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四日目

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 今日は森と村の間の高原で極撃について試行錯誤することにすることにしていた拳は、登録所で薬草採取とゴブリン討伐の依頼を受けて高原に向かった。



 「さて、極撃が岩を壊せるのはいいとして、威力は調節できるのか検討するか。それができれば、いろいろと誤魔化しようがある。今のままでは人前では使いにくいしな。」



 そこで拳はまず、背の高いススキのような草の群生地に向かった。



 「じゃあ、一本だけ破壊できるか試してみよう。」



 拳は一本を破壊することのみを意識して極撃を繰り出した。



 パァン



 草は一本だけ吹き飛んだ。どうやら成功したらしい。



 「なるほど対象を選べばそれを破壊できるでも破壊される勢いは変わらないのかな。次は、範囲はどこまでいけるか試してみるか。」



 この群生地は200メートルのトラック程度の広さがある。そこで拳は10畳の部屋程の広さを意識して極撃を放った。



 パァン



 その範囲がはじけた。



 「まじかー。どれくらいまでの広さいけるんだろうな。ただ。これ以上は環境破壊だしとりあえずの範囲はわかったってことにするか。次は触れずに破壊できるか試そう。」



 拳は、5メートルほど離れたところから一本の草をめがけて極撃を放つ。ちなみに距離は両手を伸ばして手を起点に180度回るという方法で測った。



 パァン



 成功した。



 「もういいや。これ強すぎだろう・・・。

 でも、5回しか使えないって考えると使い勝手もよくはないのかな。あとの二回はいざというときのためにとっておくとして、次は小鬼相手に崩を試してみよう。」



 拳は森へ移動した。そしてクエストの薬草を取りながら歩いていると、小鬼に遭遇した。

 拳は崩の効果をわかりやすくするためにメリケンを外していた。



 「ギギー。」

 「悪いけど実験台になってくれ。」



 拳は崩でジャブをした。そして、そのあと同じ力でジャブをした。すると小鬼少し後ずさった。



「なるほど、感触も気持ち柔らかいな。」



 次に崩で2回さらにジャブを入れてみた。小鬼にあざのようなものがはっきりとできてきていた。

 そして、拳が右ストレートを放つ。



 っ!



 ぐにゃりという感触が伝わり、小鬼のほほを拳の拳は引き裂き小鬼はそのまま息絶えた。



 「うえーすごい効果出てたな。前に殴った時とは比べ物にならないくらい柔らかかったな。ん?てかこれひたすら殴れるならどんなものでも壊せる?実質極撃か?ダウンの回数制限あるんかな?」



 ここら一体の魔物は非常に弱い。ゆえに数回ならともかくもっと多くの回数となるとその前に魔物を倒せてしまうため回数は正確に把握できなかった。拳はこのように判断し技の検討を終えることにした。



「今日分かったことは、極撃は対象を意識することで範囲を変えられる。離れていても破壊できる。崩は、複数回有効ってとこかな。よし、次は術を使えるかだ……あれ、どうやって使うんだ?」



 アホの子である。



「気合でどうにかなるかな。」



 もう一度言おうアホの子である。



 というのはさておきここでもテンプレ的には魔力の流れを感じろとか、イメージすれば詠唱不要とか、詠唱は古代文字で実は日本語とかそういう類の話がでる。そして、急激な体の変化に体がついていかないとかの問題もなく、チートな主人公は魔法を習得し、碌に体つくりもせずにレベルアップ!無双!結果夜も無双!みたいな話になるのである。もちろん拳はそんなこと知らない。



 てかなんで、日本で童貞だったのに異世界ではそんなに異性に積極的になれるのよ、異世界デビュー?もっと日本で頑張れや!てか、童貞が急にハーレムにランクアップって親が知ったら泣くで!とか思いません?



 閑話休題



 話しを戻すと拳はとりあえず身体強化を力むことで実現しようとした要は「クリ〇ンのことかー!」という感じである。



 「ハァー!」



 何も起きない。



 「ハァーーー!!!」



 何も起きない。



 「ハァーーーーーー!!!!!!」













 ぷぅ~

 屁が出た。



 っ!?



 拳はあまりの恥ずかしさに赤面し周囲に目撃者がいないか確認した。



「アッ」



 後ろを見ると、そこには小鬼がいた。



 シュッ!パァーン!



 こうして本日4度目の極撃は目撃者を消すということに使用されたのだった。



 なんだかんだで技と術の検討を終えた拳は、残りの薬草採取とゴブリン討伐を終えると登録所へ向かった。



 「依頼完了しました。処理お願いします。」

 「はい、条件達成を確認しました。お疲れさまでした。」

 「そういえば、拳さんベンケンさんとはどういう関係で?第一町で知り合ったとかですか?」

 「いえ、私が森で道に迷っていた所を助けてもらったんですよ。で、その時に僕の戦い方に興味をもったらしくてそれで仲良くなった感じですね。」



 「そうだったんですか。ベンケンさんがこちらにいらっしゃったのは数日前ですし、拳さんもベンケンさんもこの村の方ではないようですしつい気になりまして。でも、よかったです。数日前までのベンケンさんは何かこう思い詰めていた感じがあったのに今日会ったらとても元気になっていたので。」



 ベンケンさんはヨシツネンさんのことが気がかりだったんだろうな。



 「そうだったんですね。俺もベンケンさんに元気を与えられたのならうれしいです。」

 「あと、拳さん梅級に昇級です。おめでとうございます。」

 「ありがとうございます!」



 やったぜ!



 そのあと、受付と世間話を終えると拳はそのまま登録所の食堂へむかった。

 食堂で肉野菜炒め定食を頼んで待っていると、近くにいる探索者たちが気になる話をしていた。



 「今日は、沼で蜥蜴を討伐していたんだけどよ、なかなか蜥蜴がいなくて気づいたら結構奥まで行ったんだけどよ、急に周りに霧が出てきたと思ったら変なうめき声がしたんだよ。」

 「なんだそりゃ?で、正体は見たのかよ?」

 「バカヤロー俺は松にもなれない梅級だぞ。そんな危険に首突っ込めるかよ。速攻で逃げたわ!」

 「なっさけない。それで上級の魔物だったらどうすんだよ!登録所もそんな内容だけじゃ動かねーぞ。」

 「うっせー、お前だってその場にいたら確認に行けるのかよ?」

 「お、おうあたりまえだろ!」

 「ぜってーーーーーーーーー嘘だ!」



 ん?沼の奥?試練の場所近くか。明日ベンケンさんにあったら一応伝えておくかな。



 拳は食事を終えると、宿に戻った。宿に戻るとベンケンさんから言伝があった。ヨシツネンさんは戻ってきていないらしい。なので、調査のため明日の10時にギルド前に来てほしいそうだ。



 明日は沼でヨシツネンさんの捜索か。そうだ、移動中に術の使い方も聞こう。恥ずかしいのはもうこりごりだ。

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なろうの方が更新が早いので宜しければそちらもご覧下さい。
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