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第210話 シミュレータ戦再び
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これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
この時代に召喚されたマイとマインは、バカンスの最中にトラブルに巻き込まれる。
そんなふたりを助けてくれたのが、教官となったリムの教え子のゼロゴーことイツナだった。
マイとのシミュレータによる対戦は、イツナに多くの事を学ばせた。
マイからのアドバイスもあり、ゼロゴーは以前よりもリム教官の教えを、更に理解出来る様になっていた。
何かを学ぶにあたり、この気づきは大きい。
俗にコツを掴むと言うが、これが有るのと無いのとでは、学習に大きな差がでる。
イツナは次のステージに進むべきと判断したリム教官は、この宇宙ステーション内で学ぶより、広く宇宙に出て学ぶべきと判断する。
つまり、簡単な任務なら、もうこなせるはず。
イツナは、そんな任務につく前に、休暇を与えられて故郷に帰ってきた。
そこにマイとマインが居たのは、単なる偶然なのだろうか。
惑星イプビーナスの衛星、フォルボス。
そこの訓練施設にお邪魔する、マイとマインとイツナの一行。
ここのシミュレータを使わせて下さいと頼むのだが、これがあっさりと了承される。
ここのシミュレータは特殊な物で、その使用にあたっては、事前の手続きが必要だった。
これは、誰かが手を回したのだろうが、それが誰であるかは、今はどうでもいい事だった。多分。
早速マイとイツナの戦闘機が、シミュレータにセットされる。
マイの機体は、シリウスガンマツー。
イツナの機体は、レグルスマークスリー。
この二機の戦闘機がセットされ、衛星フォルボスの上空に、二機のフォログラフ映像が投影される。
マイとイツナはシミュレータ内にセットされた、自分の機体のコックピットにいる。
そのコックピットからの眺めは、上空のフォログラフの機体からの眺めになる。
つまり、地上の機体にいながら、上空での戦闘を体験出来る。
イツナの機体のレグルスマークスリー。
これはマイ達のシリウスシリーズの機体とは、違った構想で造られている。
マイ達みたいにサポートAIに頼らなくても、同様の演算処理が出来る。
これにより、低コストでの高火力が実現した。
そして扱いやすい機体でもあり、連邦警備隊の主力戦闘機になりつつある。
戦闘面においては、シリウスシリーズを遥かに凌ぐ。
「相手はレグルスか。
こりゃまた、キツい戦いになりそうね。」
マインは、そう事前予想をする。
マイには、不利な条件が多すぎた。
マイの乗る機体は、初めて乗るガンマツー。
そして、サポートAIからのサポートもない。
対してレグルスは、そのサポートAIの演算能力を備えている。
ふたりの勝負は、惑星イプビーナス標準時間の正午に開始される。
それまでふたりは、機体を思い思いに動かして、このシミュレータに慣れる。
マイはいつもとは違う操作感覚に戸惑うが、すぐに慣れた。
サポートAIのアイが居ない事に不安を感じるが、それでも何とかなりそうな気がした。
そして勝負開始の正午を迎える。
「いきますよ、マイさん!」
フライングぎみに、イツナが飛び出す。
迫るイツナのレグルスを、マイのシリウスは重力転換で華麗にかわす。
重力転換とは、文字通り重量の向きを変える技法。
通常地上では、その星の中心に向かって重力が働く。
だが、無重力の宇宙空間では、その限りではない。
一応乗組員の安全のために、人工重力は働いている。
上も下も分からない様な空間に、耐えられる様には、人類の身体は設計されていない。
そんな人工重力の向きを変えるのが、重力転換である。
マイの機体は、重力転換により上空へと落ちていく。
マイの機体にかわされたイツナの機体は、弧を描く様に、上空のシリウスを追う。
「甘いですよ、マイさん!」
レグルスは、質量を持ったフォログラフを投影。
それはレグルスと同じ機体、二機の伴機のフォログラフ。
三機の機体による隊列は、トライフォースと呼ばれる、この作品の基本的な戦術である。
「へー、トライフォースが出来る様になったんだ。
やるじゃん。」
三機の機体を同時に動かすのは、そんなに難しくはない。
だけど、実戦に投入となると、少し事情は異なる。
マイは重力転換を利用して、伴機の一機に急接近。
そのまま呆気なく、この伴機を撃墜。
「な、」
一瞬の出来事に、イツナは戸惑う。
「すぐ次の伴機を展開しなさい!」
「は、はい!」
マイの突然の檄に、イツナも即反応する。
新しい伴機のフォログラフを投影する。
マイはすぐさま、その伴機に迫る。
しかしイツナも、同じ手はくわない。
新しい伴機は、マイの突進を何とかかわして、反撃する。
マイの機体はこの伴機にかわされた後、少し軌道を変える。
その軌道の先には、もう一機の伴機があった。
マイの機体を後ろから追う伴機と、一直線上に並ぶ。
マイは自分の機体を、その直線上から少しそらす。
イツナの伴機は正面衝突しそうになるが、ぎりぎりで回避する。
「そんな手は、くいませんよ、マイさん!」
「いや、そんなつけ込まれ方をされる事自体が、問題なんだよ。」
イツナの反論を聞いて、マインはつぶやく。
「トライフォースを使える様になったのは、驚いたよ。」
と言うマイの言葉には、ちょっとニヤけが入る。
「さあ、これはどう対処する?」
マイは機体を反転、イツナの乗るレグルスに迫る。
「く」
イツナは大きく弧を描いてマイの右翼側に移動する。
マイもイツナの機体を追い続ける。
イツナの機体は、マイの機体に対して、常に横を向いてる形になる。
そんなイツナの機体に、マイは機銃掃射。
しかしその攻撃は、イツナの機体の後ろにそれる。
マイが今乗る機体、ガンマツーの旋回性能では、これが限界だった。
「やっぱりね。」
いつもの様にはいかない攻撃に、マイはニヤける。
これはいつものアルファーワンと、このガンマツーの性能差というより、マイとの相性の問題だった。
そんなマイに対して突然のレーザー光線!
右側上空と、左側上空からの同時攻撃!
イツナの伴機二機からの攻撃だ。
マイは機体を左へ60度ほど傾ける。
そしてエンジン出力を最低限まで下げる。
これによりマイの機体は推進力を失う。
宇宙空間でそれをやるとどうなるか。
空気抵抗がある訳でもないので、速度は落ちない。
だが、機体を左に傾けた行為は、そのまま継続される。
つまり、機体は左へとぐるぐる回る。
そしてイツナの機体を追いかけて、右に軽く旋回中のため、その方向への回転も、機体に加わる。
つまり、左方向へ錐揉み回転する機体の先頭方向が、徐々に右方向へとずれていく。
そしてここは、衛星フォルボスの上空。
このフォルボスにも僅かながら重力があり、マイの機体はフォルボスの地表へと落ちていく。
伴機の攻撃を巧みにかわしたマイ。
イツナは本機からレーザー光線を撃つが、マイの変則的な動きに、狙いが定まらない。
レグルスに搭載のコンピュータが、マイの動きを予測演算し、それに従って、再びレーザー光線を放つ。
「ヒューマノイドチェンジ!」
すでに地表すれすれマイの機体は、戦闘機状態から人型機体に変形する。
地表に着陸と同時に、地面を蹴り、前方へと移動してレーザー光線をかわす。
元々回転が加わっていたマイの機体は、人型機体に変形しても、その回転を引き継ぐ。
地面を転がる、マイの人型機体。
そんなマイの人型機体の左右後方から、二機の伴機が機銃掃射しながら、後を追う。
イツナ本機も、上空から対地ミサイルを落とす。
マイの人型機体は地面を蹴って、後方宙返り。
まだ錐揉み回転中の状態で、そのまま左後方から迫る伴機に、跳び蹴りをかます。
伴機は破壊され、マイの人型機体は地表に着地。
本来なら、ここで間髪入れず、手に持つ機関銃でもう一機の伴機を撃ち落とす所だが、その機関銃が無かった。
この機関銃は本来、質量を持ったフォログラフを投影するのだが、今のマイの機体には、それが出来なかった。
それは、サポートAIが担当する領分であり、そのサポートAIは今は居ない。
「な」
マイの意表をつく攻撃に、イツナは対処法に戸惑う。
イツナの本機と伴機は、上空を旋回する。
「ほらほら、どうしたの!」
攻撃してこないイツナを、マイは煽る。
もっともマイの人型機体も、肉弾戦しか攻撃手段が無かった。
搭載武器は何も無く、フォログラフ投影も出来ないからだ。
イツナの攻撃をかわしながら、戦闘機に戻るつもりだったが、その攻撃がこないので、マイの動きも止まる。
「く」
イツナ本機は地表すれすれまで降下し、マイの人型機体の前方から、機銃掃射しながら迫る。
マイの人型機体は、僅かな動きでかわす。
これは、宇宙ステーションでのシミュレータ戦でも見せたムーブ。
あの時、もう一機あればマイを堕とせていた。
そして今、その一機が上空にいる。
イツナは上空を旋回する伴機からも、攻撃を加える。
しかし、マイの人型機体は、その攻撃をも巧みにかえす。
「な」
これにはイツナも驚く。
以前のシミュレータ戦の時、マイの操る機体は、ふた呼吸は遅れる機体だった。
しかし今の機体は、マイの思い通りに動いてくれる。
「甘いわよ、僕を堕としたかったら、せめてテトラフォーメーションくらいは、マスターなさい!」
マイは人型機体を戦闘機に戻して、その場を離脱。
テトラフォーメーションとは、四機の機体で三角錐の陣形を構成する戦法。
トライフォースは三角形をイメージした面の戦法だが、テトラフォーメーションは三角錐の立体をイメージしている。
その分、難易度は格段にあがる。
イツナはもう一度、伴機をフォログラフ投影。
トライフォースを再び展開する。
そして気づく。
マイは、一機の戦闘機だけで戦っている事に。
「マイさん、なぜトライフォースを使わないのですか!」
イツナの言葉には、少し怒気がこもる。
それは、手加減されてる事への怒りと同時に、そうさせる自分の不甲斐なさへの憤りからだった。
「無茶言わないでよ!」
マイも思わず叫び返す。
「こっちは、アイが居ないから出来ないのよ!」
そう、マイの機体がフォログラフ投影するには、サポートAIの助けが必要だった。
やれるものなら、マイだってすでに展開している。
「でも、機雷はセットしておいたわ。」
トライフォース用の三機の機体は用意出来なくても、そのイメージはしていたマイ。
イツナ本機の通り道を予見し、そこに機雷をセットするのは容易だった。
イツナ本機は、マイがセットした機雷により、爆散した。
この時代に召喚されたマイとマインは、バカンスの最中にトラブルに巻き込まれる。
そんなふたりを助けてくれたのが、教官となったリムの教え子のゼロゴーことイツナだった。
マイとのシミュレータによる対戦は、イツナに多くの事を学ばせた。
マイからのアドバイスもあり、ゼロゴーは以前よりもリム教官の教えを、更に理解出来る様になっていた。
何かを学ぶにあたり、この気づきは大きい。
俗にコツを掴むと言うが、これが有るのと無いのとでは、学習に大きな差がでる。
イツナは次のステージに進むべきと判断したリム教官は、この宇宙ステーション内で学ぶより、広く宇宙に出て学ぶべきと判断する。
つまり、簡単な任務なら、もうこなせるはず。
イツナは、そんな任務につく前に、休暇を与えられて故郷に帰ってきた。
そこにマイとマインが居たのは、単なる偶然なのだろうか。
惑星イプビーナスの衛星、フォルボス。
そこの訓練施設にお邪魔する、マイとマインとイツナの一行。
ここのシミュレータを使わせて下さいと頼むのだが、これがあっさりと了承される。
ここのシミュレータは特殊な物で、その使用にあたっては、事前の手続きが必要だった。
これは、誰かが手を回したのだろうが、それが誰であるかは、今はどうでもいい事だった。多分。
早速マイとイツナの戦闘機が、シミュレータにセットされる。
マイの機体は、シリウスガンマツー。
イツナの機体は、レグルスマークスリー。
この二機の戦闘機がセットされ、衛星フォルボスの上空に、二機のフォログラフ映像が投影される。
マイとイツナはシミュレータ内にセットされた、自分の機体のコックピットにいる。
そのコックピットからの眺めは、上空のフォログラフの機体からの眺めになる。
つまり、地上の機体にいながら、上空での戦闘を体験出来る。
イツナの機体のレグルスマークスリー。
これはマイ達のシリウスシリーズの機体とは、違った構想で造られている。
マイ達みたいにサポートAIに頼らなくても、同様の演算処理が出来る。
これにより、低コストでの高火力が実現した。
そして扱いやすい機体でもあり、連邦警備隊の主力戦闘機になりつつある。
戦闘面においては、シリウスシリーズを遥かに凌ぐ。
「相手はレグルスか。
こりゃまた、キツい戦いになりそうね。」
マインは、そう事前予想をする。
マイには、不利な条件が多すぎた。
マイの乗る機体は、初めて乗るガンマツー。
そして、サポートAIからのサポートもない。
対してレグルスは、そのサポートAIの演算能力を備えている。
ふたりの勝負は、惑星イプビーナス標準時間の正午に開始される。
それまでふたりは、機体を思い思いに動かして、このシミュレータに慣れる。
マイはいつもとは違う操作感覚に戸惑うが、すぐに慣れた。
サポートAIのアイが居ない事に不安を感じるが、それでも何とかなりそうな気がした。
そして勝負開始の正午を迎える。
「いきますよ、マイさん!」
フライングぎみに、イツナが飛び出す。
迫るイツナのレグルスを、マイのシリウスは重力転換で華麗にかわす。
重力転換とは、文字通り重量の向きを変える技法。
通常地上では、その星の中心に向かって重力が働く。
だが、無重力の宇宙空間では、その限りではない。
一応乗組員の安全のために、人工重力は働いている。
上も下も分からない様な空間に、耐えられる様には、人類の身体は設計されていない。
そんな人工重力の向きを変えるのが、重力転換である。
マイの機体は、重力転換により上空へと落ちていく。
マイの機体にかわされたイツナの機体は、弧を描く様に、上空のシリウスを追う。
「甘いですよ、マイさん!」
レグルスは、質量を持ったフォログラフを投影。
それはレグルスと同じ機体、二機の伴機のフォログラフ。
三機の機体による隊列は、トライフォースと呼ばれる、この作品の基本的な戦術である。
「へー、トライフォースが出来る様になったんだ。
やるじゃん。」
三機の機体を同時に動かすのは、そんなに難しくはない。
だけど、実戦に投入となると、少し事情は異なる。
マイは重力転換を利用して、伴機の一機に急接近。
そのまま呆気なく、この伴機を撃墜。
「な、」
一瞬の出来事に、イツナは戸惑う。
「すぐ次の伴機を展開しなさい!」
「は、はい!」
マイの突然の檄に、イツナも即反応する。
新しい伴機のフォログラフを投影する。
マイはすぐさま、その伴機に迫る。
しかしイツナも、同じ手はくわない。
新しい伴機は、マイの突進を何とかかわして、反撃する。
マイの機体はこの伴機にかわされた後、少し軌道を変える。
その軌道の先には、もう一機の伴機があった。
マイの機体を後ろから追う伴機と、一直線上に並ぶ。
マイは自分の機体を、その直線上から少しそらす。
イツナの伴機は正面衝突しそうになるが、ぎりぎりで回避する。
「そんな手は、くいませんよ、マイさん!」
「いや、そんなつけ込まれ方をされる事自体が、問題なんだよ。」
イツナの反論を聞いて、マインはつぶやく。
「トライフォースを使える様になったのは、驚いたよ。」
と言うマイの言葉には、ちょっとニヤけが入る。
「さあ、これはどう対処する?」
マイは機体を反転、イツナの乗るレグルスに迫る。
「く」
イツナは大きく弧を描いてマイの右翼側に移動する。
マイもイツナの機体を追い続ける。
イツナの機体は、マイの機体に対して、常に横を向いてる形になる。
そんなイツナの機体に、マイは機銃掃射。
しかしその攻撃は、イツナの機体の後ろにそれる。
マイが今乗る機体、ガンマツーの旋回性能では、これが限界だった。
「やっぱりね。」
いつもの様にはいかない攻撃に、マイはニヤける。
これはいつものアルファーワンと、このガンマツーの性能差というより、マイとの相性の問題だった。
そんなマイに対して突然のレーザー光線!
右側上空と、左側上空からの同時攻撃!
イツナの伴機二機からの攻撃だ。
マイは機体を左へ60度ほど傾ける。
そしてエンジン出力を最低限まで下げる。
これによりマイの機体は推進力を失う。
宇宙空間でそれをやるとどうなるか。
空気抵抗がある訳でもないので、速度は落ちない。
だが、機体を左に傾けた行為は、そのまま継続される。
つまり、機体は左へとぐるぐる回る。
そしてイツナの機体を追いかけて、右に軽く旋回中のため、その方向への回転も、機体に加わる。
つまり、左方向へ錐揉み回転する機体の先頭方向が、徐々に右方向へとずれていく。
そしてここは、衛星フォルボスの上空。
このフォルボスにも僅かながら重力があり、マイの機体はフォルボスの地表へと落ちていく。
伴機の攻撃を巧みにかわしたマイ。
イツナは本機からレーザー光線を撃つが、マイの変則的な動きに、狙いが定まらない。
レグルスに搭載のコンピュータが、マイの動きを予測演算し、それに従って、再びレーザー光線を放つ。
「ヒューマノイドチェンジ!」
すでに地表すれすれマイの機体は、戦闘機状態から人型機体に変形する。
地表に着陸と同時に、地面を蹴り、前方へと移動してレーザー光線をかわす。
元々回転が加わっていたマイの機体は、人型機体に変形しても、その回転を引き継ぐ。
地面を転がる、マイの人型機体。
そんなマイの人型機体の左右後方から、二機の伴機が機銃掃射しながら、後を追う。
イツナ本機も、上空から対地ミサイルを落とす。
マイの人型機体は地面を蹴って、後方宙返り。
まだ錐揉み回転中の状態で、そのまま左後方から迫る伴機に、跳び蹴りをかます。
伴機は破壊され、マイの人型機体は地表に着地。
本来なら、ここで間髪入れず、手に持つ機関銃でもう一機の伴機を撃ち落とす所だが、その機関銃が無かった。
この機関銃は本来、質量を持ったフォログラフを投影するのだが、今のマイの機体には、それが出来なかった。
それは、サポートAIが担当する領分であり、そのサポートAIは今は居ない。
「な」
マイの意表をつく攻撃に、イツナは対処法に戸惑う。
イツナの本機と伴機は、上空を旋回する。
「ほらほら、どうしたの!」
攻撃してこないイツナを、マイは煽る。
もっともマイの人型機体も、肉弾戦しか攻撃手段が無かった。
搭載武器は何も無く、フォログラフ投影も出来ないからだ。
イツナの攻撃をかわしながら、戦闘機に戻るつもりだったが、その攻撃がこないので、マイの動きも止まる。
「く」
イツナ本機は地表すれすれまで降下し、マイの人型機体の前方から、機銃掃射しながら迫る。
マイの人型機体は、僅かな動きでかわす。
これは、宇宙ステーションでのシミュレータ戦でも見せたムーブ。
あの時、もう一機あればマイを堕とせていた。
そして今、その一機が上空にいる。
イツナは上空を旋回する伴機からも、攻撃を加える。
しかし、マイの人型機体は、その攻撃をも巧みにかえす。
「な」
これにはイツナも驚く。
以前のシミュレータ戦の時、マイの操る機体は、ふた呼吸は遅れる機体だった。
しかし今の機体は、マイの思い通りに動いてくれる。
「甘いわよ、僕を堕としたかったら、せめてテトラフォーメーションくらいは、マスターなさい!」
マイは人型機体を戦闘機に戻して、その場を離脱。
テトラフォーメーションとは、四機の機体で三角錐の陣形を構成する戦法。
トライフォースは三角形をイメージした面の戦法だが、テトラフォーメーションは三角錐の立体をイメージしている。
その分、難易度は格段にあがる。
イツナはもう一度、伴機をフォログラフ投影。
トライフォースを再び展開する。
そして気づく。
マイは、一機の戦闘機だけで戦っている事に。
「マイさん、なぜトライフォースを使わないのですか!」
イツナの言葉には、少し怒気がこもる。
それは、手加減されてる事への怒りと同時に、そうさせる自分の不甲斐なさへの憤りからだった。
「無茶言わないでよ!」
マイも思わず叫び返す。
「こっちは、アイが居ないから出来ないのよ!」
そう、マイの機体がフォログラフ投影するには、サポートAIの助けが必要だった。
やれるものなら、マイだってすでに展開している。
「でも、機雷はセットしておいたわ。」
トライフォース用の三機の機体は用意出来なくても、そのイメージはしていたマイ。
イツナ本機の通り道を予見し、そこに機雷をセットするのは容易だった。
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