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第三十話:暑くない?
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アレンは持っていたドリンクを一気に飲み干す。体の熱が冷めていくのが分かる。辺りを見渡すと、いつのまにか火山の中腹まで来ていた。この先にある横穴から奥に入っていけばサラマンダーの住処があったはずだ。
「俺達がサラマンダーの鱗を貰って来るから、この辺で待っていてくれと言っても無駄だよな」
「良く分かっているじゃない。あなた達に危険を押し付けて、私がただ待っているだけなんて耐えられるわけないわ」
「だよな」
アレンは聞くまでもなかったかと笑うと同時に不安もなる。何としてもサラマンダーからエリーを守らないと。もう目の前で大事な人を失うわけにはいかない……だが自然と大事な人と考えてしまった頭を横に振り、自ら否定する。エリーはエレナじゃないんだ……だがそれでも失うわけにはいかない人ということは変わりない。
「ボーっとしてどうしたのよ。そんなんで大丈夫なの?」
「別にボーっとしてねぇよ! 対策を考えていたんだよ」
「へぇ~、本当かしら」
疑いの目を向けるエリーに対して、アレンは目の前に立つように指示する。そして右手を前に差し出し手のひらを開く。
「ファイアウォール」
アレンが魔法を唱えるとエリーの体を温かい光が包み込む。
「これって、確か炎系統の魔法から身を守ってくれるのよね。効果の程はどうなのかしら」
エリーは自分の体を見回している。
「さっきまで着ていた鎧よりは大分ましだと思うよ」
「大分まし……ね。やっぱりあなた只の店主っていうには無理があるわよ」
エリーはグランシーヌ騎士団全ての戦力を把握出来ているわけではないが、少なくとも自分が知る限りでは、アレンの魔法の力は誰よりも上回っているようにも見えた。それとともにエリーは自然とアレンに興味を持つようになっていた。
どのようにしてこれほどの力を手に入れたのか……なぜこんな力を持ちながら田舎町で雑貨屋など営んでいるのか……なぜこんなにも自分に良くしてくれるのか……次々に溢れてくる疑問にきりがない。
しかし、今はそれどころではない。こうしている間にも王女の病気は進行しているはずだ。まずは任務を優先しなければ。疑問はこの任務を終えてから解決すればいい。生きて帰らないといけない理由が増えたなと思いつつ、岩と砂が積み上げられた道を進み始めた。
「ところでこの辺りって全然魔物がいないのね」
エリーは火山に入って未だに一体の魔物すら見ていなかった。魔物どころか一匹の虫すら見ていない。
「サラマンダーの縄張りみたいなもんだからな。誰も近寄らないし、それにこの環境で生きていける生物もそうそういないだろうな」
確かにアレンの言う通り、この暑さで、岩と砂しかない山では住める生き物などいないと納得した。自分達もクーラードリンクがなければ暑さにやられている頃だろう。
「そろそろドリンクの効果が切れる頃ですよ」
そう言ってディーネがアレンとエリーに二本目のドリンクを手渡す。二人が一気にドリンクを飲み干したとき、エリーがあることに気づいた。
「そういえばディーネは火山に入って一回もドリンク飲んでいないんじゃない? 大丈夫なの?」
ディーネはアイテムを二人に手渡すばかりで、使っている所は一切見ることがなかった。しかしそれにしては汗一つかかずに平然としているので、自分が気づいていないだけかともエリーは思ったが、
「私は体質的に暑さに強いので大丈夫ですよ。心配してくれてありがとうございます」
と、ディーネはニッコリと笑っていた。
エリーはディーネの肌を見るが、まるで涼しい部屋で快適に過ごしているように少しもべたついているようには見えなかった。クーラードリンクを飲んだ私でさえ額に汗が滲んでいるというのにと不思議でならなかった。暑さに強いという次元ではなく、暑さを感じないと言った方が正しいのではないか。
「大丈夫ならいいのよ。大丈夫なら……」
「えぇ。さぁ、行きましょう」
「俺達がサラマンダーの鱗を貰って来るから、この辺で待っていてくれと言っても無駄だよな」
「良く分かっているじゃない。あなた達に危険を押し付けて、私がただ待っているだけなんて耐えられるわけないわ」
「だよな」
アレンは聞くまでもなかったかと笑うと同時に不安もなる。何としてもサラマンダーからエリーを守らないと。もう目の前で大事な人を失うわけにはいかない……だが自然と大事な人と考えてしまった頭を横に振り、自ら否定する。エリーはエレナじゃないんだ……だがそれでも失うわけにはいかない人ということは変わりない。
「ボーっとしてどうしたのよ。そんなんで大丈夫なの?」
「別にボーっとしてねぇよ! 対策を考えていたんだよ」
「へぇ~、本当かしら」
疑いの目を向けるエリーに対して、アレンは目の前に立つように指示する。そして右手を前に差し出し手のひらを開く。
「ファイアウォール」
アレンが魔法を唱えるとエリーの体を温かい光が包み込む。
「これって、確か炎系統の魔法から身を守ってくれるのよね。効果の程はどうなのかしら」
エリーは自分の体を見回している。
「さっきまで着ていた鎧よりは大分ましだと思うよ」
「大分まし……ね。やっぱりあなた只の店主っていうには無理があるわよ」
エリーはグランシーヌ騎士団全ての戦力を把握出来ているわけではないが、少なくとも自分が知る限りでは、アレンの魔法の力は誰よりも上回っているようにも見えた。それとともにエリーは自然とアレンに興味を持つようになっていた。
どのようにしてこれほどの力を手に入れたのか……なぜこんな力を持ちながら田舎町で雑貨屋など営んでいるのか……なぜこんなにも自分に良くしてくれるのか……次々に溢れてくる疑問にきりがない。
しかし、今はそれどころではない。こうしている間にも王女の病気は進行しているはずだ。まずは任務を優先しなければ。疑問はこの任務を終えてから解決すればいい。生きて帰らないといけない理由が増えたなと思いつつ、岩と砂が積み上げられた道を進み始めた。
「ところでこの辺りって全然魔物がいないのね」
エリーは火山に入って未だに一体の魔物すら見ていなかった。魔物どころか一匹の虫すら見ていない。
「サラマンダーの縄張りみたいなもんだからな。誰も近寄らないし、それにこの環境で生きていける生物もそうそういないだろうな」
確かにアレンの言う通り、この暑さで、岩と砂しかない山では住める生き物などいないと納得した。自分達もクーラードリンクがなければ暑さにやられている頃だろう。
「そろそろドリンクの効果が切れる頃ですよ」
そう言ってディーネがアレンとエリーに二本目のドリンクを手渡す。二人が一気にドリンクを飲み干したとき、エリーがあることに気づいた。
「そういえばディーネは火山に入って一回もドリンク飲んでいないんじゃない? 大丈夫なの?」
ディーネはアイテムを二人に手渡すばかりで、使っている所は一切見ることがなかった。しかしそれにしては汗一つかかずに平然としているので、自分が気づいていないだけかともエリーは思ったが、
「私は体質的に暑さに強いので大丈夫ですよ。心配してくれてありがとうございます」
と、ディーネはニッコリと笑っていた。
エリーはディーネの肌を見るが、まるで涼しい部屋で快適に過ごしているように少しもべたついているようには見えなかった。クーラードリンクを飲んだ私でさえ額に汗が滲んでいるというのにと不思議でならなかった。暑さに強いという次元ではなく、暑さを感じないと言った方が正しいのではないか。
「大丈夫ならいいのよ。大丈夫なら……」
「えぇ。さぁ、行きましょう」
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