17 / 72
17『エヴァンゲリオン・2』
しおりを挟む
真夏ダイアリー
17『エヴァンゲリオン・2』
柱の陰から、真っ赤な顔をして、同じC組の春野うららが現れた……!
うららは、柏木由香と同じく中学は同窓。一年と二年のときは同級だった。あのころ、わたしは、まだ鈴木真夏だった。冬野になっていたら、それこそ冷やかされまくっていただろう。
うららは、見かけによらずソフトボール部なんかに入っていて、ファーストだったかを守っていた。乃木坂にはソフボ部がないんで、今は野球部のマネージャーをやっているらしい。
「わたしは、やってないわよ」
うららの、入試面接のような自己紹介の途中で由香が割り込んだ。
「わたしは、マネージャーみたいなカッタルイことはやらないの。ほら、うららもカッタルイ自己紹介なんか止めて、肝心なこと聞きなよ!」
「あ、あの……」
「話すときは、ちゃんと相手の目を見る!」
「わ、わたし……」
……と、後が続かない。
「しっかりして!」
キャ!
由香が、うららの背中をドンと気合を入れると、その勢いで、うららは省吾の胸にもろにぶつかった……無防備で。
省吾は、胸の下あたりに二つの柔らかいものが当たった感触で、さすがに顔を赤くした。
「あ、ご、ごめんなさい!」
うららは、サッと離れたが、無意識に省吾の体を押してしまった。もののハズミというのは怖いもので、ゴツンという鈍い音がして、省吾は、そのまま柱に後頭部をぶつけて気絶してしまった。
それからは、ちょっと大ゴトになった。
なんと……省吾は、救急車で病院に運ばれてしまったのだ。
軽い脳震とうだったけど、打ち所が悪かったのだろう、意識が戻ったのは病院でCTを撮っている最中だった。
「動かないで」
ナースのオネエサンに言われたけど、本人は、下足室で起こった事件の記憶がきれいにとんでいた。
「大丈夫、異常なし。タンコブができたのと、一時的な記憶喪失になってるだけ」
お医者さんがそう言うと、うららは泣き出した。由香も責任を感じて目が赤い。
「ほんとうに、ごめんなさい」
「うららは悪くないよ。わたしが、うららのこと突き飛ばしたから」
「え……なんのこと?」
「だからあ……」
けっきょく、わたしが一から説明することになった。
「まあ、真夏と同じ友だちってことだったら」
頭のショックだろうか、省吾は変なこだわりもなく、うららをオトモダチの一人にした。
「くそ、やっぱ速えなあ!」
由香の速球を空振りして、省吾がグチった。
「今のは、ほんのウォーミングアップよ。本格的な球は、これから!」
「ちょ、タンマ、ソフトみたいにアンダーで投げられると調子狂うんだ。野球として投げてくれる」
「いいわよ」
「外野下がれ、当たるとでかいぞ!」
「そんなフェイント、わたしには効かないわよ」
由香の心にも火がついた。星飛雄馬ほどじゃないけど、由香は足を上げて投球姿勢に入った。そのとき、野次馬で見ていた数名の男子生徒が反応した。どうやらスカートの中が見えてしまったようだ。
アヘ(”'∀'”)
そのために由香の球にはスピードがつかなかった。そして、省吾も変なスウィングになり、大きなフライになってしまった。
白球は、高く打ち上げられ、冬の青空に大きな弧を描いた。
わたしたちの、三人野球は五人に増えて終業式を迎えたのだ。
そうそう、今日は終業式だったのよ。
化学が欠点じゃないかと心配したけど、お情けの40点。五人に増えたお仲間も欠点はだれもなし。
え、危ないのはおまえだけだって……はい、その通りです!
いろいろありそうな……でも、メデタイ冬休みが始まった!
17『エヴァンゲリオン・2』
柱の陰から、真っ赤な顔をして、同じC組の春野うららが現れた……!
うららは、柏木由香と同じく中学は同窓。一年と二年のときは同級だった。あのころ、わたしは、まだ鈴木真夏だった。冬野になっていたら、それこそ冷やかされまくっていただろう。
うららは、見かけによらずソフトボール部なんかに入っていて、ファーストだったかを守っていた。乃木坂にはソフボ部がないんで、今は野球部のマネージャーをやっているらしい。
「わたしは、やってないわよ」
うららの、入試面接のような自己紹介の途中で由香が割り込んだ。
「わたしは、マネージャーみたいなカッタルイことはやらないの。ほら、うららもカッタルイ自己紹介なんか止めて、肝心なこと聞きなよ!」
「あ、あの……」
「話すときは、ちゃんと相手の目を見る!」
「わ、わたし……」
……と、後が続かない。
「しっかりして!」
キャ!
由香が、うららの背中をドンと気合を入れると、その勢いで、うららは省吾の胸にもろにぶつかった……無防備で。
省吾は、胸の下あたりに二つの柔らかいものが当たった感触で、さすがに顔を赤くした。
「あ、ご、ごめんなさい!」
うららは、サッと離れたが、無意識に省吾の体を押してしまった。もののハズミというのは怖いもので、ゴツンという鈍い音がして、省吾は、そのまま柱に後頭部をぶつけて気絶してしまった。
それからは、ちょっと大ゴトになった。
なんと……省吾は、救急車で病院に運ばれてしまったのだ。
軽い脳震とうだったけど、打ち所が悪かったのだろう、意識が戻ったのは病院でCTを撮っている最中だった。
「動かないで」
ナースのオネエサンに言われたけど、本人は、下足室で起こった事件の記憶がきれいにとんでいた。
「大丈夫、異常なし。タンコブができたのと、一時的な記憶喪失になってるだけ」
お医者さんがそう言うと、うららは泣き出した。由香も責任を感じて目が赤い。
「ほんとうに、ごめんなさい」
「うららは悪くないよ。わたしが、うららのこと突き飛ばしたから」
「え……なんのこと?」
「だからあ……」
けっきょく、わたしが一から説明することになった。
「まあ、真夏と同じ友だちってことだったら」
頭のショックだろうか、省吾は変なこだわりもなく、うららをオトモダチの一人にした。
「くそ、やっぱ速えなあ!」
由香の速球を空振りして、省吾がグチった。
「今のは、ほんのウォーミングアップよ。本格的な球は、これから!」
「ちょ、タンマ、ソフトみたいにアンダーで投げられると調子狂うんだ。野球として投げてくれる」
「いいわよ」
「外野下がれ、当たるとでかいぞ!」
「そんなフェイント、わたしには効かないわよ」
由香の心にも火がついた。星飛雄馬ほどじゃないけど、由香は足を上げて投球姿勢に入った。そのとき、野次馬で見ていた数名の男子生徒が反応した。どうやらスカートの中が見えてしまったようだ。
アヘ(”'∀'”)
そのために由香の球にはスピードがつかなかった。そして、省吾も変なスウィングになり、大きなフライになってしまった。
白球は、高く打ち上げられ、冬の青空に大きな弧を描いた。
わたしたちの、三人野球は五人に増えて終業式を迎えたのだ。
そうそう、今日は終業式だったのよ。
化学が欠点じゃないかと心配したけど、お情けの40点。五人に増えたお仲間も欠点はだれもなし。
え、危ないのはおまえだけだって……はい、その通りです!
いろいろありそうな……でも、メデタイ冬休みが始まった!
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる