新生月姫

宇奈月希月

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出会いと雪解け

スパイラルシンドローム・2

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 ルミナ=ルベラ。魔王の妻であり、ダークの実母である彼女は、かなり聡明な女性であった。魔王の妻として、ルシフを支えるのはもちろんのこと、政治に関しても手腕を発揮し、ルシフが魔王の仕事を一部任せるぐらいであった。
 一方で、元々魔族出身ということで、貴族としての汚い部分も知っており、裏では夫であるルシフのために手段を選ばない、という面もあった。
 そんな彼女が冷たい声音で問うているのに、背筋を伸ばしただけのカイを見て、ダークは「カイも只者じゃないからな」とぼんやりと考えている。
 その間にルミナが手紙に目を通すと、物言いたげな目でカイを見つめた。
「先日、ルシフ様がリキ様を訪ねて来まして。思うことがございましたので、リキ様からルミナ様へお願い、ということでございます。敏いあなたでしたら、既に気付いておられると思うのですが」
「……最近の情緒不安定の話、ですか?」
「はい。ナギサ様との再会後、あまりよろしくない精神状態かと」
 カイが率直に答えれば、ダークはぎょっとしてカイを見つめた。
「……元々、あの件においては、ルシフ様も反省しており……いえ、後悔しております。できれば、ルシフ様には魔王としての威厳を持って、ナギサさんに接していただきたいのですが」
 ルミナはそこまで言うと、大きな溜め息を吐いた。そのまま話を続ける。
「彼の不安定はわかってはいるのですが……今、気付いているのは私だけですが、これが魔族内に知られれば、あまり状況は良くないでしょうね。ナギサさんが帰還したことは、魔界でもかなり大きな話題になっていますし、彼の状況がここに直結しているとなれば、魔界内で混乱が起きてもおかしくありませんから」
「その可能性はかなり低いかと思われます。見た所、ダーク様はルシフ様の状況に気付いていなかったみたいなので」
 カイに突然話を振られ、しかも図星だったことで、絶句したダークは顔を手で覆うとその場で沈んだ。
「わかりました。では、冥王からのお願いを聞きましょう。ルシフ様のことはお任せください」
「ありがとうございます。リキ様にはその様に伝えさせていただきます。また、ルシフ様だけの問題ではありませんので、ナギサ様に関しては、こちらからもアプローチしてみます」
 カイが頭を下げながら礼を述べると、ルミナも「お願いします」と答え、その場で解散になった。

 王城を後にしようとするカイを、ダークが呼び止めた。
「なあ、カイ。その話だと、ナギサにも非がある、ということにならないか?」
 ダークの言葉に、カイは苦笑いを浮かべたが、ダークはそのまま話を続ける。
「俺が言うのもおかしいかもしれないけど、ナギサは悪くないだろ。父親の仇を取りたいなんて、誰でも思うことだろうし」
「そうですね。それについては、私も同意見です。ですが、ナギサ様が次期大神である以上、ルシフ様と顔を合わせ、時には協力しなくてはなりません。それに支障が出るのは、こちらも不都合なのです」
 正論だが納得いかない答えに、ダークは顔を顰めるが、カイはくすりと笑みを零した。
「とは言え、ナギサ様もかなり聡明な方なので、何かきっかけがあれば、解決すると思いますが。むしろ、私はダーク様の方が心配です」
 突然カイに話を振られ、「え?俺?」とダークが目を見開く。
「ええ、ここは父であるルシフ様の肩を持つべきでしょう。恋心だけでナギサ様の肩を持つのはいかがかと」
 その言葉にダークはぼっと顔を赤くすると、口をぱくぱくと動かした。
「なっ!?ちっ、違う!!別にっ、ナギサにそんな感情なんてないっ!」
 あまりの赤面ぶりに説得力は皆無で、カイは「若いっていいですね」と笑いながら王城を後にした。

「カイ、お疲れ様ー。ありがとなー」
 帰宅したカイに、リキが声をかける。
「キョウノもルミナ妃も大丈夫そうだったか?」
「ええ。お二方も協力していただけるようです」
 その言葉に、安堵するリキだったが、カイは間髪入れずに口を開いた。
「あとは、ナギサ様を何とかしなければ、ですね」
「あー……それが一番の問題だよな。大神が茶々を入れなきゃいいんだがな」
 頭を抱えるリキを見ながら、カイも思わず視線を落とした。
 大神、ルゥの激しさには、元々頭を抱えていたが、その息がかかっているであろうナギサをいかに自立させるか、という難題に、カイはリキにバレないように溜め息を吐いてしまった。
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