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新月の運命
邂逅・3
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「ああ。やっと見つけたよ。うちの愚息と、愛娘が世話になったようだな」
突然響いた声に、ナギサが驚いて振り向くと、ルシフが立っていた。
「魔王!?」
「親父!?」
ナギサとレイガの声が被る。
ルシフは不敵な笑みを浮かべながら、二人の元へと近づいて来る。
一瞬、呆けた顔を見せたキールだったが、すぐに口角を上げた。
「はっ。まさか、三大王である魔王まで来るとはな。余程、暇なのだろうな?」
「ははっ。可愛い娘にちょっかいをかけている奴がいると聞いてね。どこの馬の骨なのかと確認したくなっただけさ」
そう笑みを零しながら言うルシフだが、目は笑っておらず、あまりの圧にナギサは思わず、引き留めようと握っていたレイガの服を更に強く握った。
「娘、ね。まさか、殺した相手の娘を懐に入れるとは、魔王も随分と甘いのだな」
キールの挑発に、ルシフは笑みを崩しはしないが、嫌悪感を込めた目でキールを見つめた。
「それは貴様と大して変わらないのでは?国を滅ぼした大神の末裔である娘と婚姻を結びたいなど、物好きにも程があると思うが?」
ルシフに言い返され、キールから笑みが消えたが、すぐに鼻で笑った。
「そうだな。しかし、貴様の実の娘が欲しいとはさすがに言えないだろう?私も、子供に手を出すほど狂ってはないからな」
キールはそこまで言うと、「まあ、いい」と踵を返した。
「今日のところは、挨拶までにしておこうか。では、失礼する」
そう言い残し、一方的に去って行った。
極度の緊張に晒されていたナギサはホッとし、パッと顔を上げるとレイガと目が合った。
レイガはぽかんとした表情で、ナギサに捕まれた腕を見ていた。
「あっ!ごめんなさい!」
ナギサが慌てて離したが、すぐにその手をぎゅっと握られた。
「ナギサ!怖かったよね!あんな変態に一方的に言い寄られて、しかも嫌味を言われるなんて!」
「いや、どちらかと言えば、挑発をされていたのはあなたの方だし、その挑発に乗ろうとしてたのもあなただわ」
ナギサは思わず言い返したが、聞こえていないレイガは、「俺が守るから心配しないで!」とか言い放つ。
ナギサは呆れた目でレイガを見た。「全然安心できないから結構よ」と掴まれた手を放そうとするが離れず、力ずくでレイガの手と戦っていた。
が、すぐに「女性一人も守れていない奴が言わないでくれるかな」とルシフがレイガの後頭部を殴った。
「いってぇ!親父、何すんだよ!」
「ナギサがとても嫌がっているから、離してあげなさい」
笑顔で言い放つが、全然目が笑っていないルシフに、ナギサは大きな溜め息を吐いた。
「なんで!?こんなに怖がっているのに……ぶはっ!」
レイガが言い終わる前に、今度はレイガの横っ面を叩く。
「うんうん。どちらかと言えば、お前の奇行に怖がっているだけだから」
「……ありがとう、魔王」
ナギサは、倒れたレイガを踏むルシフに向かって言えば、彼はナギサを見て、眉を寄せた。
「大丈夫だったかい?このアホ息子もそうだが、あの変態クソ野郎にも追われていたのだろう?」
「え、ええ。なんだかんだで似た者同士って感じよね。どっちも人の話聞かないんだもの」
「まあ、アホ息子と比べて、あちらは全て計算通りだと思うがな」
ルシフはそう言うと、大きな溜め息を吐き、倒れたレイガに向かって転移魔法を施し、彼だけ先に魔界へ送り返した。
「よし。とりあえず、これで荷物は一つ減ったとして……ナギサ、とりあえず一度冥王のところへ行こう。あいつも、冥界にキールが来ていたとなれば、動かざるを得ないからな」
その言葉に、ナギサは頷いた。
ルシフとナギサから報告を受けたリキは、思いっきり机に突っ伏した。
「もうやだもうやだ!何で仕事ばかり増やすんだよ!」
いやいや期の子供のように喚くリキに、ルシフは苦笑いを零した。
「まあ、冥界の特性上、結界を強くするのは難しいだろうしな」
「そうですね。極力、検閲を厳しくした上で、居住区での軍の配備を強化するしかないでしょうね」
ルシフの言葉に、カイが代わりに答える。が、リキは思いきり顔を上げる。
「居住区は居住区で、あいつの許可がいるだろ!?俺、苦手なんだよ!」
リキの叫びに、ナギサは「あいつ?」ときょとんとした。
カイは溜め息を吐きながら、口を開いた。
「冥界両族長のことです。魔界領に、魔界両族長がいるのと同じように、冥界の一般居住区にもいるのですが……キョウノ様と比べると、かなりプライドが高い方でして。……私としては、キョウノ様と違って封印の神と契約していないので、すっこんでいてほしいのですが」
カイはナギサに説明をすると同時に、心の声が思いっきり漏れていた。
が、ルシフはふと口を開いた。
「とりあえず、三大界とも厳戒態勢に入った方がいいのは間違いないだろうな。聖界は兎も角、魔界と冥界は協力体制を敷いた方がお互いのためだろう」
「ええ、そうですね。最悪、こちらからアクションを起こした方が、早期解決は望めると思います。ただ、そうなると……」
カイはそこまで言うと、ナギサをじっと見た。それに釣られるように、ルシフとリキもナギサを見、「え?何?」とナギサはぎょっとする。
「代理人に動いてもらうことになるってことだな。ただ……そのナギサが狙われているからな」
リキはそう言って溜め息を吐いた。
「ああ、そういうこと。大丈夫よ。何なら、私のことだから、自分でちゃんと決着をつけるわ。それに、ああいう奴、一度ぶん殴らないと気が済まないじゃない」
ナギサはそう言うが、誰もが「そう簡単に決着つくなら、早々に解決できるんだよな」と思っていた。
突然響いた声に、ナギサが驚いて振り向くと、ルシフが立っていた。
「魔王!?」
「親父!?」
ナギサとレイガの声が被る。
ルシフは不敵な笑みを浮かべながら、二人の元へと近づいて来る。
一瞬、呆けた顔を見せたキールだったが、すぐに口角を上げた。
「はっ。まさか、三大王である魔王まで来るとはな。余程、暇なのだろうな?」
「ははっ。可愛い娘にちょっかいをかけている奴がいると聞いてね。どこの馬の骨なのかと確認したくなっただけさ」
そう笑みを零しながら言うルシフだが、目は笑っておらず、あまりの圧にナギサは思わず、引き留めようと握っていたレイガの服を更に強く握った。
「娘、ね。まさか、殺した相手の娘を懐に入れるとは、魔王も随分と甘いのだな」
キールの挑発に、ルシフは笑みを崩しはしないが、嫌悪感を込めた目でキールを見つめた。
「それは貴様と大して変わらないのでは?国を滅ぼした大神の末裔である娘と婚姻を結びたいなど、物好きにも程があると思うが?」
ルシフに言い返され、キールから笑みが消えたが、すぐに鼻で笑った。
「そうだな。しかし、貴様の実の娘が欲しいとはさすがに言えないだろう?私も、子供に手を出すほど狂ってはないからな」
キールはそこまで言うと、「まあ、いい」と踵を返した。
「今日のところは、挨拶までにしておこうか。では、失礼する」
そう言い残し、一方的に去って行った。
極度の緊張に晒されていたナギサはホッとし、パッと顔を上げるとレイガと目が合った。
レイガはぽかんとした表情で、ナギサに捕まれた腕を見ていた。
「あっ!ごめんなさい!」
ナギサが慌てて離したが、すぐにその手をぎゅっと握られた。
「ナギサ!怖かったよね!あんな変態に一方的に言い寄られて、しかも嫌味を言われるなんて!」
「いや、どちらかと言えば、挑発をされていたのはあなたの方だし、その挑発に乗ろうとしてたのもあなただわ」
ナギサは思わず言い返したが、聞こえていないレイガは、「俺が守るから心配しないで!」とか言い放つ。
ナギサは呆れた目でレイガを見た。「全然安心できないから結構よ」と掴まれた手を放そうとするが離れず、力ずくでレイガの手と戦っていた。
が、すぐに「女性一人も守れていない奴が言わないでくれるかな」とルシフがレイガの後頭部を殴った。
「いってぇ!親父、何すんだよ!」
「ナギサがとても嫌がっているから、離してあげなさい」
笑顔で言い放つが、全然目が笑っていないルシフに、ナギサは大きな溜め息を吐いた。
「なんで!?こんなに怖がっているのに……ぶはっ!」
レイガが言い終わる前に、今度はレイガの横っ面を叩く。
「うんうん。どちらかと言えば、お前の奇行に怖がっているだけだから」
「……ありがとう、魔王」
ナギサは、倒れたレイガを踏むルシフに向かって言えば、彼はナギサを見て、眉を寄せた。
「大丈夫だったかい?このアホ息子もそうだが、あの変態クソ野郎にも追われていたのだろう?」
「え、ええ。なんだかんだで似た者同士って感じよね。どっちも人の話聞かないんだもの」
「まあ、アホ息子と比べて、あちらは全て計算通りだと思うがな」
ルシフはそう言うと、大きな溜め息を吐き、倒れたレイガに向かって転移魔法を施し、彼だけ先に魔界へ送り返した。
「よし。とりあえず、これで荷物は一つ減ったとして……ナギサ、とりあえず一度冥王のところへ行こう。あいつも、冥界にキールが来ていたとなれば、動かざるを得ないからな」
その言葉に、ナギサは頷いた。
ルシフとナギサから報告を受けたリキは、思いっきり机に突っ伏した。
「もうやだもうやだ!何で仕事ばかり増やすんだよ!」
いやいや期の子供のように喚くリキに、ルシフは苦笑いを零した。
「まあ、冥界の特性上、結界を強くするのは難しいだろうしな」
「そうですね。極力、検閲を厳しくした上で、居住区での軍の配備を強化するしかないでしょうね」
ルシフの言葉に、カイが代わりに答える。が、リキは思いきり顔を上げる。
「居住区は居住区で、あいつの許可がいるだろ!?俺、苦手なんだよ!」
リキの叫びに、ナギサは「あいつ?」ときょとんとした。
カイは溜め息を吐きながら、口を開いた。
「冥界両族長のことです。魔界領に、魔界両族長がいるのと同じように、冥界の一般居住区にもいるのですが……キョウノ様と比べると、かなりプライドが高い方でして。……私としては、キョウノ様と違って封印の神と契約していないので、すっこんでいてほしいのですが」
カイはナギサに説明をすると同時に、心の声が思いっきり漏れていた。
が、ルシフはふと口を開いた。
「とりあえず、三大界とも厳戒態勢に入った方がいいのは間違いないだろうな。聖界は兎も角、魔界と冥界は協力体制を敷いた方がお互いのためだろう」
「ええ、そうですね。最悪、こちらからアクションを起こした方が、早期解決は望めると思います。ただ、そうなると……」
カイはそこまで言うと、ナギサをじっと見た。それに釣られるように、ルシフとリキもナギサを見、「え?何?」とナギサはぎょっとする。
「代理人に動いてもらうことになるってことだな。ただ……そのナギサが狙われているからな」
リキはそう言って溜め息を吐いた。
「ああ、そういうこと。大丈夫よ。何なら、私のことだから、自分でちゃんと決着をつけるわ。それに、ああいう奴、一度ぶん殴らないと気が済まないじゃない」
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