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大好きだった人
しおりを挟むSide ユーリ
■□▪▫■□▫▪■□▪▫
滅多に病気をしないカティが学校を休んだ次の日、登校してきたカティに話があると言われた。
お昼休憩、昼食を食べながら、彼女の重たい口が開くのをじっと待っていた。
中々言葉が出ないということは、きっと僕に話しにくい内容なんだろう。
あーあ、嫌な予感しかしない。
眉を寄せて口を閉じたり開いたりするカティ。
心境としてはどこまでも複雑なのに、そんな彼女に微笑ましい気持ちになってしまう。
「落ち着きな、カティ?」
「っ…そ、そうね」
彼女はコホンと一つ咳払いを落とした。
「ユーリ、私ね」
冷静さを取り戻した彼女に、僕も覚悟を決めなければいけないみたいだ。
…きついなぁ。
「グレン兄様と、婚約することにしたの」
「うん、そっか~。おめでとうカティ」
うん、思ったよりあっさりとお祝いの言葉が言えた。
…偉いね、僕。
精一杯の微笑みを浮かべる僕に、カティは呆気に取られたような間抜けな表情を浮かべる。
そんな顔も可愛いな、なんて馬鹿なことを思った。
「ユーリ、あの…ありがとう」
「何が~?」
お祝いの言葉に対するお礼?
「全てよ、今までの全て」
「僕何かしたっけ~?」
「つらい時はいつもユーリがそばにいてくれた。ユーリがいたから私は挫けないでいられたの」
カティは無理やり貼り付けたような笑みを浮かべてそんなことを言った。
どうして君が泣きそうな顔してるのさ。
そんなカティを初めて憎らしく感じてしまった自分がいた。
「そっか、カティの力に慣れたみたいで良かったよ」
僕はうまく笑えているだろうか。
「…ユーリ」
「そんな悲しそうな顔しないでよ?」
カティにそんな顔されたら僕はどうしていいかわからないんだよ?
君がその綺麗なエメラルド色の瞳から涙を零しても、僕はもう拭ってあげられない。
「ユーリのおかげで私ちゃんとグレン兄様に素直な気持ちをぶつけることができたわ。ユーリがいたから、グレン兄様に…そして、自分の心に向き合えたの」
「うん、よかったね…本当に」
君が幸せだったら、僕も幸せだ。
頭に浮かんだそんな考えは、どこか自分を誤魔化すような安っぽいものに思えてしかたがなかった。
「ねえ、ユーリ」
彼女は真っ直ぐな瞳で僕を見つめながら言葉を続ける。
「こんな私を好きになってくれて、ありがとう。家も学園も、私にとって居心地の良い場所ではなかったけど…ユーリと過ごす時間は、とても温かくて、幸せだったわ」
「っ、何それ。ははっ、カティがそこまで言ってくれるなんて、光栄なことだね~」
本当、カティはどこまでいってもカティだ。
彼女のここまで素直な言葉を聞けるのは、きっと僕を含めて限られた少数の人間だけ。
心から信頼した人には、どこまでも真摯な姿勢を見せる子だから。
…君は、残酷だね。
僕との時間が幸せだと言うくせに、僕の隣で生きようとはしてくれないのだから。
一度僕の婚約を受け入れてくれようとした彼女を拒絶したのは紛れもない自分だけど。
惜しいことをしたなぁ。
なんて、情けない感情が芽生える。
「カティ、幸せになってね?」
「ええ、あなたもよ…ユーリ」
震える声でそう言うカティの頬には、堪えきれなかった涙の粒がつたっていた。
「もちろん」
…嘘だよ、カティ。
僕は君なしじゃ幸せになんてなれっこない。
どうして彼女は自分を傷つけたあんな男のところになんて行ってしまうのか。
…ずっとそばにいたのは僕なのに。
僕だったらどんなことがあっても、絶対にカティのことを傷つけたりなんてしないのに。
ずるいなぁ。
…大好きだったなぁ。
カティを幸せにするのは、僕の役目じゃなかったみたいだ。
今は到底抱えきれない現実を、いつか受け止めることができる日は来るのだろうか。
「さようなら、カティ。ずっとずっと大好きだよ」
お別れの言葉が未練がましくなってしまったのは仕方ないことだと思う。
「…さようなら、ユーリ」
カティはそう言って、やっぱりどこか泣き出しそうな笑顔を浮かべた。
…泣きたいのは僕なんだけど。
「幸せになるって言ったそばからそんな顔しない!カティが笑ってないと僕だって次に進めないでしょ~?」
「っ、ユーリ、ごめんなさい…無神経だったわ。私はもう、幸せよ」
次に浮かべた笑顔はどこかぎこちなさが残るものの、穏やかで美しい微笑みだった。
今度こそ、さようなら。
僕の大好きだった人。
■□▪▫■□▫▪■□▪
ユーリごめんね(;___;)
作者的ナンバーワンは君だから許して!
読者人気も断トツだからね!?ね!!
いつかこの子は幸せにしてあげたい…
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