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しおりを挟む「おーい、起きろー。」
神様の麗しき美声によって俺の眠りは妨げられた。いや美声はいいんだけれども。何だよここ。見れば見るほど平原がずーっと広がっているではないか。
俺が地上に居るってことはもしかしてここが異世界というやつなのではないだろうか。
「そうだ。魔法もちゃんと使えるし身体能力も地球にいた頃よりは比べ物にならないはずだぞ。」
「別にそこまでしなくて良かったんだがな。」
魔法とやらも最低限使える状態でのスタート、そこから這い上がっていくのが面白いのに。
「そんなことしたらお前死んじゃうだろ。」
「男子高校生の成長速度舐めんなよ。」
「成長する前に死ぬさ。元々喧嘩なんかしたことない人種のお前は特にな。」
そういえばそうだ。俺は生まれてこの方喧嘩も虐めもしたことないし虐められたこともない。皆勤賞も小中ともらい続け高校でももらっちまう予定だっていうのにな。
「皆勤賞貰いに元の世界に帰るか?死人だがな。」
「ここまで来て帰れるかよ。」
「そうかい。……ちょうどいい、西の方に町があるみたいだ。始めはそこに向かおう。」
なんだよそんなのも分かっちまうのか。今更ながらとんでもないチートを連れてきてしまったと実感する。
「長い道のりになるから覚悟しときなよ。あー後、これ。」
そういって差し出してきたのはローブと言われる衣類だった。説明すると上下が一続きになっており袖のついているワンピース形式のゆったりとした外套を指す。ガウンの一種。色は黒かった。
「こんな世界だ顔を見られるのはあまりよくない。それに私の力でそのローブには魔法や剣が当たってもはじかれるようにコーティングしてある。」
「はぇー。すっごい。」
まぁ、そんな物まで貰うほどこの世界は危険ということだ。俺一人で来ていたら神様のいう通り死んでいたかもしれない。
「ゆくゆくは戦闘技術も教えてやる。」
「そこまで世話してくれんのか」
「なんだ、私が全員蹴散らして良いのか?」
「すいません、教えてください。」
そんなふうに会話を交わしながら神様が言う西へと歩いて、俺の腹時計が三、四時間を指した時だった。
「まだー?」
俺は半分諦めながら「見ろ、あれが街だ。」という返答を待つ。
「まだだ……と言いたいが若干見えてきたぞ。」
おおお! と心を歓喜に染めて眩しい太陽に目を細めながら先を見た時だった。
「……。」
「お、おいどうした?」
街らしきものは全く見つからず目をギョロギョロと動かしようやく見つけたのは一粒の点のようなもの。
「街ってあの点のことなの?」
「ああ」
あそこに立つにはどのくらいの道のりだろう。
ふと、神様を見るとめんどくさそうに頭を?いていた。
「しゃーない、走るか。」
「いや走ってすぐ着く距離じゃないだろ」
俺がそういうと神様は呆れ顔をした。
なんだってんだよ。
「言ったろ?身体能力強化してあるって。」
「うっそだろお前」
あの点を? 一瞬で? 今のところなんの変化も感じられない体が?
「いや、そんままにしてたらお前乱用するだろ。必要な時だけ開放するって感じにしたかったんだがな。」
神様が俺を指さしちょこちょこっと指を動かす。
次ぎの瞬間。俺の体がずっしりと重くなった気がした。
「体が重くなったのはその能力に伴うだけの体になっただけの事だ。腹筋でも見てみろ、バッキバキに割れているぞ。」
そう言われて服をまくると俺が踏み込んだことのない未知の領域のそれがあった。
驚きすぎて神様と腹筋を二回ぐらい繰り返して見る。腕も足も一回り二回り、それ以上に太くなった気がするし。
しかしあんな点にしか見えない街に走ってすぐ着くくらいの筋力があるようにとうてい思えない。
「なんだ、漫画の敵に一人はいるパワーキャラになりたかったのか?」
「とんでもない。主人公にしてくれよ。」
「お前がこれからなっていくんだよ。馬鹿者。」
ビシッと軽い感じで叩かれたのだが頭がいきなり腫れ始めずきずきと痛む。
「我慢しろ。普通の人間だったら死んでいる力量だ。」
ヒエッ……。
「さぁ行くぞ。しっかりついて来いよ。」
そう言われて走ろうと片足を強く踏み出した瞬間だった。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
俺はものすごい勢いで超低空飛行していた。足が地面と擦れるか擦れないかギリギリである。
「馬鹿者。しっかりしろ。白めになるな前を向け。」
白目にもなってないし前も向いてる。しいて言えば目がめっちゃ乾くだけだ。
「っていうか神様もうそれ飛んでるじゃん!そっち教えてよ!」
「却下。というよりも今のお前には使えない。」
ちなみにこの会話の数十秒後には街についていた。
◇
「近くで見るとこんなにでっかいんだな。」
俺が驚いている間に神様は門番の人に話をつけてきたようで。
「入国しても問題ないそうだ。いくぞ」
入国?
「あぁ。ここには『女王』とかそういう類の人がいて国として成り立っているそうだ。」
道理ででかいわけだ。 と門番の方が道を開けてくれたので国に入ろうとすると神様がとある硬貨を三十枚渡してきた。
「この硬貨は『マギ』と言って一枚につき一マギと呼ぶ。この世界の金に当たるものだ。これで飯でも買え。」
「あぁ……って一緒に行動しないのか?」
「一緒にいなくてもお前が何をしているかどこに居るかぐらいはわかるさ。」
え。それって俺、ナニが出来ないじゃん。
「ば、馬鹿者。お前の情事に興味はない。」
「そっちが興味なくても俺が気にするんだが。」
そうこうしてるうちに街の中へ歩いてきたみたいで商店街らしきものが見えてきた。神様は住宅街みたいなところへ行ってしまい俗にいう独りぼっち。
「へいへい! 新鮮な果物そろってるよー!」
声の方向に振り向いてみると、若干名前は変わっているもののそれは俺がもといた世界の物に酷似していた。
「すみません。このさくらんぽっていうの一袋ください。」
見た目は普通にさくらんぼだ。
「へい。四マギだよ!」
このマギというのが日本円にしてどれくらいの価値かは分からないがかなりお得なんじゃないだろうか。
「種ありと種無しどっちいがいい?」
え。
「えぇと、種なしで。」
「あいよ。」
種まで取り除いてくれてんのか。それとも種がないのがこの世界では開発されたのか。
と、俺がさくらんぽを受け取ろうとした時だった。ざわざわしていた周りが一気に静かになり次々に頭を下げていく。
「あんた! はよ頭下げなさい!!」
「え、あ、はい。」
無理やり頭を下げさせられた俺の目の前に現れたのは¨ドレスを着た少女¨。周りの対応を見るに彼女はもしや『女王』なのではないか。
「そこのお前」
声をかけられたのは俺。周りがドワッと沸く。
「は、はい。」
「ついて来い。」
「え。」
「ついてこいと言っている。」
「ど、どこへ向かうのですか?」
一呼吸おいて、彼女が放った一言は衝撃だった。
「妾の城に招待してやる。そなたを気に入った。」
俺はこれからどうなってしまうのだろうか。一方の神様は呑気に住宅街のカフェで一服していることを俺は知らない。
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