兄が度を超えたシスコンだと私だけが知っている。

ゆき

文字の大きさ
56 / 56

番外編*もしもユーリと婚約したら

しおりを挟む

ユーリと結ばれる世界線が書きたかった…!

時系列はグレン兄様が飛ばされたまま関わりを無くしちゃって学園を卒業したよーってところです(*´∀`)

ユーリに絆されて婚約を受け入れたカティアちゃん。



■□▪▫■□▫▪■□▪▫



公爵家の養子となり、ユーリとの婚約を受け入れて間もなく、私たちは学園を卒業した。

グレン兄様やカティア、不特定多数の人間に敬遠され、嫌悪され続けた学園生活は、とてもじゃないが居心地が良いとは言えなかった。


しかし、それでもユーリや殿下など、私にとって大切な存在ができたのもこの学園だった。


そう考えると少しだけ寂しい。



卒業して数日が過ぎても私の心はまだぼんやりとして足が地に着かないような、そんな落ち着かない気持ちだった。



「カティ?まーたぼうっとしてるの~?」

呆れたような声で近づいてきて、ソファに座る私の首に腕を巻き付かせるユーリ。


「…暑苦しい」

「え~?婚約者に向かってそんなこと言うの?」

少したれ目気味のヘーゼルの瞳が悲しげにこちらを見つめる。


…わざとらしい顔なのに、どうしてか私はユーリのこの顔に弱かった。


「せめて隣に座ってくれないかしら」

「カティの隣は僕の定位置だもんね?」


ええ、そうね。

あの頃からずっと、ユーリは私のそばにいてくれた。


侯爵家の家族を一気に失ってしまったあの日から。

今となってはのびのびとした生活に、ユーリや大切な人達に囲まれる日常に胸を張って幸せだと言えるが、当時は胸にどこかぽっかりと穴が空いてしまったような虚無感に包まれていた。


私の世界はすごく狭かったから。


エクルや義母、父…そしてグレン兄様。


あの頃はユーリの存在すらも、家族以上の影響を私に与えることは無かった。

私の悪名がとれ公爵家に迎えられた途端に手のひらを返して擦り寄ってくるたくさんの人間の中で、ユーリの態度が以前とは何も変わらずすごく安心したことを覚えている。



「ユーリにはずっとそばにいてほしい」


たくさんの物を失ってきた私だからこそ、大切なものは絶対に手放したくない。

優しい彼の隣に寄り添っていたいんだ。



「なにそれ可愛い」

「…面白がってる?」


にまにまと笑みを浮かべるユーリに少しムッとして頬をふくらませた。



「えー?ふざけてないよ?ただ僕の将来の奥さんが愛しすぎてどうにかなっちゃいそうなだけ」

「もう、やっぱり面白がってるでしょう」


伝えた本人に笑われると、じわじわと自分の言葉が恥ずかしくなってくる。

私はユーリから視線を外し、そっぽを向いた。


……思ったまま口を開くとろくなことがない。



悶々とそんな事を思っていると、軽いリップ音がして頬に柔らかいものが降ってきた。



「僕も同じ気持ちだよ」

びっくりしてもう一度ユーリに視線を戻すと、心底愛おしそうに私を見る優しい瞳と目が合った。



「カティのそばにずっといたい。カティが嫌になるくらいドロドロに甘やかしてあげたい」


「…甘やかさなくていい」


今のままで十分感謝してる。


ユーリに絆されるまま婚約したあの時の自分を今になって全力で褒めてやりたい。

これは、まだユーリに伝えていない気持ち。


きっと人の心に敏感な彼は気づいているだろうけど…



「ユーリ…もう、ちゃんと好きだよ」


「っ」


私の言葉に小さく目を見開いた彼。

そのまま数秒固まったあと、嬉しそうな、だけどどこか泣きそうな、そんな複雑な顔をしていた。



「カティ」

震える声で私の名前を呼ぶ。



「カティ…大好き。本当に、誰よりも愛してるんだ…っ、ありがとうカティ」


ぎゅっと抱きしめられ、ユーリの温かい体温を体いっぱいに感じた。

少し早い心臓の鼓動はいったい私のものか、彼のものか。



「ありがとうは私の方よ?いつも私を助けてくれてありがとう。私のそばにいてくれてありがとう。私を…愛してくれてありがとう」


「うん…どういたしまして、カティ」



___見つめあい、そっと唇を合わせた。




「カティ、顔真っ赤だよ~?」

「うるさい!」

「照れながら怒っても可愛いだけだからね?」



ことある事に、可愛い可愛いと私を褒めまくるユーリになんだか面白くない。

その度に私は心臓がきゅっと掴まれて苦しくなるのに、当の本人は心底幸せそうだ。



「ユーリばっかり余裕だわ」

「そう見えてるなら僕の努力の賜物だよねぇ」

「どういう意味よ」


ムッとする私にユーリはくすっと笑みを漏らして口を開く。


「僕はカティにドキドキさせられっぱなしだけど、それを悟られたらかっこ悪いでしょ~」

「なにそれ」



ユーリの言い分はよくわからないけれど、私と同じくらい彼も幸せを感じてくれていたらいいなと思った。


しおりを挟む
感想 142

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(142件)

tago
2020.10.06 tago

ユーリend嬉しい!
幸せなユーリとの甘々ラブラブが見れて良かった😭❣️
ありがとうございます!

解除
もりりん
2020.08.26 もりりん

お忙しいなか早速の更新ありがとうございます😭
本当に嬉しいです!
グレンとカティのイチャイチャ見れて嬉しいです😊
カティとの結婚式の為に教会立てちゃうグレン可愛いですね笑

解除
もりりん
2020.07.19 もりりん

お忙しい中、たくさん更新していただきありがとうございます😊
とても嬉しいです!
グレンとカティの思いが通じ合い読んでいてニヤニヤが止まりませんでした。笑
あとカティと張り合っちゃう殿下が可愛いです。笑

解除

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました

有賀冬馬
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。 魔力が弱い私には、価値がないという現実。 泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。 そこで目覚めた彼は、私を見て言った。 「やっと見つけた。私の番よ」 彼の前でだけ、私の魔力は輝く。 奪われた尊厳、歪められた運命。 すべてを取り戻した先にあるのは……

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……? ※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

ブサイク令嬢は、眼鏡を外せば国一番の美女でして。

みこと。
恋愛
伯爵家のひとり娘、アルドンサ・リブレは"人の死期"がわかる。 死が近づいた人間の体が、色あせて見えるからだ。 母に気味悪がれた彼女は、「眼鏡をかけていれば見えない」と主張し、大きな眼鏡を外さなくなった。 無骨な眼鏡で"ブサ令嬢"と蔑まれるアルドンサだが、そんな彼女にも憧れの人がいた。 王女の婚約者、公爵家次男のファビアン公子である。彼に助けられて以降、想いを密かに閉じ込めて、ただ姿が見れるだけで満足していたある日、ファビアンの全身が薄く見え? 「ファビアン様に死期が迫ってる!」 王女に新しい恋人が出来たため、ファビアンとの仲が危ぶまれる昨今。まさか王女に断罪される? それとも失恋を嘆いて命を絶つ? 慌てるアルドンサだったが、さらに彼女の目は、とんでもないものをとらえてしまう──。 不思議な力に悩まされてきた令嬢が、初恋相手と結ばれるハッピーエンドな物語。 幸せな結末を、ぜひご確認ください!! (※本編はヒロイン視点、全5話完結) (※番外編は第6話から、他のキャラ視点でお届けします) ※この作品は「小説家になろう」様でも掲載しています。第6~12話は「なろう」様では『浅はかな王女の末路』、第13~15話『「わたくしは身勝手な第一王女なの」〜ざまぁ後王女の見た景色〜』、第16~17話『氷砂糖の王女様』というタイトルです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。