戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

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第108話 イオ殿下とルートの策略

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食事の用意が済むまで、3人は話をしだしていた。

「余は、イェオリ・エクストランドである!現国王の弟で王位継承権
第5位を持っている!身近な者は余をイオと呼ぶから、そちも余の
事をイオと呼ぶが良いぞ!」

はっ!王弟殿下が、そう仰っているならば、私共は此れからイオ殿下
と呼ばせて貰います!

「うむ、余は北方小王国連合の一員である、我がエクストランド王国
の王族は、代々、北方の地を統べる者として此の地を支配して来た。
そして、余は此の度、北海域諸島の総督として就任したのである!」

それは、めでたい事です!北海域諸島の総督に就任されたと言う事は、
総督府がある、大陸の街ヤコブスタードには、何時お戻りになられる
のですか?

「シーランド辺境伯には、北海域諸島の総督に就任した事を知らせる
為に来たのだが、此の島は凄く過し易くて長いをしてしまうが、側近
である男爵との連絡が取れなくなったのだ。だから、男爵と連絡が取
れるまでは、余は身動きが取れぬ!」

そうで御座いましたか!それは難儀なされているのですね!イオ殿下
に、連絡を取らないなど臣下に有るまじき行いで御座います!その様
な臣下などお忘れ下さい!もしも殿下が宜しければ、我が娘である、
ラウラ・シーランドが殿下の新しき臣としてお使いします!

「ご紹介に預かりましたラウラ・シーランドで御座います。私の様な
未熟者がイオ殿下のお傍に居られるなど、夢の様で御座います!」

「うむ、......ラウラと申すか!そちは歳は幾つなのじゃ?」

「イオ殿下の1つ下の13歳になります!」

「余の1つ下なのか!此れから余の助けを色々としてくれると、
助かるぞ!」

ルートは、イオに近づくと耳元でイオに囁いたのだった。

「イオ殿下、もしも我が娘を気に入ってくれれば、そのままラウラを
イオ殿下の正妃に迎えて下さい。イオ殿下の今後の後ろ盾は、我が主
であるシーランド辺境伯がします」

ルートは少年である王弟殿下に、直球で娘を投げたのであった。内容
はと言うと、既成事実を作ってしまえば、後は辺境伯が後ろ盾になる
と言っているのだ。

此れには王弟殿下であるイオも驚き、ルート夫人の思惑を探ってしま
ったのだった。だがイオは冷静に考えると、別に悪い話ではない事に
気が付いたのだ。それもそうである!男爵の後ろ盾より、エクストラ
ンド王国の名家であるシーランド家が後ろ盾の方が、何かと都合も良
いのだ。

そして........

辺境伯の娘のラウラは、イオの好みの女の子であったのも大きい!
可愛らしい顔立ちに、北方人独特の白い肌に金髪が、ラウラの魅力
を引き出していたのだ。そして、育ち盛りの胸も強調しては居ない
が、母親である辺境伯夫人を見るに将来は、夫人と同じ位になると
予想は出来たのだ。

イオ殿下、そろそろ昼食のお時間で御座います。宜しければラウラ
とご一緒に昼食をお食べ下さいませ!

ルートは、メイドに直ぐに昼食の用意をさせると、ラウラにイオ殿下
の隣に座る様に命じたのであった。そして、運ばれてくる食事は大陸
で滅多に口にする事が無い物ばかりだったのだ。もしも大陸で同じ物
を取り寄せて作らせれば、驚くほどの金が飛んで行く事である!

だが、シーランド本島の特産品だからこそ、直ぐに手に入るし安い
値段で揃えられる物ばかりであったのだ。

食事の献立はと言うと、サーモンの包み焼き、バター魚肉ソース合え
それに、シーランド産の黒小麦のパンである。この黒小麦は凄く甘く
パンにして焼くと自然に甘いパンが出来るのだ。それが原因で大陸で
は目が飛び出る程に高価で取引されていた。

それと、若鶏の串焼きである。串焼きと言っても出される際には、串
は取り外されており、皿の上に綺麗に盛り付けされていたのだ。その
他に盛り付けられて居たのが、肉をミンチにして焼いた物だったのだ
大陸でもミンチの焼いた料理は、何処の地域でも食べられている物だ
が、シーランド本島で出されたミンチ焼きの肉は、肉を切ると中から
湧き出る肉汁が堪らない程に、良い味と匂いを出していたのだった。

そして、最高級のシーランド産のワインである!シーランド産のワイン
には2種類あって、普通のワインと甘いワインがあるのだ。甘いワイン
はジュースかと思うほどに甘いが、アルコールは入っているが、普通の
ワインの半分程のアルコール量しか入っては居なかったのだ。だから、
大陸や島では、少年になれば甘いワインは飲んでも良い事になっている
王国の法でも明確には禁止されて居ないのだ!だから合法である。

大陸でも島でも、飲み水は限られているから、大量に作り置きされた
ワインを飲むしか飲み水が無いと言った方が、話が早いかも知れない!
そんな事情も多々あるのだ。

「シーランド本島でしか、この様な豪勢な食材を使った料理を食べられ
ないであろうな!流石はシーランド辺境伯である!見事な持て成しであ
った」

イオ殿下、ラウラが少し酔った様なので殿下のお部屋で、休ませても
宜しいでしょうか?

「うぅ......うむ、良きに計らえ!」

イオ殿下は、そう言うとソファーに腰掛けたのだが、イオ殿下も大分ワイン
を飲んでいる様で、意識が朦朧としていたのだ。それはラウラも同じであり
2人は、姑の策略に完全に嵌ってしまっていた。


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