ワンボール

天龍院ミリンダ

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第一章 ロマンスドーン〜冒険の夜明け〜

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ワンボール

 おれのサインボールか?
 欲しけりゃくれてやる
 探せ‼︎
 この世のどこかにそれを置いてきた…
 
 このグローブを…
 お前に預ける…
 おれの大切なグローブだ…
 いつか必ず返しに来い…
 立派な野球選手になってな…

 甲子園を目指すってことですよ⁉︎

 停学処分になっている不良、教師狩りの蘇呂という男がいて…

 お前良い奴だから野球部入れよ

 野球やるくらいなら死んだ方がましだ

 野球部入るなら停学処分免除にしてやるよ

 お前は悪魔の息子かよ…

 ナイスホームラン、蘇呂

 お安い御用だ、キャプテン

ワンボール

「しかし流布、お前の球捕るのなかなかきついな」
「そうか?」
「ああ、ノビのあるストレートがウリなようだが、暴れ球だ。これじゃストライクカウント取りづらいぞ。制球を磨け。あとお前はスタミナがやたら高いし球威も凄まじいが、凄まじすぎておれくらい頑丈な奴じゃねェと捕れねェぞ。つまり捕手の替えも利かない」
「そういうお前もホームラン狙いすぎじゃね? 全打席超大振りじゃんか」
「ああ、俺はホームラン王を目指してるからな。てか、それ以外の安打なんか邪道だ。おれにとってはホームラン以外は0点と同じなんでな」
「ふうん」

 蘇呂の心意気を、流布は適当に受け流す。

「しかし知ってるか? 野球って9人いないとチーム認定されないらしいぞ!」
「マジか。おれとお前だけで余裕だろ」
「おれもそう思うんだけど、甲子園行きてェから9人集めようぜ!」
「中津川入れるか…」
「なかつがわァ…?」
「ああ、俺と中学同じ野球部だった奴なんだが、制球はやたら上手い。九分割のコントロールを持つ」
「三橋かよ、すげえなそいつ!」

 流布と蘇呂は中津川を拉致する。

「何だお前ら⁉︎ おれは漫画研究部だぞ⁉︎」
「じゃあ野球漫画家になれば良いだろ」
「ああ、コージィさんみたいな?」
「いや、コージィレベルで良いのか?」
「おれはキャプテン面白かったろ!」
「蛯名のキャラがよく分からんかった」

 蘇呂と中津川の漫才に、流布は欠伸する。

「中津川、第二投手になってくれよ」
「蘇呂が捕手でお前が第一投手か。大分穴ボコボコのチームだな」
「今んとこはな」

 流布は未来を見ている。この野球部を甲子園優勝へ導く。それしか考えていない。

「あと三寺も入れるか」
「ああ、陸上部の」

 流布と蘇呂は三寺を拉致する。

「何だテメエら⁉︎」
「お前、足速いから野球部入れよ。イチローみたいなポジションになれ」
「足速いなら普通陸上やるだろ‼︎」
「いやいや三寺くん、古来より野球漫画では俊足バッターというものが…」

 中津川は三寺に野球漫画の歴史を叩き込む。こういう時に頼りになる男だ。

「つまり陸上より野球のがモテるのか⁉︎」
「ああ、そうだ」
「陸上部のミナさーん‼︎ 糞ありがとうございましたー‼︎」

 陸上部のミナさんは中指を立て陸上部員の尻を蹴飛ばす。皆さんではなくミナさん、集団ではなく個人だったようだ。ミナさんを野球部に入れようか迷う流布だったが、何か怖そうだったため遠慮しておいた。当たり前だのゴムゴムの戦斧だ。そもそもアーロンがいなければそのネタすら通用しないのだから。

ワンボール

「ぜはははは、グラウンドはおれ達サッカー部の物だ‼︎」

 というのはサッカー部キャプテンの黒沼爽人だ。しかし流布は食い下がり、

「何言ってんだ‼︎ グラウンドはおれ達野球部の物だろォが‼︎」
「ぜはは、部員も集まってねェ野球部にグラウンドを使う権利はねェ‼︎」
「サッカー部だって部員集まってねェだろ‼︎」
「野球部よりは多い‼︎」
「野球は9人だけどサッカーは11人だろ‼︎」

 流布が言いたいのは、そもそもの必要人数が違うだろ、ということだ。試合形式の練習も想定するなら18人と22人であり、必要な補欠人数もまた比例的に変わってくる。

「ブルーロックに勝てるのか⁉︎」
「ワンナウツで相殺するよ‼︎」
「ワンナウツ如きでブルーロックに勝てる訳ねェだろ‼︎」
「じゃああだち充さんも」
「それはオーバーキルすぎるだろ‼︎」
「水島新司さんも」
「オーバーキルをさらに上乗せるな‼︎」
「コージィさんも」
「駄目押しするな‼︎」

 黒沼は吐血する。いきなり物騒な一文だが、それくらいのダメージを与えてしまった。

「あ、そっか。どっちも足りないなら」
「え、おい、まさか」
「野球部とサッカー部を」
「合体?」

 こうして野ッカー部の爆誕だ。

「手ェ組もう。同盟だ」
「サッカー部と野球部が同盟だと⁉︎」
「ああ。そしたらグラウンド使い分ける必要もないし、足りない部員を補い合える」
「成る程。悪くねェ。てか、良いなそれ!」

 そう、それが恐らくこの場に於ける最適解だ。太陽と闇が手を組み、ひとつなぎになる。案外本家のオチもこんな感じになるのではないだろうか。ウィーアーがメモリーズになれば、ビリーブはランランランなのだから。
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