにも、形を変えたわ。」
「あら、それを実現出来たら、面白そうね。」
 とユウと名乗る女性は、相づちをいれる。
「そうね、これは何とかして、実現したいわね。
 それに、」
 ユアと呼ばれた女性は、ここでまた、記憶をたどる。

「戦闘機で宇宙を飛んでたけれど、あれ、普通に光速飛行してたわね。」
 ユアと呼ばれた女性は、少し考えこむ。
「これ、再現出来るんじゃないかしら。」


 この時代、突然寝込む女性が急増していた。
 そのまま衰弱死するのがほとんどだったが、目を覚ました患者も、少なからず存在した。
 ユアと呼ばれた女性は、超セレブなお嬢さまだった。
 夢で見た技術の再現に、費やす費用も莫大にあった。
 そしてこの謎の寝たきりを追う新聞記者の力をかり、回復した他の者達を集めた。
 とは言え、回復した者はごく僅か。
 さらに、夢の記憶を有している者は、ふたりしかいなかった。

 そしてこの新聞記者は、ケイと名乗ったという。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Re:コード・ブレイカー ~落ちこぼれと嘲られた少年、世界最強の異能で全てをねじ伏せる~

たまごころ
ファンタジー
高校生・篠宮レンは、異能が当然の時代に“無能”として蔑まれていた。 だがある日、封印された最古の力【再構築(Rewrite)】が覚醒。 世界の理(コード)を上書きする力を手に入れた彼は、かつて自分を見下した者たちに逆襲し、隠された古代組織と激突していく。 「最弱」から「神域」へ――現代異能バトル成り上がり譚が幕を開ける。

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

処理中です...