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27『紅白歌合戦』
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真夏ダイアリー
27『紅白歌合戦』
夕べは東都放送のスタジオで大変な体験をしてしまった。
なんと、時間を止めてしまったのだ。
おかげで、ライトが落下して大事故になることを止めることができた。しかし、それは、これから、わたし(真夏)の運命がカオスに落ちていく、ほんの入り口にすぎなかった。
省吾のお父さんは、わたしに一杯の情報をダウンロードしていった。わたしは、まず根本的なことから解凍していった。
いや、どうやら解凍する順番もプログラムされているようだ。
省吾のお父さんは、300年ほど先の未来からやってきた。どうも未来はうまくいっていないようで、過去の世界を変えることで克服しようとしている。
歴史というのは、例えば、一本の大きな木のようなもので、枝の数だけ違う歴史があるパラレルワールドのようなものらしい。だから、一つの枝がだめなら、その枝を切って別の枝が生えるようにする。その枝の分岐点に働きかけ、新しい芽を出させることが、省吾のお父さんの任務。
ところが、省吾のお父さんは300年遡ることが限界で、それ以上前の歴史を変えないと、正しい歴史としての枝は芽を出さないようだ。
そのために、タイムリープの力が優れた省吾に300年以上の過去にリープさせて歴史を変えようとしたが、省吾一人の力では限界に達し、同様な能力を持ったわたしに白羽の矢を立てたのだ。
わたしの力を伸ばすアイテムが、ハチ公前でもらったラピスラズリのサイコロ……ここまでが、解凍できた答え。
夕べは、ぐったり疲れて、家に帰るとすぐに眠ってしまった。
夢の中で、わたしはラピスラズリのサイコロを振ってみた。
五六回やると思い通りの数字が出せるようになった。ま、夢の中なんだからと、開き直っている自分がおかしかった。
十回やって納得すると気配を感じた。
梅と葉ボタンの気配……お母さんが買ってきたんだろう。しかし気配はするけど、エリカのように強いオーラは感じられず、人の姿になって現れることもなかった。
「やっぱ、力が付いたんだ……」
朝起きて、机の上でサイコロを転がした。全部思った数字が出た。
今日は、紅白歌合戦だ。
去年まではコタツでグータラして観る側だったけど、今年は、なんと出演者。AKRとしても初出場なので、一度事務所に集まって気合いを入れてから行くことになっている。
「昨日のレコード大賞は、AKBに持って行かれたけど、わたしたちもやるだけやって、『コスモストルネード』で優秀作品賞をいただけました。三つ葉の潤ちゃんたちは、東都放送ご苦労様でした。で、今日は、全員で紅白がんばります。みんなよろしく!」
リーダーの大石クララさんが檄を飛ばした。
そして、バス二台に分乗して、会場のNHKホールに向かった。
なんせ初出場。
プロディユーサーの黒羽さん、吉岡さん、リーダーのクララさんたちが、あちこちの楽屋に挨拶回り。それだけで、一時間近くかかってしまった。わたしたちは、服部八重さんが中心になって、振りと立ち位置の最終チェック。
挨拶回りから帰ってきたメンバーは、もう、それだけで疲れた様子だったけど、クララさんの顔色が一番悪いような気がした。
「さあ、三十分後に、わたしたちのリハ。立ち位置大丈夫ね。知井子、先週の歌謡フェスみたいに間違えないでね」
「は、はい~」
「じゃ、いくぞ!」
せーのぉ!
いつも 感謝! 冷静! 丁寧! 正確! みんなの夢が叶えるぞ! AKR CO!
そして、それはリハの最後の決めポーズの直後に起こった。
「ウウ……」
うなり声をあげて、クララさんが倒れた。お腹を押さえて、エビのように丸くなって脂汗を流していた。
「クララ!」「クララさん!」
みんなが、集まった。
クララさんは苦悶の表情で唇を震わせている……。
27『紅白歌合戦』
夕べは東都放送のスタジオで大変な体験をしてしまった。
なんと、時間を止めてしまったのだ。
おかげで、ライトが落下して大事故になることを止めることができた。しかし、それは、これから、わたし(真夏)の運命がカオスに落ちていく、ほんの入り口にすぎなかった。
省吾のお父さんは、わたしに一杯の情報をダウンロードしていった。わたしは、まず根本的なことから解凍していった。
いや、どうやら解凍する順番もプログラムされているようだ。
省吾のお父さんは、300年ほど先の未来からやってきた。どうも未来はうまくいっていないようで、過去の世界を変えることで克服しようとしている。
歴史というのは、例えば、一本の大きな木のようなもので、枝の数だけ違う歴史があるパラレルワールドのようなものらしい。だから、一つの枝がだめなら、その枝を切って別の枝が生えるようにする。その枝の分岐点に働きかけ、新しい芽を出させることが、省吾のお父さんの任務。
ところが、省吾のお父さんは300年遡ることが限界で、それ以上前の歴史を変えないと、正しい歴史としての枝は芽を出さないようだ。
そのために、タイムリープの力が優れた省吾に300年以上の過去にリープさせて歴史を変えようとしたが、省吾一人の力では限界に達し、同様な能力を持ったわたしに白羽の矢を立てたのだ。
わたしの力を伸ばすアイテムが、ハチ公前でもらったラピスラズリのサイコロ……ここまでが、解凍できた答え。
夕べは、ぐったり疲れて、家に帰るとすぐに眠ってしまった。
夢の中で、わたしはラピスラズリのサイコロを振ってみた。
五六回やると思い通りの数字が出せるようになった。ま、夢の中なんだからと、開き直っている自分がおかしかった。
十回やって納得すると気配を感じた。
梅と葉ボタンの気配……お母さんが買ってきたんだろう。しかし気配はするけど、エリカのように強いオーラは感じられず、人の姿になって現れることもなかった。
「やっぱ、力が付いたんだ……」
朝起きて、机の上でサイコロを転がした。全部思った数字が出た。
今日は、紅白歌合戦だ。
去年まではコタツでグータラして観る側だったけど、今年は、なんと出演者。AKRとしても初出場なので、一度事務所に集まって気合いを入れてから行くことになっている。
「昨日のレコード大賞は、AKBに持って行かれたけど、わたしたちもやるだけやって、『コスモストルネード』で優秀作品賞をいただけました。三つ葉の潤ちゃんたちは、東都放送ご苦労様でした。で、今日は、全員で紅白がんばります。みんなよろしく!」
リーダーの大石クララさんが檄を飛ばした。
そして、バス二台に分乗して、会場のNHKホールに向かった。
なんせ初出場。
プロディユーサーの黒羽さん、吉岡さん、リーダーのクララさんたちが、あちこちの楽屋に挨拶回り。それだけで、一時間近くかかってしまった。わたしたちは、服部八重さんが中心になって、振りと立ち位置の最終チェック。
挨拶回りから帰ってきたメンバーは、もう、それだけで疲れた様子だったけど、クララさんの顔色が一番悪いような気がした。
「さあ、三十分後に、わたしたちのリハ。立ち位置大丈夫ね。知井子、先週の歌謡フェスみたいに間違えないでね」
「は、はい~」
「じゃ、いくぞ!」
せーのぉ!
いつも 感謝! 冷静! 丁寧! 正確! みんなの夢が叶えるぞ! AKR CO!
そして、それはリハの最後の決めポーズの直後に起こった。
「ウウ……」
うなり声をあげて、クララさんが倒れた。お腹を押さえて、エビのように丸くなって脂汗を流していた。
「クララ!」「クララさん!」
みんなが、集まった。
クララさんは苦悶の表情で唇を震わせている……。
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