ザ・レンアイ物語(ストーリー)

宇奈月希月

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ザ・レンアイ物語(ストーリー)

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 学校の廊下を、物凄い勢いで走る少年。その勢いは衰えることなく、目的地まで着き、勢いに任せ、ドアを開ける。
「うおーっ!!梨子ーっ!!」
「!!!」
 目の前には掃除中の少女――冴木梨子がおり、彼女はびくりと肩を震わせた。
「会いたかったよ!梨子ー!」
 と、少年――町井良一は彼女に近づくが、突然後頭部に激痛が走り、思わず蹲った。
「っ!!いってーっ!!誰だっ!?」
 勢いよく振り向くと、そこには箒を構える少女――神山優奈がいた。
「何してるのかな?町井良一くん?」
 どこかしら嫌味を含む彼女の台詞に、少年も皮肉を込めながら言った。
「くっそ……暴力女で有名な神山優奈かよ!」
「黙れ。梨子に手出したら、タダじゃおかないわよ」
「なんで、俺の邪魔をするんだ!」
「梨子が迷惑がってるからでしょ?」
「とことんムカツク女だな!今日こそ、謝罪の言葉を言わせてやる!」
 ビシッと優奈を指差す良一に、当の本人は無表情で彼を見つめ、「ごめんね」と棒読みで呟いた。
「おちょくってんのかっ!?」
「あんたが謝れって言ったから謝っただけだけど?」
 怒る良一に、さらりと言ってのける優奈。
 その行動も言動も、全てが気に食わない良一だったが、無理矢理気を静めるとくるりと梨子に振り向いた。
「ま、まあいい。俺は寛大な男だからな。さあっ、梨子!行こうか!」
 爽やか全開で良一は梨子に向き直ったが、そこにはもう梨子はいなかった。
「梨子ならここにいるけど」
 驚く良一を余所に、優奈がそう呟く。言葉通り、梨子は優奈の後ろにしっかりと隠れていた。
「な、なんでっ!?」
「あんたのことうざいって」
「なっ!?それはそっちの言い分だろ!」
「言葉使い悪い人嫌いだって」
「そんなのお前と変わらないだろ!」
「強い人がいいって」
「それなら、俺でいいと思うけど!」
「私に勝てる?」
「余裕でいける!」
「なら、後で体育館裏に来て」
 優奈はそこまで言って、梨子を引き連れつつ、歩き出した。

 体育館裏。
「だいたい、何でお前はいつも梨子と一緒なんだ?」
 良一は恨めしそうに問うが、優奈はつーんとしながら答えた。
「だって、親友だもの。一緒にいて、何がいけないってわけ?」
「仲が良いにも、程ってものがあるだろ」
「あんたみたいな変な虫に付かれたら困るから」
「俺のどこを見て変な虫だって!?」
「全部」
 さらっと答える優奈に良一の怒りは、ついに爆発した。
「勝負だ!神山優奈!」
「私が勝つけどいいの?」
「そんなの、やってみなきゃわからないだろ!」
「どうかな?」
 その優奈の一言に、ついに良一はぶちギレた。
 一触即発の状態だったが、間に入ったのは梨子だった。
「二人とも、ちょっと待って。そこでおしまい」
「梨子、なんて優しいんだっ」と感動する良一に対し、優奈は「梨子?」と訝しげに見つめる。
「わ、私、今日塾の日だから!優奈、行こう!」
 優奈の手を取って、さっさと帰路につく二人に、良一はぎょっとした。
「え?あっ、ちょ、ちょっと待って!」
 良一の声は、体育館裏に空しく響いた。

 翌朝、梨子は校門前で見覚えのある人物を見つけた。
「町井くん?」
 その言葉に驚いた良一は、勢いよく振り返った。
「え?梨子!?」
「あ、やっぱり町井くんだ。あのね、話したいことあるんだけど……」
「え、何?」
 告白かと淡い期待を胸に、今にも破裂しそうな心臓を抑え、良一は聞いた。
「忠告。町井くんじゃ優奈に勝てないと思うよ。ううん、絶対に勝てない」
「……え?」
 梨子からの言葉は、地味に胸に刺さる言葉で思わず固まってしまった。
「それって、俺が弱いってこと?」
 その言葉に、梨子はゆっくりと首を横に振った。
「ううん、違うよ。優奈が強すぎるんだよ。町井くんは、私達と高校入ってから知りあったから知らないだろうけど、優奈の家はね、家族みんな武道家なんだよ」
「え?……えーっと、それってつまり……」
「幼い頃から武術に長けてるってこと。だから、何か武術を習ってないと、優奈には勝てないよ。自分ちの道場じゃ、敵なしなんじゃないかな?」
 梨子はそこまで言うと、「そういうことだから」と去ろうとした。
「ちょっと待って!」
 良一は、慌てて呼び止めた。
「梨子は……梨子はどうなの?俺のこと……嫌いなの?」
「嫌いじゃないけど……好きでもない、かな。だって、今は彼氏なんていらないもの」
 梨子はそう言って、去って行った。

「で?なんであんたがここにいるわけ?」
 優奈は不服そうに呟いた。
「えっと……梨子にお前んちが道場だって聞いて。だから、本当か調べたくて……」
「それでわざわざうちに?っていうか、梨子と話したの?私がいない間に?」
「ち、違うって!梨子から話しかけて来たんだ!」
 その言葉を信用してないのか、優奈はじとっと良一を見つめた。
「ふーん……で?うちが道場なのは事実だけど、それ知ってどうするの?私に喧嘩売るの止めることにするの?」
「うっ……」
 痛い所をつかれ、良一は言葉に詰まった。
「私としては、そんななよなよした男に梨子のことを任せられないから、二度と梨子に近寄らないでほしいけど?」
「それなら!次のテストで勝負だからな!」
 思わず、睨んだ優奈に、良一は捨て台詞を吐いた。

「梨子ぉ……」
「あ、おはよう。どうしたの?あまり元気ないみたいだけど……」
 翌朝、死んだ顔の優奈に、梨子はきょとんとしながら挨拶をした。
「梨子ってば、良一と二人っきりで話したらしいね。しかも、うちが道場だってことまで教えて。場所まで教えるなんて」
「忠告してあげたんだよ。っていうか、優奈んちまで行ったの?なんで?」
「喧嘩で勝てないから、次の中間テストで勝負だって」
「……そうきたんだ」
「だから、梨子に勝てたらねって言ってやった」
「……そんなことになったんだ」
「頑張ってね、梨子!」
 巻き込んだ優奈自身の声援を受け、仕方なく梨子は頷いた。

 そして、時は過ぎ。中間テストの結果発表の日。
「ついに、この日がやってきたな」
「私は、あんたが梨子に勝てるなんて、全く思ってないけどね」
 お互い、勝ち誇った笑みを浮かべ、向かう合う。とは言え、実際に戦うのは梨子なのだが。
「ふふふ……俺はかなり頑張ったんだぞ!見ろ!この順位!学年三位だ!」
「はいはい、よくできましたー。梨子、見せてやりな!」
「うん」
 梨子が取り出したテストの結果表を見て、良一の顔は青ざめた。全教科満点。文句なしの学年一位だったからだ。
 あまりのショックに膝から崩れ落ちる良一。
「まあまあ。そこまで落ち込まないで」
 正直、優奈は何もしてない訳だが、良一を励ましていた。
「貴様にわかるか!俺は、本気で運命の出会いだと思ってたんだぞ!」
「運命的って言うか、梨子の優しさの話でしょ」
「そ、そんなことない!!」
「夕立が降ったある日、たまたま梨子が傘を貸してくれただけじゃない。運命的でもないし、他人にも傘を差しだせる梨子の優しさに惚れただけでしょ?」
「うっ……そう、だけど、さ……」
「とりあえず、梨子のことはさっさと諦めてちょうだい。まあ、いつまでも引きずらないで、さっさと新しい恋でも見つければいいよ」
 そう、さらりと言ってのけると、優奈は梨子を連れてさっさと去って行った。
 町井良一。運命だと思っていたこの恋は、もののみごとに完敗したのである。
「……優奈って案外、良い奴なんだな……」
 また一波瀾ありそうだけど、この話しはまた今度。
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