かいせん(line)

たくひあい@あい生成

文字の大きさ
119 / 307
Messiah complex

同化

しおりを挟む


後で聞くところによると最初にあの人を怒らせたのは、藍鶴色で二人目らしい。


――――俺も言ったんだよ、そんなものはないって。
そしたら、「お前の不幸自慢なんか聞いてない! って言われてさ。
『ぼくがそれで喜ぶと思ったか!』 とか、いやそんなの思う訳ないじゃん」

――――ずっと、会ったときから甘っちょろくて、薄くて、軽くて、その程度で苦しむのも何一つ理解出来なかった。聞いててイライラしてたよ。




「救われずに死ね」




聞き慣れた声が、急にはっきりと聞こえてきた。
振り向く間すらなく誰かが近付いてくる。

「俺が言いたいのは、いつもそれだけだ」


一歩、二歩、三歩、四歩。



「あちら側とは交わる事が出来ない。だから、線を引く。いつだって、何度だって」





木の葉を踏む音。
その音が実感を伴ってくっきりと耳に届き始めてようやく俺はそちらを向いた。

「色……」

藍鶴色。
何度見ても、紛れもない藍鶴色が目の前に居た。
「色!」
相変わらず無表情なやつだ。
何を思っているのかは見た目だけではわからなかったが、その藍色が、じっと俺を見据えていた。

「どうして、此処に!」

彼は何も答えない。
無言で俺にもたれかかって来た。


「……色?」



よく……わからないが、とりあえずその背を撫でてみる。
なんだか悲しそうにしているような気がした。

――――もう少しましだと思ったんだが、結界が無いとろくに対話出来なかった。

「……そうか」


腕が、肩に回される。


――――俺が思っていたより、この力は、強かった。

「そうなのか」


――――そう、見られるのが嫌だったのに。せっかく線を引いたのに。
また、みんなおかしくなった。


心の奥。泣きそうな、悲痛な叫びだった。
「……そうか」
けれど、それはずっと俺たちと居たから油断していた、という事だろうかと考えると、場違いにも少し嬉しくなってしまう。
嬉しいのか、悲しいのか。



  ――――脳裏に彼の心象が映る。
魚が、気が狂ったように泳ぎ出し突然自殺している。
「魚殺し!」と誰かが指をさしている。




藍鶴色の力は時々強力な磁場のようなものが発生すると、聞いた事がある。
 『みんなおかしくなった』
それが何を示すのかはわからないが、昔からそうだったようで、
大勢の人を狂わせてしまうからと、いつも周りから一歩離れて過ごしていたらしい。

 そういえば母親ですらそうで、自分の描いたものを他人、特に身内にだけは見せる事は無かったのだとか。


――――そう、線。引いてたのに。
失望した

どんなに線を引いても。



今。
社会に『線を引く』事が、国の個人への監視によって曖昧になっている。

 魚殺しも、事務所に居た時にはそこまでではなかったのは、結界だけの問題ではなく、俺たち超能力者と居た時にはあった『彼にとっての社会性』が、能力者ではない何らかの要素で変質したことによるのだろう。

自分がどんなに線を引き、守ってきても
割り込んでくるその事実は、藍鶴色だって失望して仕方がないはずだ。


上に立つ普通の人たちは俺たちの人権など、考えさえしないから。
失望していることすら、何故失望するのかと憤り、理不尽に感じてしまう。
自分を救わないのか、と、理不尽に怒り狂う。

「……ヒガンバナの痕跡はあった?」
「あぁ」


いつの間にか、色は俺より先に歩き、木を眺めている菊さんに話しかけている。
2025年3月日11時00分
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

天の求婚

紅林
BL
太平天帝国では5年ほど前から第一天子と第二天子によって帝位継承争いが勃発していた。 主人公、新田大貴子爵は第二天子派として広く活動していた亡き父の跡を継いで一年前に子爵家を継いだ。しかし、フィラデルフィア合衆国との講和条約を取り付けた第一天子の功績が認められ次期帝位継承者は第一天子となり、派閥争いに負けた第二天子派は継承順位を下げられ、それに付き従った者の中には爵位剥奪のうえ、帝都江流波から追放された華族もいた そして大貴もその例に漏れず、邸宅にて謹慎を申し付けられ現在は華族用の豪華な護送車で大天族の居城へと向かっていた 即位したての政権が安定していない君主と没落寸前の血筋だけは立派な純血華族の複雑な結婚事情を描いた物語

僕の部下がかわいくて仕方ない

まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。 ■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。 ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

処理中です...