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幸せになろう
しおりを挟む控え室に着くと、グレン様はソファに腰を下ろし、私を自らの膝の間に座らせる。
そうして背後からぎゅっと私を抱きしめたのだった。
「あんまり力を入れてはせっかくのドレスがくしゃくしゃになっちゃいます」
「…気をつける」
なんて言いながらも手をゆるめることはしない彼に小さくため息をつく。
…本当に子どもみたいな人。
「グレン様、休憩が必要だったのは私じゃなくてあなたでしょう?」
「……ああ、そうかもな」
「カワイティルに来てから、あんなに大勢の方と触れ合うことなんてありませんでしたもんね?」
体よりも心の方が疲れてしまったのかもしれない。
「俺は以前カティにたくさんひどいことをした。そんな俺にカティを嫁がせるなんて、今日集まった皆は本当は嫌なんじゃないかって…不安になった。今更カティを取り上げられたら、俺はもう正気じゃいられないから」
私の肩に額をぐりぐりと押し付けながら弱々しくそんなことを言うグレン様に愛しさが込み上げてしまう。
些細なことで不安になってしまうのは彼の悪い癖だけど、言葉の節々から私への愛を感じた。
「私は誰に反対されたって、もう絶対にあなたのそばを離れたりしせんよ?」
「…ああ」
「グレン様が思っている以上に、私はあなたのことを愛しているんですからね?」
小さく微笑んでそう告げると、彼は驚いたようにぴくりと小さく体を震わせる。
「俺だって、気が狂いそうな程カティのこと愛してる」
「そんなことはとっくの昔から知っています」
本当にずっとずっと前から。
…妖精さん達には感謝してもしきれない。
彼らがグレン様の気持ちに気づかせてくれなかったら、私はきっとグレン様を恐れたままこんな風に寄り添うことなんて到底できなかった。
「グレン様も、感謝してくださいね?」
「ん?」
見えない彼に説明するのは難儀だが、落ち着いたらちゃんと話してもいいかもしれない
(ありがとう、みんな)
(お安いごようだ~)
(カティのためなら当然ねっ!)
(グレンはアホだからほっとけないの~)
金色の粉を撒き散らしながらふよふよと飛行する妖精さん達。
思えば最初にできた友達は彼らだった。
彼らとの絆は私の宝物。
(これからも末永くよろしくお願いします)
(((ガッテン承知~!!)))
にこにこと可愛らしく笑う姿が微笑ましくて口角を緩ませていると、突然頬にほんのり湿った熱を感じた。
グレン様は一度の触れ合いでは飽き足らず、二度三度と啄むような口付けを落とす。
「…カティ、ぼうっとしてる」
「っ、考え事を…」
「せっかく二人っきりなのに、心ここに在らずという感じがして…少し寂しい」
拗ねたように唇をとがらせてそう言うグレン様。
ええ、もう、可愛いが過ぎるのでは?
「…幸福を噛み締めていたんです」
「そうか。俺も今日が世界で一番幸せだ」
「ふふっ、これからも一番が更新されるような毎日にしていきましょうね」
父や義母、エクル達と共に過ごした日々は、ただただつらくて…家族への愛情なんて微塵も感じられなかった。
だから、こうしてグレン様と気持ちを通わせて、もう一度家族になれることが心の底から嬉しい。
母が死んでぽっかりと空いてしまった穴を、彼が塞いでくれたような、そんな感覚だった。
「俺と家族になってくれてありがとう」
「…こちらこそ、私を愛してくれてありがとう」
微笑みあって、どちらともなく唇を合わせた。
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