かいせん(line)

たくひあい@あい生成

文字の大きさ
44 / 349
Zeigarnik syndrome

Zeigarnik syndrome

しおりを挟む
・・・・・・・・・・・・・・・


「いやあ、まさか、究極にして極度な人嫌いな鶴が、あんな賑やかなやつと居るとは、俺が居ない間に何があった」

 菊さんは穏やかな、ちょっとだけ天然そうな口調で明るく話す。何を考えてるんだろう、というのは考えても仕方なさそうだった。俺と、同じ──ではないが、似たような性質の力を持っている。似たような、似てはないか。……まぁ、いろいろあったのだが、
能力者は証明方法も無いし、するだけ危ないので『疑い』が晴れるまで大半の者は組織集団から拷問に合う境遇にあり、それからようやく認められる。その性質が少し、合うだけだった。

「あの手のは……会話を、しなくて良いから、楽だ」

「ははぁ。違うだろう? それだけじゃない、わざわざ、彼から離れて、こんな話をしてるくらいだ──」

──急に激しく鳴り出す動悸をおさえる。
そうだ、そういえば、マジなやつを探さなくては……廊下を歩き、外に向かえそうな出口を探して進む。

 俺も、誰も、常に明るくしている橋引だって、まるで世界に対する試験のように何らかの拷問を受け、その拷問によってどうにか生きている。
『それ』は優しい問いに見えて、底無し沼のように常に絡み付いてくるそれを口にするようなものだった。
世界に無視されることに耐えられるか──
それが理解出来ないなら、異形になることは出来ない。
不本意で、理不尽で、褒められたものじゃ、ないけれど。

「彼はどんな未来を持って居るんだい?」

「『     』」

「……ふうん、なるほど、ねぇ。なかなか通好みだな」

「──髪のこと」

「え?」

「あいつの、過去、見えたでしょう? 意地悪」

アハハハハハ、と菊さんは笑った。
いや、それどころじゃなくて、早く山に……山でいいのかな。

「ところで君はこれからなんの捜査なんだ?
彼らから離れて良いのか」

「この式場、外になにか埋まってるらしくて……俺らはちょっと、過敏になってて、それも気になるんで」


(20210125AM0:04─01260324)

「そうかそうか、確かにここにはさまざまな奴が来ている。さまざまな怨念に満ちている、敏感なやつには気分が悪かろう」
「そうですね、良いもんでは無いですが」
 廊下を突き進みながらふと、あいつらはどこに行くのかなと思った。ピザの注文も来てないし……と、考えたらちょっとピザが食べたくなって来る。伝票と何か関係があるのなら、そりゃ誰か注文くらいするかもしれない。界瀬が探しに行ってはくれたけれど、結局わからないままだった。廊下を歩いて、ちらっとまだにぎわっているホールを眺めた。
こんな楽しげなイベントも、町で配られるその辺のイベントや通販のチラシも、みんな、人によって、さまざまな意味がある。
「あのとき、どうして、俺がいなくなったか、ってのは聞かないんだな」
「──俺だって、なんて考えても仕方がないけれど、ふらっと、遠くにいきたいと思うことくらい誰にでもありますから」
ホールでは、さまざまな色の風船が飛んで、歓声が上がった。
「心が読めるのは、危険だ」
ぼそっと誰にともなく呟いた言葉。
「だけど、普通の世界のなかで、舞い上がるのも、孤立するのも危険だ」

「お前らしい言葉だな」
菊さんの声。人だかりに背を向けて、外に続くドアを開ける。風が吹く。
聞かれていた……
風が、焦りで火照る頬を撫でていく。
少し冷静になろう、と外のことを考えた。
「あの、俺が、さっき話したことは、絶対に言わないでくださいよ……もう少し、考えてみたくて──俺が、その……」
菊さんはあははは!
と、また笑う。リアクションが大きい人だ。
っていうかそんなに笑うところあったのか。
「──わかってるわかってる、さっきのは、ちょっとからかっただけさ。上が何も言わないなら俺が、どうこうする必要もないから何も言わん」
え……そうだろうか?
 いろんなことを思い出して考えてみるが、考えても仕方がないのかもしれない。
「ありがとうございま……」
「ぃよっし、探索、開始だ────!」
小さく呟く言葉に重なるように気合いの入った言葉が響いた。










・・・・・・・・・・・・・・・・
「あーっ、うっさい、いい加減に元気出しなさいよ」
「だって……だってなんか、色ちゃん冷たいし……」

また俺を置いて行ってしまった。
仕方がないとはいえ、微妙にモヤる。朝方可愛く笑って居たじゃないか。一緒に出かけると喜んで居たはずじゃないか。俺に。俺に……っ。

「微妙にモヤるじゃねーよっ! 」
さっきからグダグタ言ってるままベランダにしがみつく俺を橋引がたしなめる。
「おお──お前、読心術を身に付けたのか!? さすがにされるのは……あまり無い」
「違うわ!」
なぜだかイライラしている橋引嬢。
なんなんだ……

「千里眼ってさー、良いときと、効きすぎるときとあってさー、色ちゃんの周囲ーとか、そういうのがないとさー……うう……色ちゃん」

色ちゃん、藍鶴色。サイコメトラーでも心を読みきれない、俺の好きな人。遠くのものを知覚するのは、好きなものや気になるものの周囲に絞る方がはっきりいってやりやすい。
つまり! 今! トテモダルイ。

「もーっ! じゃ、上からの捜索は一旦止めて、会場の人を当たりましょう」
「何怒ってんだ?」
「サイコメトラーならわかるんでしょ!?」
「だから! いちゃついてる暇なんか! なかった!」
「うるさい!」
 確かに一人であの民衆の中を探らせるのはかなり大変だっただろうし普通ならやらない。
 俺が一気に心を読むことも出来なくはな……いや、やりたくないが、しかしそれは大した役に立たない。
何故なら正しいことが真実なわけじゃないし、悪いことや下心を考えまくりながら正義を遂行するやつなんか五万といるわけで、つまり、あまり効率的じゃないのだ。心だけ読めたくらいで事件が解決するならとっくに世界の犯罪が激減している。
「人が集まる場所はちょっとー……」
「とりあえず労って貰うからね!!」
「はーいはい、あとで色ちゃんも一緒にな」
「……色ちゃんは、許す」

なぜか橋引は色に甘い。


202101030PM3:15
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とスタッフ達とBL営業をして腐女子や腐男子たまに普通のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

この冬を超えたら恋でいい

天気
BL
夜の街で、凪は人生の底にいた。 古いアパートに帰る途中、父の残した借金の取り立てに絡まれ、逃げ場を失う。 そこに現れたのは、大手企業の社長・鷹宮だった。 偶然の救い。年齢も立場も違う二人は、その夜を境に交わることになる。 事情を多く語らない凪は、不幸が当たり前のように身にまとい、誰かに頼ることを知らない。 一方の鷹宮は、完璧な成功者として生きてきた男だった。 危険から守るため、鷹宮は凪を一時的に自宅へ迎え入れる。 冬の同居生活の中で、凪は少しずつ日常を取り戻していく。 大学へ通い、温かい食事をし、夜を一人で怯えずに眠る。 しかし、守られることに慣れない凪は、距離が近づくほどに自分から一歩引いてしまう。 それは、失うことを恐れる、健気で不器用な選択だった。 一方、鷹宮は気づいてしまう。 凪が笑うだけで、胸が満たされることに。 そんな自分の感情から凪を守るつもりで引いた距離が、 凪を遠ざけてしまう。 近づきたい。 けれど、踏み込めば壊してしまうかもしれない。 互いを思うほど、すれ違いは深くなる。 2人はこの冬を越えることができるのかーー

タトゥーの甘い檻

マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代) どのお話も単体でお楽しみいただけます。 ​「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」 ​真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。 ​それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。 「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。 アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。 ​ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。 愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。 ​「……お前のわがままには、最後まで付き合う」 ​針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。 執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。

処理中です...