戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

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第64話 神様と謎の物

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宿に帰り着いた4人は、食堂で怪我の治療を始めたのだった。3人とも指だの、
手のひらだの、膝を怪我をしてると見せてくるのだが、俺の見立てでは、何処
怪我をしてる様には見えなかった。

「好成様、膝を擦り剥いてしまったんです。消毒してください」

こう言っているのは、芳乃なのだが、膝を触って見ても捲れてる箇所は無かった。

「私は手の平を手刀を使った際に、強く打ってしまって、掌が腫れているのです」

こう言っているのは、秋なのだが、掌は腫れてなどおらず、綺麗な手のままだったのだが、
本人は腫れていると言っている。

「指に棘が刺さってるみたいで、チクチクして痛いのです!」

最後は静なのだが、棘が刺さって痛いのならば、自分で取れば良いだけなのに、俺に
態々、棘を取って貰おうとしているのだが、何故なんだろうか?

これまで、3人には無理を言って来たから、今日は優しく接してあげようと、好成は思い3人に、
それぞれ治療を施していったのだった。

治療も終ったので、そろそろ本題に入ろうと思い、3人に神様と出会った時の事を
訊いて行ったのだった。そうすると芳乃は、神様との遣り取りを振り返りながら、
話だしていた。

「私は神様に、好成様と幸せに暮らせるなら、この世界に来ますと言うと、神様は
良かろう、ならばアールブヘイムに送り届けると言うと、私は、アールブヘイムで
何をすれば良いかを訊いたのです。そうすると、神様は2人で考えろと言われました
そして私は、平和に暮らすだけでも良いのかと訊くと、神様は、そうじゃぞっと言われ、
私に謎の物を渡したのです。その後に、生前に持っていた物を持たせてくれるとも言わ
れて、神様の声が消えたのです」

なるほど、このアールブヘイムでは、何をするのも自由と言う事か、芳乃からは平和な世界で、
新たに暮らせるとしか訊いてなかったのだが、俺が勘違いをしていた様だな!この世界では、
平和には暮らせるが、争いが無いわけではないと言う事だったのだろう!そう考えると、
今までの事柄が繋がるのである。


「私と秋も、神様からアールムヘイムと言う世界があるから、2人で行かんか
と言われましたよ!秋と2人で話し合って、この世界に来る事を決めたのですが、
生前に使っていた物は持たせて貰えましたが、芳乃ちゃんの言った用な物は神様
からは、授かってないです!」

「静ちゃんの言うとおりです!神様からは何も貰ってないです!」

2人は、神様からは何も貰えないままアールブヘイムに遣ってきた来たのか!
そうすると、何故か芳乃だけ神様から、謎の物を渡されたのだろうか?それが
不思議でならない!俺は神様から授かった物を持っているかと訊くと、芳乃は
温泉地に置いて来たと言ったのだった。

困った時に使う物ねぇ.....何だろうか?俺には理解できず、静と秋に訊いても
解らないと言われてしまった。芳乃はと言うと、神様から授かった本人なのだが、
使い方までは、訊いては居ない様で困った顔をするばかりであった。

俺は憶測で3人に、こう話して訊かせたのだ!謎の物と言うのは、多分なんだが、
困ったら使えと神様は言ったと芳乃は言っているから、謎の物を使うと食料や水が
出てくるんだよ!そうに違いない。

俺の憶測に3人は、変な顔をして俺を見ている。

「好成様、それは違いますよ!神様がそんな事に力を使うはずがありません!
私が思うに、これを使うとですね!家や家畜が出てきて、2人で平和に暮らせ
る用になって居るのですよ!そうに違いありませんわ」

芳乃は俺との幸せな暮らしを目指して、この世界に来たのだから、そう思いたいの
だろうが、その謎の物を使うと家が出てくるとか、幾らなんでもありえない!

「いやいや!家や家畜も良いですが、謎の物を使うとですよ!想像も出来ない程の、
武器や弾薬が出てきてですね。これを使って安全に暮らせって意味だったんですよ!
そうに違いありませんよ!」

物騒な事を言っているのは、静である!謎の物を使ったら武器や弾薬が出てくるって
それならば、生前に持っていた鉄砲や刀などは、何故この世界に持ち込めたのか?
そう考えたら、静の意見は却下するしかなかった。

「静ちゃんの意見はダメダメだよ!そうなると、生前持っていた武器を何故持ち込め
たのかと、静ちゃんは思わないの?そう考えたら、謎の物を使って武器や弾薬な有り
得ないよね?そこでね!私が思うに、これを使うとね!莫大な財宝が出てくると思う
んだよ!世の中は銭だよ銭!銭があれば、どんな世界でも幸せに暮らせるんだから、
銭がなければ、家も買えないし、家も家畜も武器も弾薬も買えないんだよ!そう思わない?」

≪おぉ~~!≫

秋の鋭い慧眼が、俺達3人の意見を全て無かった事にしてしまったのだ。確かに秋の
言う通りかもしれないな。世の中は、銭があれば何でも出来るのだが、人が居れば銭
も使えるのだが、俺達が着いた場所と言うと、何もない平原だったのだ。銭があって
も使う場所が無ければ意味は無いのだ。でも、それぞれの言ってる事も一理あると俺
は思い出していた。

4人が困った時になったら、使ってみれば、神様から授かった物の正体は解るのだが
未だに困った状況には、4人とも成ってなかったのだ。神様には悪いが、これからも
困った事が起きるとは考えにくい!でも、宗教闘争に巻き込まれた場合には、使う
余地がありそうではある。そう考えると、神様から授かった物は、非常に俺達に取って
心の支えになる物だったのだ。

3人に、精霊教に付いての出来事を話して置かないと、之から何が起こるか解らない
状況になるかも知れなかったので、謎の物の話が、一段落した時を見計らってから、
俺は3人に精霊教の事と、インガ婆様の世界史の話を始めたのだった。

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