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十三日目

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拳達は朝食を終え食休みがてら少し馬車を進めた。

「ここら辺にしますかの。」
「そうしましょ。♡」

そういうと二人は武器の支度をはじめる。

「一応言っておきますが、殺しはなしです。あと、大けがもしないようにしてください。薬草くらいしかないので。」

「「了解(ですじゃ)(♡)」」

そして、両雄は互いの武器が届くがどうかの位置で相まみえた。

「では、始め!」

「フン!」

まずはベンケンが切りつける。

キン!

それをクフリンが槍ではじきつつ距離をとる。ベンケンの剣の射程外に出たところでクフリンはベンケンの正中線に向け乱れ突きをする。ベンケンはそれをサイド・バック両ステップを駆使し躱していく。
クフリンが攻め、ベンケンが躱すという展開で均衡していく。

「流石にあたらないわねぇ♡」
「こちらもなかなか近づけんですじゃ。しかし、そろそろ見切れそうですじゃ!」

 そういうとベンケンは大きく飛び出していく。

「それじゃいい的よ!」

 クフリンは突撃してくるベンケンに槍を突き出す。

キキーン!

 ベンケンは少し体をひねり、槍の先に剣をそえるようにして後ろに払い槍をいなした!
 ベンケンにより加速させられたことによりクフリンは一瞬であるが槍の操作が遅れた。
 ベンケンはその隙を見逃さなかった。最初の勢いそのままクフリンに突っ込み突きを放つ。

シュッ!

 ベンケンの剣の切っ先はクフリンの喉元で止まった。

「そこまで!勝者ベンケン!」
「「ありがとうございました(♡)」」

「いやー乾杯だったわ。私って盾なしだとほんとにだめね♡」
「いや、見事な突きでしたじゃ。それにもし盾があれば儂の突きも決まらなかったでしょう。それに銃での攻撃でけん制されそもそも突きすらできなかった可能性もありますじゃ。」
「二人ともすごかったです。俺だったら武器を持ってる二人には到底勝てないですね。」
「ありがとう拳ちゃん。でもね、拳ちゃんもいい戦いできると思うわよ?♡」
「うむ、拳殿は懐に入るのがうまいですからな。」
「そうですかねぇ?ああーせめてベンケンさんには練習用の武器持ってきてもらえばよかったなぁ。」

「ふむ。拳県で調達してもいいかと思いますな。ところでクフリン殿次は素手でどうですかな。お互い攻撃は当たってはいないですしいかがでしょう?」
「いいわね、ヤリましょう。♡」

 そういうとベンケンとクフリンの素手による戦いが始まった。

 ベンケンがまずはジャブで様子見をする。クフリンは以前の拳との戦いを踏まえてそれを受けるのではなく小刻みに足を動かし躱していく。
 一方ベンケンはすごい勢いで体を振り子のようにしてフックをしていく、ブオンブオンと風を切る音がする。その勢いはどんどん増していく。そんな中ひたすら交わしていたクフリンをついにベンケンの攻撃がとらえ始めた。ドンドンとクフリンのガードの上から攻撃を与えていく。そして、とどめの一撃というとき、クフリンは大きくバックステップをし、攻撃をかわし、そのまま勢いをつけてアッパーを放つ。しかし、これをベンケンはバックステップで躱していく。
 そして、お互い動かずまた、ジャブで互いにけん制をしていき時間が経って行った。
 結果としては時間ギリギリに攻めあぐねたベンケンのストレートにクフリンの籠手返しが決まり身動きが取れなくなったベンケンの負けとなった。

「私とベンケンちゃんは一勝一敗ね。♡」
「なんだかお互い直線の攻撃を捌かれて負けるという似た展開でしたな。」
「なんか今日までの訓練を見ていて思うんですが、圧倒的な一撃で終わらせるってのはなかったですね。」
「それはそうよ、技も術も使わず己の身一つなんだから。子供と戦うならまだしもある程度鍛えな大人同士の戦いならよっぽど鍛え方に差がない限りこんなもんよ。♡」

 そうして、夕食を食べ終え、各々寝ることになった。そして、寝る中で拳は今日の二人の戦いを見て感じたことの復習を始めた。

 ベンケンさんの攻撃をいなしつつ突撃する方法は俺も使えそうだ。そうすると頑丈なことが必要だな。手の甲から流す感じにすればいけるかな。そうすれば最悪手の甲がえぐれても再生はするし。
あと、クフリンさんの関節技。あれも取り入れたいな。ただ殴るよりも身動きと止めるのに有効だし、なにより相手の力を利用する分体力の消耗を抑えることができる。連戦での省エネにかなり有効なはずだ。うん。まだまだ俺は強くなれるな。

 そういえば、クフリンさんとは明日の村でお別れになるのか?たしか、第三村と同じ方向という話だったからなぁ。だとしたら少し寂しいな。せっかく仲良くなれたのに。まぁそこらへんは明日本人に聞いてみよう。

 明日はついに拳第三村か。いい武器とかあればいいんだけど・・・
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