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1.黒田 誠 オープン記念キャンペーン
1.黒田 誠 オープン記念キャンペーン④
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「関口さん、関口さん」
「何?」
「空いた食器はどうしたんですか?」
「えっ? 普通にワゴンが回ってきた時に回収してもらってるけど?」
何だ、回収してもらえたんだ。
俺は空いた食器をまとめワゴンを待ち構える。
「アイスクリーム…プリン…ゼリー…ヨーグルトは如何ですか…」
……どうしよう…何かを頼むついでに下げてもらおうと思ってたんだが…甘味を食べる気分じゃない。
次を待つ?
う~ん……
ま、いいか。
「すみません」
「はい?」
「下げてもらうだけでもいいですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
店員さんはにこやかに食器を受け取りワゴンの下の棚にしまう。
食器が無くなった分、当たり前だが自席のスペースが広がった。
タイミングよく、
「日本酒はいかがですか…各種銘柄取り揃えています……」
と、日本酒のワゴンが回ってきた。
俺はお気に入りの日本酒を冷で楽しむ事にする。
こうなると満腹だけど軽くつまめる乾き物が欲しいなあ…
などと思っていたら……
「乾き物です…ポテチ…柿の種……」
狙っているかのように乾き物のワゴンがやってきた。
俺はさっそくポテチとチーカマを購入する。
さすがに食器に入っている訳ではなく、市販パッケージに入ったままだ。
俺は時折乾き物を口に運びつつ冷酒を楽しむ。
列車が動かないだけで本当に旅行気分だなぁ……
黙っているのも何なので
「関口さんは列車を使った旅行が好きなんですか?」
程よくアルコールが回って来たので聞いてみる。
「う~ん…別に嫌いって訳じゃないけど…私がって言うより父が好きだったの」
と、グラスを傾けつつ答えてくれた。
彼女は心なしか寂しげに微笑むと
「私の両親…どっちも実家がかなり遠くて…盆暮れ正月にどっちかの実家まで帰省するんだけど、いつも電車で帰省してたの。父が列車の旅行が好きだったから…」
「帰省する度に違うルートで帰ってみたり特急とかじゃなく各駅停車する電車を利用してみたり…夜行列車に乗って帰った事も有ったかな…」
「つまり電車に乗ること自体を楽しむ人だったのよ…。所謂"鉄オタ”って人だったのかもしれない…よくわかんないけど…」
と、答えてくれた。
俺はと言えば適当に相槌を打ちつつ酒を口にはこんでいる。
「…それで…今日がその父の月命日なのよ」
「ウグっ」
突然の告白に俺は飲みかけの冷酒が変な所へ入ってしまった。
ゴホゴホとむせて咳が止まらない。
「ヤダ…ちょっと…黒田さん大丈夫?」
彼女の呆れ混じりの声が聞こえる。
恥ずかしい…。
「大丈…ゴホッ…夫です…大…丈夫ケフッ…。すみま…ゴホッゴッ……せん、なんケフッ…か驚いちゃって……」
咳き込みながらも何とか答え、おしぼりで濡れてしまった口の周りやら服やらを拭いつつ体制を整えようと頑張った。
「ごめんなさいね。そんなに驚くとは思わなくて……」
申し訳なさそうな彼女の声に何とか答えなくてはと思いつつも咳が止まらない。
「大丈…夫…ケフッです…大ゴフッ丈夫……」
かなり時間がかかってしまったが何とか咳はとまった。
そうか…関口さんはお父さんを偲ぶ為にこの店に来たんだな……
「あ…改めて、お悔やみ申し上げます」
俺は冷酒の入ったグラスを掲げ頭を下げる。
「ありがとう」
天に居るであろう関口さんのお父様に二人で献杯。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
そんな感じで雑談をしつつお酒や料理を楽しんでいると…
「まもなくジェミニ駅に到着します。お降りの方は落とし物・お忘れ物なきよう、お手回り品をご確認下さい」
そんな放送が流れてきた。
近くに座っていた人が何人か手荷物をまとめだす。そしてバタバタと席も整え始めた。
つまりテーブルをおしぼりで拭いて戻したり、背もたれのリクライニングを直したりし始めているだけなのだが……。
本当に特急列車を利用した後に次の乗客の事を考えて行動する日本人そのものだなぁ……
ほどなく荷物をまとめた何人かが出入口に並び始める。
「ジェミニ~…ジェミニ~…ご乗車ありがとうございました。お忘れ物、落し物なきようご注意ください。ご乗車ありがとうございました。まもなくドアが開きます」
列車のホーム側のドアが開き客達が降りていく。
ホームをよく見るとトレイやグラス・小鉢や皿を回収するワゴンがそこここに出ていた。
客達はトレイやら食器やらを渡して回収てもらい改札へと向かう。
へぇ…本当に凝ってるなぁ……
ホームの様子を感心しつつ見ていると何やら首から下げられた大きな箱のようなものを抱えた人が……
「え~肉料理は如何でしょうか…。焼き物…煮物…」
と言いながら練り歩いてきた。
「ブッ!?」
俺はまたしても飲みかけの日本酒を吹き出す。
「黒田さん…」
ああぁ……
関口さんが呆れてる……
スーツまで酒まみれだ……
俺は必死に濡れてしまった口元やら服やらを拭いながら
「こ…凝ってるね」
と、取り繕うように呟いた。
「昭和の特急列車の到着駅そのものでしょう。動画でしか見た事ないけど…」
俺だって噂でしか知らない。
この店を作った人って列車での旅をものすごく楽しんだ人なんだろうなぁ……
「何?」
「空いた食器はどうしたんですか?」
「えっ? 普通にワゴンが回ってきた時に回収してもらってるけど?」
何だ、回収してもらえたんだ。
俺は空いた食器をまとめワゴンを待ち構える。
「アイスクリーム…プリン…ゼリー…ヨーグルトは如何ですか…」
……どうしよう…何かを頼むついでに下げてもらおうと思ってたんだが…甘味を食べる気分じゃない。
次を待つ?
う~ん……
ま、いいか。
「すみません」
「はい?」
「下げてもらうだけでもいいですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
店員さんはにこやかに食器を受け取りワゴンの下の棚にしまう。
食器が無くなった分、当たり前だが自席のスペースが広がった。
タイミングよく、
「日本酒はいかがですか…各種銘柄取り揃えています……」
と、日本酒のワゴンが回ってきた。
俺はお気に入りの日本酒を冷で楽しむ事にする。
こうなると満腹だけど軽くつまめる乾き物が欲しいなあ…
などと思っていたら……
「乾き物です…ポテチ…柿の種……」
狙っているかのように乾き物のワゴンがやってきた。
俺はさっそくポテチとチーカマを購入する。
さすがに食器に入っている訳ではなく、市販パッケージに入ったままだ。
俺は時折乾き物を口に運びつつ冷酒を楽しむ。
列車が動かないだけで本当に旅行気分だなぁ……
黙っているのも何なので
「関口さんは列車を使った旅行が好きなんですか?」
程よくアルコールが回って来たので聞いてみる。
「う~ん…別に嫌いって訳じゃないけど…私がって言うより父が好きだったの」
と、グラスを傾けつつ答えてくれた。
彼女は心なしか寂しげに微笑むと
「私の両親…どっちも実家がかなり遠くて…盆暮れ正月にどっちかの実家まで帰省するんだけど、いつも電車で帰省してたの。父が列車の旅行が好きだったから…」
「帰省する度に違うルートで帰ってみたり特急とかじゃなく各駅停車する電車を利用してみたり…夜行列車に乗って帰った事も有ったかな…」
「つまり電車に乗ること自体を楽しむ人だったのよ…。所謂"鉄オタ”って人だったのかもしれない…よくわかんないけど…」
と、答えてくれた。
俺はと言えば適当に相槌を打ちつつ酒を口にはこんでいる。
「…それで…今日がその父の月命日なのよ」
「ウグっ」
突然の告白に俺は飲みかけの冷酒が変な所へ入ってしまった。
ゴホゴホとむせて咳が止まらない。
「ヤダ…ちょっと…黒田さん大丈夫?」
彼女の呆れ混じりの声が聞こえる。
恥ずかしい…。
「大丈…ゴホッ…夫です…大…丈夫ケフッ…。すみま…ゴホッゴッ……せん、なんケフッ…か驚いちゃって……」
咳き込みながらも何とか答え、おしぼりで濡れてしまった口の周りやら服やらを拭いつつ体制を整えようと頑張った。
「ごめんなさいね。そんなに驚くとは思わなくて……」
申し訳なさそうな彼女の声に何とか答えなくてはと思いつつも咳が止まらない。
「大丈…夫…ケフッです…大ゴフッ丈夫……」
かなり時間がかかってしまったが何とか咳はとまった。
そうか…関口さんはお父さんを偲ぶ為にこの店に来たんだな……
「あ…改めて、お悔やみ申し上げます」
俺は冷酒の入ったグラスを掲げ頭を下げる。
「ありがとう」
天に居るであろう関口さんのお父様に二人で献杯。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
そんな感じで雑談をしつつお酒や料理を楽しんでいると…
「まもなくジェミニ駅に到着します。お降りの方は落とし物・お忘れ物なきよう、お手回り品をご確認下さい」
そんな放送が流れてきた。
近くに座っていた人が何人か手荷物をまとめだす。そしてバタバタと席も整え始めた。
つまりテーブルをおしぼりで拭いて戻したり、背もたれのリクライニングを直したりし始めているだけなのだが……。
本当に特急列車を利用した後に次の乗客の事を考えて行動する日本人そのものだなぁ……
ほどなく荷物をまとめた何人かが出入口に並び始める。
「ジェミニ~…ジェミニ~…ご乗車ありがとうございました。お忘れ物、落し物なきようご注意ください。ご乗車ありがとうございました。まもなくドアが開きます」
列車のホーム側のドアが開き客達が降りていく。
ホームをよく見るとトレイやグラス・小鉢や皿を回収するワゴンがそこここに出ていた。
客達はトレイやら食器やらを渡して回収てもらい改札へと向かう。
へぇ…本当に凝ってるなぁ……
ホームの様子を感心しつつ見ていると何やら首から下げられた大きな箱のようなものを抱えた人が……
「え~肉料理は如何でしょうか…。焼き物…煮物…」
と言いながら練り歩いてきた。
「ブッ!?」
俺はまたしても飲みかけの日本酒を吹き出す。
「黒田さん…」
ああぁ……
関口さんが呆れてる……
スーツまで酒まみれだ……
俺は必死に濡れてしまった口元やら服やらを拭いながら
「こ…凝ってるね」
と、取り繕うように呟いた。
「昭和の特急列車の到着駅そのものでしょう。動画でしか見た事ないけど…」
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