戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

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第93話 正面突破と特徴

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「んっ!姉上、顔を真っ赤にして、どうされたのですか?もしや
お加減が宜しく無いのではないですか?」

私の事は、どうでも良いのです!今は宿に立て篭もっている
貴族達を父上の前に、引っ立てる事が重要なのですよ!

白の精霊騎士団・団長アイリは、白の団の副団長エルナに対して
恥ずかしい一面を見せまいと、必死になって話しを逸らしたので
あった。それもそのはず。アイリは黒の団の副団長のヴィクトル
に対して、憧れを抱いていたのである。

エルナ!裏手は大丈夫ですか?まだ朝も明けたばかり、薄暗い場所
もあります。そんな場所に隠れられたら探すのが一苦労になるので
裏手だけは厳重に警戒なさい!

「はい姉上、裏手には十分に団員を配置しております。逆に言うと
表が手薄な気がしますが、そこは、ヴィクトル殿が居られるから、
心配はないでしょう!」

そうね!ヴィクトル殿ならば、どんな相手であろうと捩じ伏せてし
まうでしょう!後、先程の報告は訊きましたね?

「はい、姉上!」

降伏勧告を私がしますので、エルナは団員達に指示を出して下さい。
もしも、降伏勧告に応じなくて逃げ出す様であれば、その時は力ず
くで止めなければなりません!

「正面には重鎧の者達を配備しております。矢を射掛けられたとし
ても、怪我1つ無いでしょう!ご安心下さい」

うむ!

アイリは、エルナの報告に満足して頷くと、宿の正面玄関に向かって
歩き出していたのだ。そして、建物に声が聞こえると思える場所まで
辿り着くと止まり、筒状の棒を取り出して口元まで、その棒を運ぶと
アイリは降伏勧告を告げたのである。

私は、白の精霊騎士団・団長アイリである!ヴィルフリート男爵には
先日起きた事件の容疑者として、身柄を拘束し、辺境伯の屋敷に連行
します。お手向かいしなければ、此方も武力には訴えない所存です。
どうか、冷静になって話し合いをしましょう!」

アイリは、ヴィルフリート男爵に向けて、降伏勧告をしたのだが、
当の男爵達はと言うと!?

「叔父上、正面玄関の方で何やら動きがあった様ですぞ!こうしては
おられません!早く脱出をしましょう!」

「そうじゃな!おい、傭兵隊長!準備は出来たのであろうな?」

《チッ!》

傭兵達は、貴族の物言いに、心底嫌気がさしていたのだ!
貴族が何か言う度に、傭兵の誰かが舌打ちをしている状態
であり、もはや士気も下がる所まで下がっていた。それで
も傭兵隊長は、部下達と自分だけでも逃げれる様に、努力
をしていた。

「よし!準備は良いか?」

《おう!》

「正面突破して、俺達は東の海岸まで一気に逃げてしまうぞ!
戦闘は極力避け、正面に居る邪魔な敵だけを排除しろ!いいな?」

《おう!》

「よし!出撃だ。野郎共!」

《おらぁ~!》

傭兵隊長が、そう言うと宿屋に横にある馬屋から、傭兵達は凄い
勢いで飛び出したのであった。そして、男爵達はと言うと、何故
か男爵達の乗った馬車には、御者をする者はおらずに、馬車だけ
が残されていたのだった。

「おい、レオン直ぐに御者台に行き、馬車を出発させるのじゃ!
傭兵達が、正面の敵を引き付けている間に、我々だけで東の海岸
まで辿り着くんじゃ!」

「叔父上、解りました。直ぐに私が馬車を動かして、御覧に入れ
ますぞ!しかと見ててくだされ!」

そう言うと、男爵の甥は御者台に上ると、直ぐに馬車のブレーキ
を外し、馬車を馬屋から出したのであった。

「おいルドルフ!御者台に上がり、私の横で馬車の護衛をしてくれ」

「はい、解りました」

ルドルフと言う甥は、分家にあたる者の子であり、レオン様な本家
筋の者とは違ったのだった。だから、嫌な事は全てルドルフに任せ
る事がレオンは多かったのだ。

ルドルフは、御者台に上がるとクロスボウに矢を装填していた。
それも、御者組合が支給しているクロスボウなので、小さいが
威力は高めだったのだ。

そんなクロスボウを構えている馬車が、正面玄関の方に向かって
行くと、敵は馬車を必死になって止めるのは解りきっていたのだ。
だから、傭兵隊長は男爵に対して、馬車は捨てて馬で逃げるよう
に進めたのだが、貴族達は馬の乗り方など知らなかったのだ。

だから、目立つ馬車で逃げ様としていた貴族達は、傭兵達にしたら
守り難いし、逃げ難いだけの代物であった。

「あんな遅い乗り物で逃げようだ何って、頭がどうかしてるぜ!
もう依頼主なんざ死んだと、団長に言っとけば片付くかもな?」

傭兵隊長は、貴族を見捨てて自分達だけで逃げる事を選択した
みたいである。貴族の乗る馬車は、狭い町中で早くは動けない
のに、こんな乱戦では更に馬車は遅くなっていたのだ。

乱戦と混乱で、依頼主が死ぬ事など珍しくもない事であるのだ。
傭兵隊長は決断を下すと、部下達も直ぐに文句も言わずに従い
この乱戦を切り抜けようとしていた。

だが、傭兵隊長達の方が不運であったのだ。何故ならば彼等の
前には、大陸で2つ名まで付けられている鬼剣士が、前に立ち
はだかって居たのだから、不運としか言いようが無かった!

「隊長!あの前の男の甲冑に見覚えないですか?まさか.....」

「あっあああ.......あれは紛れも無い!大陸で鬼剣士と呼ばれた
男が着ている甲冑だ」

副団長の装備している甲冑には、独特の特徴と珍しい色合いで
塗られている甲冑が特徴であった。独特の特徴とは、ボロボロ
の甲冑なのに、作りは確りしているのか壊れないのだ。

腕に付いている小さな細長い盾は、半分以上は壊れており、そして
所々に角や装飾品が付けられて要るのだが、その全てが壊れている
壊れた角や装飾品などが、渋い味を出しているとも言えた。

それに、副団長の甲冑は、全部がエメラルドグリーンで塗られており
そんな派手な色を使う者等、大陸を探しても副団長だけであろう!
これが、鬼剣士の特徴であった!

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