4 / 5
第4話 私と彼女
しおりを挟む
「そうか、君は合わなかったんだね」
彼はハヤタの話を聞くと、少年の不安を取り払うよう注意しながら答えてくれる。
暖かい陽射しの中で、二人は並んでベンチに座り、コーヒーを飲んでいる。
ショーターが淹れてくれたそれは苦味が少なくてむしろ甘いような気がした。
「教えてください。なぜ『離婚』……分離したんですか?」
「んーそうだね、言ってみれば私も合わなかったんだよ」
「不適合ということですか?」
「一旦適合したけど、彼女と合わなかったんだ」
「よく……わかりません」
「精神がだよ」
ショーターは言った。
価値観が違ったとも言った。
「ユーリルはね、適合すると人々の中に居場所を作るんだ」
ハヤタはサキコの言葉を思い出した。
「イメージはね、いろいろあるんだ。私の場合はね、都会的なマンションのような部屋を作ってね。見た目は若い綺麗な女性だったよ」
「精神に家を作るんですか?」
「どちらかといえば頭の中に、という感じだね」
彼女は……、とショーターは語り出した。
「彼女はいつもうるさいんだ。体に良いから野菜をとれとか、カフェインは良くないからとりすぎるなとかね。私は恋人がいたんだけど、あの女は良くないから別れろとかさ。私だけかと思ってみんなに聞いてみたんだ。私のユーリルだけがうるさいのかと、ね」
そうではないようだった。
でもみんな折り合いをつけていた。
そしてショーターは悩んだのだ。
「どうして私だけがユーリルを疎ましく思うのか。私だけがユーリルを受け入れられないのはなぜだろう、とかね。でも考える端からユーリルが答えていく。『あなたは適合しなければ良かったのに』と『あなたは孤独が好きなんだ』とね」
ショーターはすっかり冷めてしまったコーヒをすすった。
「五年ほど一緒にいたんだけど、ある日気がついたんだ。彼女は私の思考の奥底にあるものを拾い上げてあるだけなんだと」
ハヤタは驚いて言った。
「拾い上げる?」
「そうでなければ反射させていると言ってもいい。例えば野菜は体に良いという事を知っている。でも今は食べたくない。そこへ彼女が『野菜は体に良い』という事を拾い上げて私に言っているだけなんだ」
「ええっ!?」
つづく
彼はハヤタの話を聞くと、少年の不安を取り払うよう注意しながら答えてくれる。
暖かい陽射しの中で、二人は並んでベンチに座り、コーヒーを飲んでいる。
ショーターが淹れてくれたそれは苦味が少なくてむしろ甘いような気がした。
「教えてください。なぜ『離婚』……分離したんですか?」
「んーそうだね、言ってみれば私も合わなかったんだよ」
「不適合ということですか?」
「一旦適合したけど、彼女と合わなかったんだ」
「よく……わかりません」
「精神がだよ」
ショーターは言った。
価値観が違ったとも言った。
「ユーリルはね、適合すると人々の中に居場所を作るんだ」
ハヤタはサキコの言葉を思い出した。
「イメージはね、いろいろあるんだ。私の場合はね、都会的なマンションのような部屋を作ってね。見た目は若い綺麗な女性だったよ」
「精神に家を作るんですか?」
「どちらかといえば頭の中に、という感じだね」
彼女は……、とショーターは語り出した。
「彼女はいつもうるさいんだ。体に良いから野菜をとれとか、カフェインは良くないからとりすぎるなとかね。私は恋人がいたんだけど、あの女は良くないから別れろとかさ。私だけかと思ってみんなに聞いてみたんだ。私のユーリルだけがうるさいのかと、ね」
そうではないようだった。
でもみんな折り合いをつけていた。
そしてショーターは悩んだのだ。
「どうして私だけがユーリルを疎ましく思うのか。私だけがユーリルを受け入れられないのはなぜだろう、とかね。でも考える端からユーリルが答えていく。『あなたは適合しなければ良かったのに』と『あなたは孤独が好きなんだ』とね」
ショーターはすっかり冷めてしまったコーヒをすすった。
「五年ほど一緒にいたんだけど、ある日気がついたんだ。彼女は私の思考の奥底にあるものを拾い上げてあるだけなんだと」
ハヤタは驚いて言った。
「拾い上げる?」
「そうでなければ反射させていると言ってもいい。例えば野菜は体に良いという事を知っている。でも今は食べたくない。そこへ彼女が『野菜は体に良い』という事を拾い上げて私に言っているだけなんだ」
「ええっ!?」
つづく
0
あなたにおすすめの小説
恋愛リベンジャーズ
廣瀬純七
SF
拓也は、かつての恋人・純への後悔を抱えたまま生きてきた。ある日、過去へ戻れる不思議なアプリを手に入れるが戻った先で彼を待っていたのは、若き日の純ではなく――純そのものになってしまった自分自身だった。かつての恋人とやり直すはずが、過去の自分を相手に恋をするという奇妙で切ない関係が始まっていく。時間と心が交差する、不思議な男女入れ替わりストーリー。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる