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第92話 あやしい鬼丸先生
しおりを挟む開いた戸の前には意外にも鬼丸が立っていた。リリは鴫原校長以外の男子は受け付けないが、鬼丸の事を敬う気持ちは持っている。
なんたってβクラスの初めての成功例だし、能力も半端ない。
「……先生、珍しいですね」
「あー、うん。その、なんだ」
「?」
「ちょっと授業の事で話があるんだが、今外に出れるか?」
「は?」
リリの目がスッと細くなる。
——めんどくさい。
「ここではダメなんですか?」
「お前なぁ、コレで呼んでるのに、全然来ないじゃないか」
そう言って鬼丸は自分の左耳を指した。生体端末だ。この地下室はエメロードの水槽の為に様々な機器が設置されているから、テラヘルツ波が届きにくかったのだろう。
「そうでしたか?」
リリは自分の生体端末を開いた。確かにいつもより画像が乱れる。
「今までこんな事無かったんですけど?」
「そ、そうだよな。とにかく外で、授業の単位について話したい事がある」
「……」
なんか、おかしい。
リリにとって鬼丸先生はそういう曖昧な話し方をする人ではない。
突然、彼女は鬼丸のそばをすり抜け、廊下側に開かれた戸の後ろを見た。
「お前は!」
そこにはβクラスの後輩と以前この地下室に侵入した新任教師の姿があった。
「どういうこと? 鬼丸先生?」
リリの鋭い眼光に射竦められ、鬼丸は惚けるように鼻の頭をかいている。
リリは隠れていた二人に向き直る。何かを企んでいる男子に対して眉が吊り上がった。
「お前ら、何をしている?」
「えー、何してたんだっけ? ウォルフ君」
「えっ!? 俺に振る?」
「そんな浮かれた格好で、どこへ行くつもりだ!?」
ビーサンに水着姿でパーカーと体操着。お互いの格好を確かめ合った二人は開き直る。
「プールだよ、プール!」
「プールしかないじゃんか、なあ?」
「そうだよ! リリちゃんはどこ行くと思ったのさ?」
二人にまくし立てられて、リリは「うっ」と言葉に詰まる。
「リリちゃんも来ない? 陽射しはどのくらい苦手なの?」
「いや、僕は——」
「日傘はどうだ? 持ってるだろ?」
篠宮とウォルフが畳み掛ける。とうとうリリは絶叫した。
「僕は日光がダメなんだってば!!」
つづく
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