上 下
38 / 42
港町編

絶望と……

しおりを挟む
 俺が大量の砂でヘドラー達を埋めると、ちょうどスラさん達の攻撃が終わっていた。

 「スラさんお疲れ。」
 「ああ、なんとかなった。」

 しかし、突然ビッグヘドラーがいたところが発光する。

 「な、なによあれ……」

 そこにはビッグヘドラーの倍はあろうかという個体がいた。

 「メガヘドラーだ……」
 「スラミ、テンペスト行ける?」
 「やるしかないでしょ。でもスズキ魔力少し頂戴!」
 「もちろん。」
 「ゴオーアーーーーーーーーーーー!!!」
 「「「うっ」」」

 メガヘドラーはとてつもない雄たけびを上げると周囲のその雄たけびにより揺れていた。

 「とりあえず、スラゴン、牽制するぞ!」
 プルン!

 スラさんとスラゴンはそれぞれファイヤーボールとウォーターショットで攻撃する。しかし、それらの魔法はメガヘドラーに飲み込まれてしまう。

 「く、もう周囲にガスがないのか?いや、まだ十分に充満していないのか。くそ!」
 「いけるわよ!」
 「よし、また、あれで行くぞ!」
 「テンペスト!」
 「ファイヤーポール!」
 
 メガヘドラーに落とされたファイヤーポールはテンペストにより威力が増幅される。

 「ゴーアー!」

 「効いてる?」

 しかし、そんなことはなかった。

 「ゴーアーーー!!!」

 パヒュン。

 スラさんとスラミひいては俺達にとって最高威力ともいえる魔法による攻撃はまさかの雄たけびでかき消されてい舞った。

 「そ、そんな。」
 「く、流石にAランクは伊達ではないか……」
 「A!?スラさんそれは本当?」
 「ああ、そうだ。そもそもヘドラーはその害を与える性質から見たらすぐ駆除される魔物だ。しかし、ほんと理由は成長後の特性にある。それは火魔法耐性だ。」
 「は?物理には強そうなのに魔法もなの?」
 「そうだ。ビックで中級の魔法。メガで上級まで耐性ができる。」
 「つまり、テンペストと合わせたファイヤーポールは上級の威力であってあいつを倒せないということ?」
 「そうだ。というか、情けない話ファイヤーポールではテンペストを完璧には活かせないんだ。テンペストそのままではかき消される。」

 状況が複雑なのだが、要はテンペストを活かせる火魔法が必要なのか。

 「このままでは全滅だ。」

 これはピンチだ。俺たちは死ぬのか?あんな馬鹿な事考えたせいでここに来てこんなにあっけなく死ぬのか?

 「スラミ、君は帰還するんだ。」
 「いやよ、私もスズキとスラと戦うわよ!」
 「スラミ!」
 「スラ!こうなった私はてこでも動かないってい知ってるでしょ?」
 「くっ、わかった。死ぬなよ。」

 その後俺たちはAランクの魔物に手も足も出ない現状を思い知ることになる。
 メガヘドラーは酸性の液体を水鉄砲のような形で飛ばし俺たちは近づくこともできないばかりか確実に消耗していった。
 加えて、毒だ。奴の体からあふれる毒が汚染された空気で海岸は汚染されていた。俺たちが勝てたところで当分この海岸は使い物にはならないだろう。俺たちはスラミのキュアで何とか耐えているのが現状だ。

 「ぐあ」
 「が」
 「ああ」

 俺たちはありもしないチャンスを狙ってひたすら交わし続ける。そして、奴を町に近づけさせないこと。すこしでも時間を稼ぐこと。それに全力を尽くした。

 そのまま数分間戦い続けたとき、ついにスラミに体力の限界が来てしまった。

 「スラミ、もう限界じゃないのか?帰還するぞ!」
 「な、なに言ってんのよあんたたちも毒で相当持ってかれてるでしょ?こいつ倒した後治せるのは私だけなのよ!こうなりゃ死ぬときは全員一緒よ!」

 そんなスラミの力強い言葉に全員の目に再び力が入った。

 「そうだな。」
 「うむ。」
 プルン
 「わかればいいのよ。」

 そうして俺たちが再び気合を入れなおした時だった。

 「そちら、よくやった。あとはわらわに任せるがよい。」

 俺たちが振り返るとそこには椅子に坐した男と一人の老齢な執事がいた。
しおりを挟む

処理中です...