列車居酒屋異聞 〜旅が好き〜

夢彩姐

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4.関口 真奈美 センチメンタルジャーニー

4.関口 真奈美 センチメンタルジャーニー②

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 ズンズンズン……

 なんて擬音が付きそうな勢いでみゃあ先輩は廊下を歩く。
 私も早歩きで追いついた。
 待合室の手前でだったけど…

 待合室のドアは自動ドアだ。
 躊躇する事無く部屋へ入る。
 今日の待合室に人はいなかった……

 当たり前か……
 もう1時間もすれば閉店だ。

「なんれだれもいにゃいの?(何で誰もいないの)」
「『待合室』だからですよ。客席は別の場所です」
「ふ~ん…」

 みゃあ先輩はわかっているのか…いないのか……

「それ…よ…り……ごめ…ん…トイ…レ…どこ?」
 あ、ヤバっ!
「あ、こっちです」
 あわてて待合室内にあるトイレへ誘導する。 

 みゃあ先輩はトイレにこもった。
 今、私は待合室で気をもみながら待っている。

 十数分は経っただろうか……
「ううぅ…かんれん(完全)にろ(飲)みすぎた…」
 すみません。私のせいです……
「大丈夫ですか? 帰りますか? 顔色悪いですよ」
「いや…少し休めば……帰れると思う…」
「無理しないで下さい」
「大丈夫。さっきよりかなり楽になったし…」

 そう言って何回か大きく深呼吸をする。
「うん、大丈夫。ごめんね、付き合わせちゃって…」
 いや、飲ませたのは私です。

「で、ここ何処? 駅の待合室?」
「違います。駅みたいな内装の居酒屋さんです」
「は? ここが?」
「そうですよ。奥に行ってみます? 座席も先輩が買ってます。」
「え? マジで?」
「マジで」

 そう説明しながらさっき買ったばかりの乗車券を見せた。
「わあ…マジか……。でも、何? これ列車の乗車券にしか見えないんだけど…」
 みゃあ先輩は乗車券を見て呆然としている。

「せっかくだから入ってみません? ここ、コンセプトが楽しいんですよ。私のお気に入りの居酒屋さんなんです。」
 私はみゃあ先輩にこの店を楽しんでもらいたくなった。

 私は少し急ぎ足で廊下を進んでいく。
 本当はみゃあ先輩に合わせてあげたいが如何せん時間が時間だ。
 つまり…閉店まで1時間を切っている。ラストオーダーまで何分残っているのやら……

 焦る!
 焦る!

 すぐに客席入口の【なんちゃって改札】が見えてきた。

「…?…やっぱり駅?」
「違います!」

 そう言いながらも乗車券を改札にかざして中へと進む。
「入り方は駅と同じですよ。閉店が近いから急いでください」
 私は必死に先輩を急かせてトレイと飲み物を選んだ。

 もう、先輩の意見等聞いている余裕はない。
 お通しなんかほとんど残ってないから選びようもない。
 スピードが命! とばかりにアイス烏龍茶をグラスに注ぎ余り物のお通しをジョイントさせる。

 ふと、近くにある【サジタリウス駅名物 山葵海苔巻き】が目に入った。
 受注販売は止めたのかな?
 見本かな?
 ラストオーダー時間が迫っている為なのかな?

 よくわからないがサジタリウス駅に到着する時間ではないのに少数だが売り出されている。
 よし、これは買わなきゃ!

 手早く購入し改めて乗車券の席を確認する。
 席は『マウンテン号 12番 A席』だった。
 端だし出入り口付近だしこの時間なら悪くない。

 みゃあ先輩は…と様子を伺えば、目を白黒させながらも何とか私と全く同じ料理を抱え、烏龍茶をセットしている。

 よし!

「先輩、入口はこっちです。ついて来て下さいね」
 視界の端で頷いたのを確認し、なんちゃって先頭車両の方へ歩きだす。
 急がないと閉店時間になってしまうのだ。

 何とか席にたどり着き、椅子のリクライニングを調節し腰を降ろせた時、私は心底ホッと息をついた。

 「列車居酒屋へようこそ! みゃあ先輩」

 乾杯プロージット
 お互いにアイス烏龍茶の入ったグラスを掲げて軽く合わせた。
 "カツンッ!"
 澄んだ衝突音が小さく響く。

「『ようこそ』って…。ここはマナミンの別宅かい」
 みゃあ先輩がからかうように笑った。
「ここが別宅なら素敵なんですけど…単なる行きつけの居酒屋さんです。旅行気分になれるから気に入ってるンです」

 時間が時間の為か平日の為かはわからないが乗客はまばらにしかいない。
 目の前の席は2席とも空席だ。
 しめた! 今日はこの席を使う人はいないに違いない。

「先輩。前の席空いてるみたいですからちょっと借りちゃいましょ」
 私はいそいそと自分のトレイをテーブルから外し前の座席に置き直した。

 何が始まるのか全くわかっていない先輩のトレイを同じようにテーブルから外し、前の座席に置く。
 そしておもむろに座席を回転させた。

「す…スゴい……」

目をパチクリさせているみゃあ先輩を尻目にテキパキとボックス席仕様にしテーブルをセッティングする。

「どうです? 少しお行儀悪いですけど足を伸ばしても大丈夫ですよ」

私は先輩の斜向いに座って足を先輩の横の席に伸ばしてみた。

 ……
 ……失敗だ。
 足を伸ばしても微妙にバランスが取れない。

 私は普通に座り直した。

「…確かに……動かないのが変な気分になるお店だね」
 みゃあ先輩が苦笑混じりにお通しの小鉢に箸をつける。
 私は【サジタリウス駅名物 山葵の海苔巻き】を食べてみた。

 『……(ツ~ン)!』

 目の奥に山葵の辛さが染みわたる。
 き…っつ~い!

 私はあわてて烏龍茶を飲んだ。
「先輩この海苔巻きの山葵、半端じゃなくキツいです。失敗したかも」

 しかし、みゃあ先輩は
「どれどれ~」
と、楽しそうに海苔巻きを口に運んだ。

「うっ…!」

 先輩もあわてて烏龍茶を飲む。

「……山葵きっつ~」
「烏龍茶、ピッチャーでもらいましょ」
「何か甘いモンも頼もう」

 お互い涙目になりながら注文する品を決める為メニューをにらむ事になった。
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