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二章 獣人の国
39 授業をしよう
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私の長い1日はまだ終わらない。
3時間は体育で、いつもは何をしているかと皆に聞いてみたら『遊んでる!』と言われたので、鬼ごっこを提案してみた。
『オニってなに?』と言われてしまい答えに窮したが、とにかく『オニ』が皆を追いかけて、タッチされた人が今度はオニになって追いかけると説明したら理解されたので早速やってみた。
一人だけ足の遅い子がいたらどうフォローしようかと考えながら私も参加したが、この中では私が1番遅かった。大人なのに。獣人と人間の身体能力の差があからさまに出た。
なかでも際立っていたのはウェルナさんとハウさんの脚の速さだろう。
さすが地上最速の動物といわれるチーターの遺伝子を持つ2人だ。誰も追いつけていなかった。
鬼ごっこという遊びは同一種族間でしかできないのかもしれない。
私なんかはオニになったが最後、誰も捕まえられなかったのでリーヴくんがオニを変わってくれた。そしてそのまま戦線離脱。体は20歳そこそこと言えど明日は確実に筋肉痛だろう。
4時間目は社会。
これも困った。この国社会制度や風習、習慣、成り立ちなどほとんど何も知らないのだ。
そこで私はジルタニアについて話すことにした。
他の国のことを知るのも立派な社会の勉強だろう。ただ次回以降の授業はどうするか早急に考えねばならないが。
「どこから、話せばいいか。言葉も上手くないし、でも頑張って、話してみるね」
「がんばれー!」
「先生って何歳ー?」
「どこ生まれー?」
子供らから質問が飛ぶ。
なかなか答えづらい質問を……。
「私は、2年くらい前、より前の記憶がありません。だから、生まれた場所、年齢も、正確には分かりません」
子供たちはみんなポカンとしてしまった。
「私は、ジルタニアの、小さい街、ロドスにいました。死にかけていて、治療魔法師の先生に、助けられました。それから、生きていくため、治療魔法師になろうと思い、その先生に教わりました。いっぱい勉強して、治療魔法師になりました」
そうだ。死にかけていた私を助けてくれたのが先生で本当に良かった。先生が大きな器で私を受け入れてくれて、面倒を見てくれたから治療魔法師として今生きていけている。
いや、今はなぜか教師か。
「いっぱいってどれくらい?」
「どんな勉強ー?」
「診療所で働いている時間と、ご飯と、寝る時間以外は、勉強しました」
子供たちからは『すごーい!」『どんな勉強したのー?』と声が飛んでくる。
「人の体の仕組み、機能、『ビョウリガク』……、いろんな病気のこと、などです」
病理学なんて難しい言葉はウィルド・ダム語じゃ分からないけど、知っていたところでこの年齢の子供には伝わらないから、私の拙い言語力でも問題ないのは助かる。
「それで……」
どうして大森林まで来ることにしたのか。説明に迷った。嘘はつきたくないけど、本当のことも言えない。
「ジルタニアで、多分、狼族の人、会って、村には治療魔法師がいないって、聞いて、行ってみたいと、思いました」
間違ってはいない説明で誤魔化した。
「先生! あたしジルタニアに行ってみたい!」
ウェルナさんの発言にハッとした。
獣人である彼女がジルタニアに行けば不愉快な思いをするかも知れない。けれどその事実を言うべきか。
「ジルタニアは、この国とは色々と違っていて、行ったら、たくさん刺激を受けると思います。けど、ダメなところもあって、自分たちと見た目が違う人を、嫌ったり、遠ざけたり、する人がいます。絶対にダメで、してはいけないのに、する人がいます」
迷った末に、子供たちにも分かるように説明することにした。
見た目が違うからなんだというのだ。獣人だからってなんだ。肌の色が白かろうが黒かろうが、耳が顔の横にあろうが上にあろうが、尻尾があろうがなかろうが、男だろうが女だろうが。全部全部その人を構成する一要素でしかないのに。
「そういう人は、自分が賢いと、勘違いしています。本当は誰よりもダメ。もしみんながそんな人に出会ったら、差別はダメなんだよって、教えてあげてください」
私が差別をなくしてあげることはできない。けれど差別にあってしまった時、できるだけ傷つかないように心を守る術を教えてあげることはできる。
私の言葉は伝わっただろうか。みんな黙って私の話に耳を傾けてくれた。
「はーい」
「わかったー!」
そして元気な返事が返ってきた。
(よかった。伝わったみたい)
それから好きな食べ物などいくつかの質問に答えているうちに社会の授業が終わった。
(家に帰ったら明日はちゃんと授業ができるように考えなくちゃ……)
この学校では1年生から6年生まで全員が4時間目で授業が終わる。
私は高学年の児童も昼に帰ってしまうのを不思議に思ったが、数日教師として働けばその理由が分かった。
給食設備がないのもあるが、子供たちは家に帰って昼食を食べたらそれぞれ家の手伝いをするのだ。
家に帰っても勉強ができるのは余裕のある家か、親が教育熱心で家業を免除してくれる場合に限られる。それでも志のある子などは寝る前なんかの時間を使って勉強する。それでもロウソクだってタダじゃないから使用を許されなければそれもできない。
そもそも学校に通えていない子供達も少なくはなかった。
現代日本の小学生とは置かれている状況が全く違っていた。
3時間は体育で、いつもは何をしているかと皆に聞いてみたら『遊んでる!』と言われたので、鬼ごっこを提案してみた。
『オニってなに?』と言われてしまい答えに窮したが、とにかく『オニ』が皆を追いかけて、タッチされた人が今度はオニになって追いかけると説明したら理解されたので早速やってみた。
一人だけ足の遅い子がいたらどうフォローしようかと考えながら私も参加したが、この中では私が1番遅かった。大人なのに。獣人と人間の身体能力の差があからさまに出た。
なかでも際立っていたのはウェルナさんとハウさんの脚の速さだろう。
さすが地上最速の動物といわれるチーターの遺伝子を持つ2人だ。誰も追いつけていなかった。
鬼ごっこという遊びは同一種族間でしかできないのかもしれない。
私なんかはオニになったが最後、誰も捕まえられなかったのでリーヴくんがオニを変わってくれた。そしてそのまま戦線離脱。体は20歳そこそこと言えど明日は確実に筋肉痛だろう。
4時間目は社会。
これも困った。この国社会制度や風習、習慣、成り立ちなどほとんど何も知らないのだ。
そこで私はジルタニアについて話すことにした。
他の国のことを知るのも立派な社会の勉強だろう。ただ次回以降の授業はどうするか早急に考えねばならないが。
「どこから、話せばいいか。言葉も上手くないし、でも頑張って、話してみるね」
「がんばれー!」
「先生って何歳ー?」
「どこ生まれー?」
子供らから質問が飛ぶ。
なかなか答えづらい質問を……。
「私は、2年くらい前、より前の記憶がありません。だから、生まれた場所、年齢も、正確には分かりません」
子供たちはみんなポカンとしてしまった。
「私は、ジルタニアの、小さい街、ロドスにいました。死にかけていて、治療魔法師の先生に、助けられました。それから、生きていくため、治療魔法師になろうと思い、その先生に教わりました。いっぱい勉強して、治療魔法師になりました」
そうだ。死にかけていた私を助けてくれたのが先生で本当に良かった。先生が大きな器で私を受け入れてくれて、面倒を見てくれたから治療魔法師として今生きていけている。
いや、今はなぜか教師か。
「いっぱいってどれくらい?」
「どんな勉強ー?」
「診療所で働いている時間と、ご飯と、寝る時間以外は、勉強しました」
子供たちからは『すごーい!」『どんな勉強したのー?』と声が飛んでくる。
「人の体の仕組み、機能、『ビョウリガク』……、いろんな病気のこと、などです」
病理学なんて難しい言葉はウィルド・ダム語じゃ分からないけど、知っていたところでこの年齢の子供には伝わらないから、私の拙い言語力でも問題ないのは助かる。
「それで……」
どうして大森林まで来ることにしたのか。説明に迷った。嘘はつきたくないけど、本当のことも言えない。
「ジルタニアで、多分、狼族の人、会って、村には治療魔法師がいないって、聞いて、行ってみたいと、思いました」
間違ってはいない説明で誤魔化した。
「先生! あたしジルタニアに行ってみたい!」
ウェルナさんの発言にハッとした。
獣人である彼女がジルタニアに行けば不愉快な思いをするかも知れない。けれどその事実を言うべきか。
「ジルタニアは、この国とは色々と違っていて、行ったら、たくさん刺激を受けると思います。けど、ダメなところもあって、自分たちと見た目が違う人を、嫌ったり、遠ざけたり、する人がいます。絶対にダメで、してはいけないのに、する人がいます」
迷った末に、子供たちにも分かるように説明することにした。
見た目が違うからなんだというのだ。獣人だからってなんだ。肌の色が白かろうが黒かろうが、耳が顔の横にあろうが上にあろうが、尻尾があろうがなかろうが、男だろうが女だろうが。全部全部その人を構成する一要素でしかないのに。
「そういう人は、自分が賢いと、勘違いしています。本当は誰よりもダメ。もしみんながそんな人に出会ったら、差別はダメなんだよって、教えてあげてください」
私が差別をなくしてあげることはできない。けれど差別にあってしまった時、できるだけ傷つかないように心を守る術を教えてあげることはできる。
私の言葉は伝わっただろうか。みんな黙って私の話に耳を傾けてくれた。
「はーい」
「わかったー!」
そして元気な返事が返ってきた。
(よかった。伝わったみたい)
それから好きな食べ物などいくつかの質問に答えているうちに社会の授業が終わった。
(家に帰ったら明日はちゃんと授業ができるように考えなくちゃ……)
この学校では1年生から6年生まで全員が4時間目で授業が終わる。
私は高学年の児童も昼に帰ってしまうのを不思議に思ったが、数日教師として働けばその理由が分かった。
給食設備がないのもあるが、子供たちは家に帰って昼食を食べたらそれぞれ家の手伝いをするのだ。
家に帰っても勉強ができるのは余裕のある家か、親が教育熱心で家業を免除してくれる場合に限られる。それでも志のある子などは寝る前なんかの時間を使って勉強する。それでもロウソクだってタダじゃないから使用を許されなければそれもできない。
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現代日本の小学生とは置かれている状況が全く違っていた。
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