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Messiah complex
祠
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「皆、魚みたいになってた」
何か、心当たりがあったのだろうか。
瀬戸さんの視線が泳ぐ。
「全員に憑依した、って事かい」
頷く。
「……それは、大丈夫なやつ?」
聞かれて、俺は肩を竦めた。
「さぁ」
だからと言っても俺に出来る事は無いのだ。
この事で今までも様々な事が起きてきたけど、それでも何処もニュースや話題にならなかったのは、俺達の力を隠す為でもあるし、彼らがそもそも自分たちで行った報いが返っただけなのだ。
危険性についてもあまり周知しなかった。
祟りだ何だと大袈裟に騒ぎ立てて神社や寺で勝手にお祭り騒ぎを起こす人、
あと何故かその辺の祠を破壊する人――――なんかが居た為だ。
その日暮らしをしている誰か等は嬉々として日頃の鬱憤晴らしと加担していたし、作家をしている誰かは「祟り! 怪奇!」とホラーの題材のように騒ぎ立てるだけで火に油を注いでしまう。「祠壊したのかい!?と30代くらいのおっさんに驚いて貰って神と戦って欲しい~」などと笑っているだけである。
……こう、収拾の付けようが無くなってしまった。
(※付けられない、という意味より、辞めたくない!!的な)
「なんか此処に新たに人が来たから、様子を見に来たみたい。山には行かない方がいいと言われた」
とだけ言うと、「山、ね」となんだか含みのある言葉が返って来る。
そのまま、なんとなく廊下を歩いていると、突き当りまで来た。
窓の明かりで薄っすらと壁際に四角い板があり、スイッチが並んでいるのが見える。
「……あれ」
それを端末で照らしながら瀬戸さんが首を傾げた。
「ブレーカーじゃない」
「と、なると、電線とか外部の問題か」
そう言えば、『あの中』の一人がブレーカーの問題ではなく、じきにつくと言っていた。
俺の知りようのない事も知っている、というのがあの憑依の特徴だ。
勿論俺自身が知覚している事もあるし、あの人達が知っている事もある。
……説明しにくいけれど、近視と遠視みたいなものだろうか。
「それと、ミヨちゃんが、施設がどうとか」
「曾祖母の名前だ」
「それって――――」
何か言いかけた際、着信があった。
俺の携帯かと思ったが、どうやら瀬戸さんのようで着物の懐から慣れた手つきで、面倒そうに端末を取り出している。
あまり嬉しく無さそうだが、仕事でも入ったのだろうか。
「まだなの!!」
応答時に彼が何故がスピーカーボタンを押したので、大声が響き渡った。
「貴方の能力を好きって人が沢山居るのよ!? 何処でサボってるの!! 次の延長予約が入ってるんだから!」
裕子さん……?
「――――前から気になってたんすけど」
はぁ、と瀬戸さんはため息交じりに答える。
「何であんたらが好きなら、俺の都合無しで続けて良い事になってんですか」
この有無を言わせない感じ、たぶん、裕子さんだ。
「あのねぇ!! もう、予約埋めてしまったの!!まだやりたいって、みんな言ってるの!!」
その一方的な主張に瀬戸さんが苛立ったように言う。
「だから、俺はもう労力をあんたらに無償提供しません、って言いましたよね。そりゃ、疲れる事なんて誰もやりたく無いでしょう?
人を延長だ予約だって、あり得ない。破格すぎるんですよ」
……あの人、能力そのものが結構身体に負担が掛かるって全然思って無いからな。
『好きなもので自分を語れるのは、恵まれた人だけ』なんだという事が、生粋のお嬢様である彼女には理解出来ない。
悪気があるわけでもなく、例えば好きな物を述べたがらない人の気持ちを「なんか不思議だなぁ」としか考えられないのだと思う。
瀬戸さんは再度ため息を吐くと「勝手に詰んどいてください!」と通話を切ってしまった。
2025年1月10日0時03分
何か、心当たりがあったのだろうか。
瀬戸さんの視線が泳ぐ。
「全員に憑依した、って事かい」
頷く。
「……それは、大丈夫なやつ?」
聞かれて、俺は肩を竦めた。
「さぁ」
だからと言っても俺に出来る事は無いのだ。
この事で今までも様々な事が起きてきたけど、それでも何処もニュースや話題にならなかったのは、俺達の力を隠す為でもあるし、彼らがそもそも自分たちで行った報いが返っただけなのだ。
危険性についてもあまり周知しなかった。
祟りだ何だと大袈裟に騒ぎ立てて神社や寺で勝手にお祭り騒ぎを起こす人、
あと何故かその辺の祠を破壊する人――――なんかが居た為だ。
その日暮らしをしている誰か等は嬉々として日頃の鬱憤晴らしと加担していたし、作家をしている誰かは「祟り! 怪奇!」とホラーの題材のように騒ぎ立てるだけで火に油を注いでしまう。「祠壊したのかい!?と30代くらいのおっさんに驚いて貰って神と戦って欲しい~」などと笑っているだけである。
……こう、収拾の付けようが無くなってしまった。
(※付けられない、という意味より、辞めたくない!!的な)
「なんか此処に新たに人が来たから、様子を見に来たみたい。山には行かない方がいいと言われた」
とだけ言うと、「山、ね」となんだか含みのある言葉が返って来る。
そのまま、なんとなく廊下を歩いていると、突き当りまで来た。
窓の明かりで薄っすらと壁際に四角い板があり、スイッチが並んでいるのが見える。
「……あれ」
それを端末で照らしながら瀬戸さんが首を傾げた。
「ブレーカーじゃない」
「と、なると、電線とか外部の問題か」
そう言えば、『あの中』の一人がブレーカーの問題ではなく、じきにつくと言っていた。
俺の知りようのない事も知っている、というのがあの憑依の特徴だ。
勿論俺自身が知覚している事もあるし、あの人達が知っている事もある。
……説明しにくいけれど、近視と遠視みたいなものだろうか。
「それと、ミヨちゃんが、施設がどうとか」
「曾祖母の名前だ」
「それって――――」
何か言いかけた際、着信があった。
俺の携帯かと思ったが、どうやら瀬戸さんのようで着物の懐から慣れた手つきで、面倒そうに端末を取り出している。
あまり嬉しく無さそうだが、仕事でも入ったのだろうか。
「まだなの!!」
応答時に彼が何故がスピーカーボタンを押したので、大声が響き渡った。
「貴方の能力を好きって人が沢山居るのよ!? 何処でサボってるの!! 次の延長予約が入ってるんだから!」
裕子さん……?
「――――前から気になってたんすけど」
はぁ、と瀬戸さんはため息交じりに答える。
「何であんたらが好きなら、俺の都合無しで続けて良い事になってんですか」
この有無を言わせない感じ、たぶん、裕子さんだ。
「あのねぇ!! もう、予約埋めてしまったの!!まだやりたいって、みんな言ってるの!!」
その一方的な主張に瀬戸さんが苛立ったように言う。
「だから、俺はもう労力をあんたらに無償提供しません、って言いましたよね。そりゃ、疲れる事なんて誰もやりたく無いでしょう?
人を延長だ予約だって、あり得ない。破格すぎるんですよ」
……あの人、能力そのものが結構身体に負担が掛かるって全然思って無いからな。
『好きなもので自分を語れるのは、恵まれた人だけ』なんだという事が、生粋のお嬢様である彼女には理解出来ない。
悪気があるわけでもなく、例えば好きな物を述べたがらない人の気持ちを「なんか不思議だなぁ」としか考えられないのだと思う。
瀬戸さんは再度ため息を吐くと「勝手に詰んどいてください!」と通話を切ってしまった。
2025年1月10日0時03分
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