1 / 7
01
しおりを挟む『好き』とか『嫌い』とかほど意味の分からないものはないと思う。
とっくに成人している女性ならともかく中高生は「私に優しくしてくれる人」を基準としていて好きとはあまり関係ないんじゃないか。だからすぐ別れて新しく彼氏を作る。
中には数か月、何年、はたまた社会人までと続くカップルもいるだろう。けれどそれは、ごく稀にしか誕生しない。なにが言いたいかというと俺も色んな女の子をとっかえひっかえしたいのである。
もしかしたら、この二十一世紀において未だに『ペガサス幻想』を聞いている高校生には青春は永遠に来ないのではないのだろうか。
今日も明日も明後日も、彼女ができない症候群に襲われた俺と親友の健太とでこの長い坂を登らないといけないのは憂鬱だ。
「……」
暑い暑い暑い。だるいだるいだるい。俺たちの青春は¨補修¨という行事で幕を開けた。
「おいてめぇ健太。嘘吐きやがったな」
「しらねぇ。補修が午後からだったなんてちっとも知らねぇ。」
補修は一週間に渡り行われる。ちなみに俺が赤点を取ったのは英語だ。国語が出来たら英語もできるはずだ、なんてことを何回言われたか分らんが俺からしてみれば英語と日本語という時点で何もかもが違う。
さて、このあまりにあまった時間を何に使おうかと。健太は飯やら何やらで家に帰っていったが俺にあの坂を再び登る気力はない。登るのは一回下るのも一回の一往復で十分だ。
「はぁ……」
俺は五分ほど考え普段めったに行かない『図書室』へと行くことにした。幸いにも手元にはpspとスマートフォンなる武器がある。イヤホンでも挿しとけば周りに文句は言われないだろう。
図書室に来るのは学校説明会の時とラノベでも置いてないかなと少し見に来た二回だけだ。そのせいか酷く緊張している。
「し、しつれいしまーす」
それにしても夏休みだというのになんでこんなに人がいるんだよ。入り口から一番近い席へと腰かける。ふと目の前を見ると眼鏡の少女が音も聞こえないような微かな呼吸で微動だにせず本を読んでいた。
一方の俺はそんな本を読みに来ている少女の前で堂々とpspを取り出し『モンスターハウンド3』とかいう明らかにモ〇ハンのパクリゲームをプレイし始める。
やがてpspのボタンを押す度になるカチカチ音が気になるのかチラチラとこっちを見てくるようになったので俺はスマートフォンへと対象を移した。のだが今度はマジマジとこちらを見るようになったので「どうした?」と声をかけて見る。
「神田天成 ですか?」
はい か いいえ で言うなら はい だ。
「そうだけど」
彼女はその答えに満足したのか微かに微笑んだ。俺は気味が悪くなり席を立つ。彼女も席を立つ。俺が逃げるように廊下に出ると彼女もついて来る。
クソッーー一体全体なんだっていうんだ。
そんな気味の悪い眼鏡少女が再び口を開いたのは昇降口を出た辺りのとこだった。
「私は、あなたに用事がある」
どんなだ?そもそ俺はお前みたいな生徒見覚え無いぞ。
そんな戸惑う俺の考えを読んだかのように言った。
「あなたは今ここで死ぬ」
頭が痛くなるね。変な本でも読んでおかしくなっちまったんじゃないか。人間いつかは死ぬもんさ、それが明日明後日来ても驚くことはなにもないがそれを面と向かって言われると嫌でも口が空く。まぁこの少女の言うことにまるっきり根拠はないんだろうが。
「だったらなんだよ。それが本当だとしてもお前には関係ないだろ?」
「関係はない。けど上の命令だから。我慢してね。」
「何言っーーーー」
はっきりと見えた。彼女が手にナイフのような異物を持っていてそれによって俺は何故か¨刺された¨。
意識が遠くなっていく俺に彼女は言った。
「楽しんできてくださいね」
◇
「目が覚めたか?」
「いや、まだあんまり…。」
ここはーー俺の部屋だ。どういうことだ? 先程の眼鏡女の出来事は夢だったのか。まぁ痛みもあんまりなかった気がするしな。
「っていうかお前誰だ」
「なんだ。あいつに聞いてないのか?」
あいつ?
「あー、眼鏡の女だ」
夢じゃなかったのか?だとしたらなぜ俺は無傷だ。もしくはこれさえも夢なのか?
「てめぇあいつのグルなのか?」
「まぁそうかっかするな。話したいことは山ほどある」
女はそう言うとどこから取り出したのか酒とコップをテーブルに置く。
「いや、俺未成年なんだけど」
「気にするな。¨死んだ者¨にルールなどはない。」
やはりこいつは何かを知っている。俺があの女にいきなり殺される夢か現実か区別がつかないような出来事の元凶を。
「悪いがこれは¨現実¨だ。」
「ッ……」
こいつは俺の心情でも見えてるのか。
「あぁ、見えてるとも」
「……お前は何者なんだよ」
「そうだな、俗に言う¨神様¨というやつだ。」
髪でも紙でもなく神だっていうのか。
「その神様がなんの用なんだ?偶々とか偶然とかそんなことで会える存在じゃねぇだろ。」
「そうだな。時間もないしパパッと説明させてもらう」
「君に世界を救ってほしい」
「は?」
いきなり殺されて、いきなり目の前に現れて、世界を救ってほしい。意味分かんねぇよ。
「ガチのマジの大マジだ。」
「いやその、話が読めない。そもそもなんで俺なんだ?」
一呼吸おいて彼女が言う。
「偶然だ。そもそもこの役割は誰がやっても達成できる。私によってそいつは世界最強になってしまうからな。」
「そんなことができるんだったらお前が手を加えろよ。神様なんだろ?」
「これは人がやらなくては意味がないんだ。というわけでお前には異世界にとんでもらう。」
「いや待てよ!そこに行って俺は具体的に何をするんだよ。」
神様は引き下がらない俺にため息を吐く。
「はぁ…。大概の奴は世界を救ってくれとでも言えば食いついてくるのだがな。実のところを言うと¨神々の遊び¨というやつだ。様はお前たちが転生して異世界で滅茶苦茶やってるのを見て私たちは楽しむ。それだけだ。」
ここには神によってアホと認定された奴が来るのか。
「分かった。俺はもう死んだ身だしな。俺も生きれてお前等も楽しめるの一石二鳥だ。」
「そうか。物分かりが良くて助かる。では早速ーー」
「待てよ。こっちにも条件がある。」
「……。能力の類のことなら用意してやらん事もないが」
「ちげぇよ。お前も俺の異世界転生に付き合えってことだ。」
「理由を話してもらおう。」
「いや、独りぼっちだと寂しいだろ?それに…滅茶苦茶やってんのを目の前で見てた方が楽しめるんじゃねぇの?」
神様は俯いてしまった。なんだそんなに感動したのかーーと思ったが違ったようだ。
「くくくく……あははははは! お前という人間は本当に面白いやつだな。考えておこう。それでこそ私の見込んだ男だ。」
「え、ど、どういうことだってばよ!」
「行ってこい、神田天成。死ぬまで見届けてやろう。お前の滅茶苦茶を。」
ごく普通の男子高校生。神田天成。異世界に行きます。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる