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青年と少女は出会い、
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しおりを挟む「いらっしゃーい!!切れ味鋭い得物はどうだい?」
「日持ちのいい食料はいかがかね?勿論、新鮮な食材も売ってるよ!」
街の中心部には威勢のいい掛け声の響く大きな市場があった。武器から携帯食料、日用品など、様々な物が売り買いされている。昼間であることもあり、人がごった返している中、アジュールは露店を冷やかしながらゆっくりと見て回った。
「へぇ、良い剣売ってんな」
ふと目に留まった武器屋の前で足を止めたアジュールは店先に置いてあった剣を覗き込んだ。すぐに店主がニコニコとしながら売り込みをかけてくる。
「お目が高い!そりゃあ切れ味の良い剣でねぇ、どんなモンでも切っちまうから気を付けたほうがいいぜ?」
装飾の一切を省きシンプルであるものの、その刀身は氷で出来ているかのように美しく、同時に冷え冷えとした光を放っていた。シャキンと言う音を立てて刀身を戻したアジュールは悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「確かに切れ味は良さそうだな。その売り言葉だと、今度はどんなものでも弾く盾でも出てくるのか?」
「ガハハハッ!そりゃあいい!今すぐ持ってきましょう、と言いたいとこだけど残念だったな、あんちゃん。そんな盾はうちにはねぇな。それに、そいつは剣であって槍じゃないしな」
「はは、言ってくれる」
ノリのいい店主と談笑していると、すぐ近くでざわめきが起きた。振り返ったアジュールは五人ほどのガタイのいい男たちが、赤いポンチョを着てフードを被った華奢な人影を囲んでいるのを認めた。
「あちゃあ、またアイツらか」
店主が後ろで苦い声で呟いたのが聞こえ、顔だけで振り向くと店主は苦々し気な顔をしていた。
「最近この付近で見るゴロツキどもだよ。なまじ腕が立つんで手の打ちようがなくてよぉ」
店主は悔し気にゴロツキたちを睨みつける。
「若い娘たちが怖がって出てこなくなって来てんだ。娘の家族たちも不安がって家から出そうとしないし、それ以外の奴らも外出をしなくなってる。最近じゃちょいと活気がなくなってきているような気がしてしょうがねぇよ」
周りの露店の主たちも何処か悔し気だ。自分たちの街が荒らされているのが気に食わないのだろう。ふうん、と納得したアジュールはスタスタとゴロツキたちに向かって歩き出した。
「お、おい、あんちゃんっ」
慌てた店主の声を聞き流しつつ近寄ると、ゴロツキたちはフードの人影に夢中になっており、それ以外の野次馬は一歩引いてみているためそこだけポカリと穴が開いた状態になっていた。
「だぁかぁらぁさぁ?俺たちと遊ぼうぜぇ?」
「楽しい思いさせてあげるぜぇ?」
卑下た笑い声を上げるゴロツキ。フードの人影は恐怖からか声を上げるどころか身じろぎ一つしない。さもあらん、とアジュールは思う。ポンチョを着ているとはいえ、その背格好的には女だと思われる。急にごつい男たちに囲まれて迫られれば恐れに体が固まるだろう。そんな事をつらつらと考えながらアジュールは声を掛ける。
「おい」
「あぁん?なんだぁ?」
粘着質な間延びした返答をしながら男の一人が振り向く。せっかく気分良かったのにと顔に大きく書く男ににっこりと笑みを浮かべて見せる。
「その人、困ってんだろ。開放してやれよ」
「んだとてめぇ?」
今までこの街で彼らにかなう者はいなかった。全員返り討ちにしてやった。その事実が男を傲慢にした。一見すると戦え無さそうな細身の青年を威圧するようにゆっくりと気かづきながらニヤニヤと嗤う。
「俺たちが誰だか分かって言ってんだろうなぁ?」
青年の目の前で立ち止まった男。その仲間たちはニヤニヤしながら傍観している。刹那、青年の目の前に立った男が急に殴り掛かった。それでも笑顔のまま動かない青年を見て、男は気持ちよく殴り飛ばす夢想をして、愉悦に嗤う。
しかし。
その瞬間、口元に深い笑みを刻んだアジュールはスッと体を捌き男の拳をよけた。そのまま男の勢いを利用して、足払いをかけつつ男を地面に投げ飛ばした。凄まじい音を立てて巨体が転がったのを見て、一瞬静寂が落ちた。そんな中、一人落ち着き払った様子で顔を上げたアジュールは不敵な笑みを浮かべて他の男たちを見る。
「わりぃけど、知らんな。つーか、ちょっと腕が立つからって図に乗って?集団行動しないと何もできないくせに威張り歩いて?若い女の子にちょっかいを出す?はっ、そんな奴の事なんて知る必要ないし、憶えたくもないね」
心底馬鹿にした口調のその声にはっと我に返ったリーダー格が、顔を真っ赤に染めてアジュールを睨みつける。
「……あか」
ポツリとフードの人影が呟くが、その声は誰にも届くことなく、男たちに視線は集中していた。
「ふざけてんじゃねぇぞてめぇ!お前ら、やっちまえ!」
小悪党のセリフを吐くリーダーの命に従って男たちがそれぞれに声を上げて近寄ってくる。彼らからしてみれば威嚇行為のつもりなのだろうが、アジュールにとってはどこ吹く風だった。肩をすくめて男たちを待ち受ける。その余裕な姿が男たちの火に油を注いだ。
雄たけびを上げて殴り掛かってきた男をさっきの要領で一人投げ飛ばすと、死角から躍り出てきた別の男の攻撃をサラリとよける。舌打ちをして更に殴り掛かって来たので、余裕をもって交わし続ける。幾度と繰り返していくと、男は遊ばれていることに気付いたのだろう、怒りに顔がどす黒く染まっていく。
「……黒…?」
再びフードの人影が呟くが、それに気づいた者はいなかった。
「ふざけんな!正々堂々やりやがれっ!」
唾を散らしながら男が喚く。せせら嗤ったアジュールは冷ややかに言い放つ。
「へぇ?正々堂々なんて言葉知ってんの?ああ、でも意味は理解できなかったのかな?」
茶化すその言葉に野次馬から失笑が漏れる。更なる憤怒に顔を染めた男三人の内、一人が喚き散らしながら殴り掛かってくる。
「芸が無さすぎだろ」
アジュールは呆れ顔で突っ込んできた男を地面に叩き落とす。やれやれと息をつく青年はここまで来て息一つ切らしていない。すると、今度はナイフを抜いた男が飛び掛かってきた。
「おおっと」
危なげなくその刃を躱すと、アジュールは凄絶な笑みを見せた。その笑みに皆の背筋に冷たいものが滑り降りる。若干青ざめた男二人を見据え、アジュールは低い声で凄む。
「剣、抜くって事は、こういう事って事でいーんだな?」
次の瞬間、アジュールの姿が掻き消え、ふっとナイフを持った男の前に現れた。
「っ⁈」
反応できない男のナイフを、一気に鞘走らせたアジュールの剣がスパッと切り裂いた。綺麗に一刀両断されたそのナイフを見て男は青ざめ、アジュールは口笛を吹いた。
「すっげぇな、これ。ってか、今気づいたけど、商品持ってきちまった上に使っちまった」
何でも切れるって本当だったんだな、とあっけらかんと言うアジュールに男は声も出ないようだ。無意識だったとは言え、さっきまで冷やかしていた店の商品を持ってきて使ったことを悪びれる様子もなく、矯めつ眇めつ見ていたアジュールだったが、首を竦めるとヒュンと言う音を立てて男の目の前に切っ先を向けた。
「人に刃向けたんだ。剣を抜くってのはその剣に己が命を乗せてふるう事。相手の命を奪うと同時に、己が命を奪われても文句はねぇって事だよな?」
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