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第84話 また、会えるよ
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「サクラさーん。ついに殺っちゃったかと思いましたよ」
「ついに、とはなんだ? ついに、とは?」
駆け寄る篠宮に、サクラは安心したように笑いながらも強がった。さて、三階に向かわねば、と思いつつ——。一人立ちすくむ少女を振り返る。
カエデ——。
「何よ。今すぐ別の人を呼んでくるから、怖くなんかないわよ!」
カエデはこちらを睨みながらそう叫んだ。サクラはやれやれとため息をつきながら、返事をする。
「我々はすぐにここから出る。心配しなくていい」
「不審者が何を言ってるの!?」
ダメか。
カエデとは昔から相性が良くない。
「行こう」
「サクラさん、あの……」
「どちらにせよ、構っている時間はない。その光が消えたら二度と元の時間に戻れないぞ」
サクラは篠宮が抱える光を蓄えたシリンダーを指し、カエデがいる側とは反対側にある、もう一つの階段へと足を向けた。
そして小さいサクラと鬼丸と手を繋ぐ。階段までの短い散歩だ。
「二人とも、何か聞かれたら、『怖い大人に脅された』と答えるのだぞ」
「んー?」
「つまり、六花の事は内緒だ」
小さい鬼丸は首をひねる。
「よくわかんない」
「おお、それだ! 鬼丸えらいぞ。『よくわからない』と答えるのが良い」
幼い二人とぶらぶらと手を振りながら、サクラは一人うなずく。そして廊下の端にはあっという間に着いた。
「二人は下へ行け。ここでお別れだ」
「お別れ」と言われて、手を離された子ども達は目を丸くする。
「なんで? おれ、あそんでない」
鬼丸の問かけに、サクラは答えに詰まってしまう。
「あー、あれだ。このサクラが遊んでくれる」
「わたし? んー、いいよ」
「えー、つまんない」
「つまんないとはなによ!」
言い合いをする子ども達の様子に微笑みながら、サクラは上階へと向かう階段に足をかけた。
その後ろを篠宮がついて行く。
それを見た小さいサクラが走り寄る。
「しのみや! だっこ!」
ふおう、かわいい!
思わず抱っこしてあげたが、大人のサクラに睨まれて顔が引きつる。小さいサクラは引きつった篠宮の顔を見つめながら聞いて来た。
「しのみや、またあえる?」
「……うん。会えるよ」
「わかった」
小さいサクラはぴょんと篠宮の腕の中から降りると、鬼丸のそばに行って、こちらを見る。小さな手をひらひらと振って笑っている。
篠宮は手を振り返すと、サクラの後を追った。
また、会えるよ。
絶対にね。
つづく
「ついに、とはなんだ? ついに、とは?」
駆け寄る篠宮に、サクラは安心したように笑いながらも強がった。さて、三階に向かわねば、と思いつつ——。一人立ちすくむ少女を振り返る。
カエデ——。
「何よ。今すぐ別の人を呼んでくるから、怖くなんかないわよ!」
カエデはこちらを睨みながらそう叫んだ。サクラはやれやれとため息をつきながら、返事をする。
「我々はすぐにここから出る。心配しなくていい」
「不審者が何を言ってるの!?」
ダメか。
カエデとは昔から相性が良くない。
「行こう」
「サクラさん、あの……」
「どちらにせよ、構っている時間はない。その光が消えたら二度と元の時間に戻れないぞ」
サクラは篠宮が抱える光を蓄えたシリンダーを指し、カエデがいる側とは反対側にある、もう一つの階段へと足を向けた。
そして小さいサクラと鬼丸と手を繋ぐ。階段までの短い散歩だ。
「二人とも、何か聞かれたら、『怖い大人に脅された』と答えるのだぞ」
「んー?」
「つまり、六花の事は内緒だ」
小さい鬼丸は首をひねる。
「よくわかんない」
「おお、それだ! 鬼丸えらいぞ。『よくわからない』と答えるのが良い」
幼い二人とぶらぶらと手を振りながら、サクラは一人うなずく。そして廊下の端にはあっという間に着いた。
「二人は下へ行け。ここでお別れだ」
「お別れ」と言われて、手を離された子ども達は目を丸くする。
「なんで? おれ、あそんでない」
鬼丸の問かけに、サクラは答えに詰まってしまう。
「あー、あれだ。このサクラが遊んでくれる」
「わたし? んー、いいよ」
「えー、つまんない」
「つまんないとはなによ!」
言い合いをする子ども達の様子に微笑みながら、サクラは上階へと向かう階段に足をかけた。
その後ろを篠宮がついて行く。
それを見た小さいサクラが走り寄る。
「しのみや! だっこ!」
ふおう、かわいい!
思わず抱っこしてあげたが、大人のサクラに睨まれて顔が引きつる。小さいサクラは引きつった篠宮の顔を見つめながら聞いて来た。
「しのみや、またあえる?」
「……うん。会えるよ」
「わかった」
小さいサクラはぴょんと篠宮の腕の中から降りると、鬼丸のそばに行って、こちらを見る。小さな手をひらひらと振って笑っている。
篠宮は手を振り返すと、サクラの後を追った。
また、会えるよ。
絶対にね。
つづく
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