戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

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第28話 試作銃と短筒

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ダーン達の為にも、魔力鉄砲を早く完成させてあげたい!
心の焦りとは裏腹に、作業は思った様には進まずにいる。
道具雑貨店で、資材を買い添えろ得て、魔力鉄砲の試作品
を作り始めたのは良いが、ある問題が発生していた。

その問題とは、試作品を試射する時に原因が解ったのだった!
固定された台座に、魔力鉄砲を固定して、紐を使い引き金を
引いた時だった。魔力鉄砲が爆発して砕け散ってしまったのだ。
これには、俺もオレークさんも驚きと今までの苦労が、砕け
散った事に肩を落としてしまった。

芳乃・静・秋にも悪い気持ちで一杯だった。

静には魔力鉄砲の木材を作って貰ったのだが、それが1発の試射
で全てが、砕け散ったのだから、皆が肩を落とすのも解る!
だが、俺達には遣らねばならないのだ。

俺とオレークさんは原因を究明する為に、砕けた鉄砲を拾い集め
どの部分が一番酷く、壊れてるかを探ると直ぐに原因が解った!
魔力球と魔法陣が描かれている筒が、一番酷い壊れ方をしていた。

この事をオレークさんから訊いた俺は、板バネの魔力球が、魔法陣
の描かれてる筒に接触する時間が、遅いから爆発したと訊かされた。
この現象は、魔力大砲でも稀にあるそうで、魔力大砲で起こる事は
滅多にないそうだ。

何故、魔力大砲では起きないかと言うと、初期の魔力大砲は、板バネ
を閉鎖機部分に使っていたせいで、魔力鉄砲と同じ事が起きたそうだ。
中途半端に、魔力球に魔力を注ぐと、爆発の原因になるそうだ!

この問題を解決したのが、スプリングバネと言われる物で、ぐるぐる
巻いた鉄のバネだとか?それが確りと魔力球に当たり、半端な接触が
無くなり、今の魔力大砲へと進化したそうだ。

だから、魔力鉄砲も原因となっている板バネを廃止して、スプリング
バネを採用する形になる。そうする事で、不発すれば即爆発する事が
無くなり、安全に魔力鉄砲が扱える見込みだ!

その事を皆に話すと、皆も理解できたのか、落とした肩が上がり、皆の
顔も明るくなっている。

それから2日後の事!

試作第2号銃が完成していた。

試作初号銃の失敗を乗り越え、完成した試作2号銃を試験台の上に固定する
確りと台に、魔力鉄砲を固定したことを確認すると、紐を安全な場所まで伸
ばして、いよいよ2回目の試射が始まる。

「バンッ!!!」

訊きなれた音が聞こえると共に、皆の顔が喜びに満ちていったのだ。

「やった~好成様、成功しましたよ!」

芳乃が俺に抱きついて、俺に喜びを示している。
静も秋も、皆が俺に抱きついて来てが、俺は3人も持てないので、後ろに
尻餅を付いてしまった。それでも嬉しい。嬉しくて堪らない!

オレークさんはと言うと、オレークさんの息子のダニエルと娘のターニャ
と共に3人で、抱き合って涙を流しながら喜んでいたのだ。

オレークさん、魔力鉄砲がやっと完成しましたね!俺がそう言うとオレーク
さんが「これが魔力鉄砲か、魔力大砲より小さくて、持ち歩く事もできるし
便利な物だな!」と魔力鉄砲を褒め称えている!

オレークさんには、銃身を鋳造で作って貰っていたのだが、肝心の引き金部分
や魔法筒などは、手掛けておらず、組み立ても全て俺達が行なっていたのだ。
完成品を見ても、どう言う物かは解らなかったのだ。

細々した物は、全て俺が作ったが、スプリングバネと言う物は、オレークさん
に作って貰っている。この魔力鉄砲は、俺とオレークさんに女子衆が居なけれ
ば完成はしないのだ。他の鍛冶屋で作ろうとしても、作れるだろうが全て鍛冶屋
で作れるはずも無く、細々した部品は、細工師に頼まないと行けないし、木材の
部分なども、大工などに頼まなければならない。そうすると、余所に頼んで作っ
た分だけ、費用が高くなる。そんな高い魔力鉄砲を作っても売れずはずが無い!
費用を掛けずに、鉄砲を作らなければ、利益などが上がる筈が無いのだ。

その事を俺がオレークさんに言うと、息子のダイエルに、細工を教えて欲しいと
頼まれたのだった。俺達は奥地の温泉地に帰るのだと言うと、一緒に連れて行っ
て鍛えて欲しいと頼まれた。ひょんな事から弟子が出来てしまった。

まさか....娘のターニャも静に弟子入りさせたいとか、言われそうな勢いだな?

それとグローブ鉄砲に使う、魔力鉄砲は通常の物では大きすぎて、ケット・シー
族のダーンでは使えるのだが、使いづらいと言われたので、魔力鉄砲の短筒銃を
作る事になったのだ。

短筒銃を作った事はなく、これまた1から設計して、作り上げないとわるく
なったのだ。また頭が爆発しそうになるのだろう......考えただけで嫌になるが
ダーンやケット・シー族の為だと割り切ると、嫌な事でも頑張れるのだから、
人間ってのは不思議な生き物である!

ダーンにグローブ剣を一振り預かり、それで試作品作りを始めだしたのだ。

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