一六銀行の鵜飼くん

芝桜 のの

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朝の日課

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朝は交通渋滞が激しい。通勤ラッシュだ。
どこに行くにもこの地域は車がないと始まらない。だから、18才以上車保有率が高い。しかも、半分は軽自動車だ。
18才になると親に薦められ自然に自動車学校に通う。そして、3ヶ月ほどで免許を取得し初めての自動車を中古で買ってもらう。
私も漏れなく18才で免許を取り最早20年以上は自動車で通勤している。
だいたい同じ時間に出勤するので、ラッシュ時の周りの車は顔見知り…いや、運転手は知らないんだから、車見知りだ。この車は2つ先の信号を右に曲がるとか、あの車はこの時間ここを走ってると遅刻じゃないの?とか。
この通勤ラッシュを乗り切る戦友とも言える。たまに他県ナンバーが入ってくると、もう余所者扱いで、「やいやい、この時間に一見さんは入ってくるな!」と荒々しくなる。
如何にラッシュをスムーズに進むかの戦いには、交通を乱すものは敵なのだ!
何処へ行こうにも橋を越えないと前には進めない地形なので、普段乗りなれていない自動車が一台でもあると大渋滞になりかねない。みんなが橋に向かって走り、橋を越えてやっと渋滞から解放される仕組みだ。
橋を越えた所で緑のバンが右折の為に右の車線に入ると上手くするとバスが停車中だ。
すると、バスから降りてくる鵜飼くんが見える。
「今日は1日良い日だ」
朝、バスから降りてくる鵜飼くんが見れたらラッキーデー。
一六銀行さんは車通勤禁止?らしい。
今どき?感もあるけれど、ラッキー占いの為だ。いつもこの時間のバスに乗ってくれたらうれしい。私はその為に頑張って通勤ラッシュを乗り気ってみせる。
「鵜飼くん、いってらっしゃ~い」
と、勝手に見送ると鼻歌を歌いながら運転にも気合いが入る。
ちょっとヤバいストーカーかとも思うけど、ルーティーンってヤツだと思って。
まあ、橋を越えてやっと渋滞を抜けた解放感があるところに、たまたま、バス停があるだけなんだろうけれど…
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