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44『朝の実況中継』
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真夏ダイアリー
44『朝の実況中継』
明くる日の新聞の三面にさっそく出た。
―― 連理の桜発見 ――
学校の許可を得て、AKRのスタッフの面々が、その日のうちにやってきて取材。とりあえず撮ったビデオを、新曲『二本の桜』をBGにして動画サイトにアップしてアクセスは一晩で二万件を超えた。
で、明くる日の新聞の三面に載ったわけ、朝のワイドショ-が、あくる朝には取材。わたしたち五人組は発見者として、朝の六時から中継に付き合わされた。
「いやあ、ぼくの勘が当たったなあ」
AKRの会長の光ミツル先生も、校長先生と共にお出ましになった。三連休には、ここで新曲のロケをやることににこやかに同意の握手。
「真夏っちゃん、あなたも発見者の一人だったの?」
スタジオの、ものもんたのおじさんが聞いてきた。
「はい、ほとんど諦めて、野球しはじめたら、ボールが偶然にここに落ちてきて、これが連理の桜だって分かったんです」
そのあとを受けて、女性レポーターが、わたしの横で話を続ける。
「じつは。人気アイドルグループの鈴木真夏(わたし、芸名は、冬野じゃなくて鈴木を使ってる)さんが、会長の光ミツルさんの指示を受け、校庭を探して発見したんです。来月発売の『二本の桜』のプロモーションビデオの撮影のため、この乃木坂高校の古い新聞記事から発見されて、真夏さんたちに頼んで探したんだそうです」
「その新曲は、乃木高の桜を、最初からイメージしてつくられたんですか?」
もんたのおじさんが、会長にふった。
「それは、わたしみたいなジジイよりも若い子に語らせます。真夏、説明」
ムチャブリされて、一瞬オタオタしたけど、ありのまま答えた。
「本当のモチーフは、光先生の個人的な体験にあるそうなんですけど、それはなんだか、まだ内緒みたいなんです。でも、曲の中に繰り返し『ニホンの桜』ってフレーズが出てくるんですけど、どうも二本と日本を掛けた言葉らしくって、ささやかな恋人同士の応援歌にも、日本全体への応援歌にも聞こえるってものなんです。わたしたちも歌っていて、とても元気が出てきます。どうか、新曲リリースされたら、よろしくお願いしま~す」
「真夏っちゃん、デビューして、まだ一カ月ほどなのに、ベシャリうまくなったね。明日から、うちの番組の担当やってよ」
「ほんとですか、本気にしちゃいますよ!」
「「アハハハ……」」
光会長と、ものもんたのおじさんの高笑いで、中継は終わった。
始業時間までには間があるので、学校のパンフ用の写真撮りをやることになった。
光会長は、ダンドリのいい人で、照明機材やら、セット用の桜の木まで用意してくれていた。
わたしだけの写真を十数枚撮ったあとは、いつもの五人野球を始めた。そこを、事務所のカメラマンが、三人がかりで撮っていく。
省吾も玉男も、由香、うららもうきうきしながら、白球を追った。
テレビの中継を見ていた乃木高の生徒達が続々と集まり始めた。
「よーし、みんなで撮ろう!」
光会長の一言で、百人ほどになった生徒達で集合写真。
それを何枚か撮っているうちに他の生徒もやってきて、八時過ぎには五百人ほどになり、カメラマンは、急遽屋上に上がり、グラウンドいっぱいになった生徒達を撮りにかかった。
「いつも、これくらいの時間に登校してくれりゃいいんだけどなあ」
生活指導の先生が、腕を組んで文句を言う。
さすがはプロで、始業十分前には撤収完了。授業に差し障るようなことはなかった。
夕方事務所に行くと、スタッフのみんなが三連休中のプロモ撮影のダンドリを決めていた。
「もう、ユーチューブとニコ動には流してあるよ」
気づくと、集まったメンバーがモニターを見ている。写真だけじゃなくてビデオも撮っていたらしい。
「お、真夏。渾身のフルスゥイングだね!」
と、クララさん。
「あ、真夏。パンチラになってるよ!」
「え、ウソ!?」
ヤエさんが、わざわざ、その瞬間で画面をストップさせた。
「や、やめてくださいよ!」
「かわいいね、花柄じゃん」
知井子がはしゃぐ。
「どいたどいた……コンマ二秒。カットだな。心配すんな、カットして流し直すから」
「もう……パソコンとかでコピーされてたらどうすんですか!」
「出たものは、仕方ないなあ」
トホホ……。
そう思っていたら、会長の声がした。
「撮影のときは、仁和さんにも来てもらえるようにな……」
え、仁和さんて……?
44『朝の実況中継』
明くる日の新聞の三面にさっそく出た。
―― 連理の桜発見 ――
学校の許可を得て、AKRのスタッフの面々が、その日のうちにやってきて取材。とりあえず撮ったビデオを、新曲『二本の桜』をBGにして動画サイトにアップしてアクセスは一晩で二万件を超えた。
で、明くる日の新聞の三面に載ったわけ、朝のワイドショ-が、あくる朝には取材。わたしたち五人組は発見者として、朝の六時から中継に付き合わされた。
「いやあ、ぼくの勘が当たったなあ」
AKRの会長の光ミツル先生も、校長先生と共にお出ましになった。三連休には、ここで新曲のロケをやることににこやかに同意の握手。
「真夏っちゃん、あなたも発見者の一人だったの?」
スタジオの、ものもんたのおじさんが聞いてきた。
「はい、ほとんど諦めて、野球しはじめたら、ボールが偶然にここに落ちてきて、これが連理の桜だって分かったんです」
そのあとを受けて、女性レポーターが、わたしの横で話を続ける。
「じつは。人気アイドルグループの鈴木真夏(わたし、芸名は、冬野じゃなくて鈴木を使ってる)さんが、会長の光ミツルさんの指示を受け、校庭を探して発見したんです。来月発売の『二本の桜』のプロモーションビデオの撮影のため、この乃木坂高校の古い新聞記事から発見されて、真夏さんたちに頼んで探したんだそうです」
「その新曲は、乃木高の桜を、最初からイメージしてつくられたんですか?」
もんたのおじさんが、会長にふった。
「それは、わたしみたいなジジイよりも若い子に語らせます。真夏、説明」
ムチャブリされて、一瞬オタオタしたけど、ありのまま答えた。
「本当のモチーフは、光先生の個人的な体験にあるそうなんですけど、それはなんだか、まだ内緒みたいなんです。でも、曲の中に繰り返し『ニホンの桜』ってフレーズが出てくるんですけど、どうも二本と日本を掛けた言葉らしくって、ささやかな恋人同士の応援歌にも、日本全体への応援歌にも聞こえるってものなんです。わたしたちも歌っていて、とても元気が出てきます。どうか、新曲リリースされたら、よろしくお願いしま~す」
「真夏っちゃん、デビューして、まだ一カ月ほどなのに、ベシャリうまくなったね。明日から、うちの番組の担当やってよ」
「ほんとですか、本気にしちゃいますよ!」
「「アハハハ……」」
光会長と、ものもんたのおじさんの高笑いで、中継は終わった。
始業時間までには間があるので、学校のパンフ用の写真撮りをやることになった。
光会長は、ダンドリのいい人で、照明機材やら、セット用の桜の木まで用意してくれていた。
わたしだけの写真を十数枚撮ったあとは、いつもの五人野球を始めた。そこを、事務所のカメラマンが、三人がかりで撮っていく。
省吾も玉男も、由香、うららもうきうきしながら、白球を追った。
テレビの中継を見ていた乃木高の生徒達が続々と集まり始めた。
「よーし、みんなで撮ろう!」
光会長の一言で、百人ほどになった生徒達で集合写真。
それを何枚か撮っているうちに他の生徒もやってきて、八時過ぎには五百人ほどになり、カメラマンは、急遽屋上に上がり、グラウンドいっぱいになった生徒達を撮りにかかった。
「いつも、これくらいの時間に登校してくれりゃいいんだけどなあ」
生活指導の先生が、腕を組んで文句を言う。
さすがはプロで、始業十分前には撤収完了。授業に差し障るようなことはなかった。
夕方事務所に行くと、スタッフのみんなが三連休中のプロモ撮影のダンドリを決めていた。
「もう、ユーチューブとニコ動には流してあるよ」
気づくと、集まったメンバーがモニターを見ている。写真だけじゃなくてビデオも撮っていたらしい。
「お、真夏。渾身のフルスゥイングだね!」
と、クララさん。
「あ、真夏。パンチラになってるよ!」
「え、ウソ!?」
ヤエさんが、わざわざ、その瞬間で画面をストップさせた。
「や、やめてくださいよ!」
「かわいいね、花柄じゃん」
知井子がはしゃぐ。
「どいたどいた……コンマ二秒。カットだな。心配すんな、カットして流し直すから」
「もう……パソコンとかでコピーされてたらどうすんですか!」
「出たものは、仕方ないなあ」
トホホ……。
そう思っていたら、会長の声がした。
「撮影のときは、仁和さんにも来てもらえるようにな……」
え、仁和さんて……?
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