53 / 72
53『禁断のテレポテーション』
しおりを挟む
真夏ダイアリー
53『禁断のテレポテーション』
「やあ、ミリー。ま、入ってくれよ」
「思ったより元気そうじゃないの、安心した」
「病気じゃないからね。ただ熱中しちゃうと、もう学校に間に合わない時間になってしまってさ」
「まさか、女の子がいっしょにいたりしないでしょうね?」
「もっとエキサイティングで魅力的なもの」
フレンドリーだったのは、そこまでだった。
玄関のドアを閉めると、厳しい顔で、わたしを睨みつけた。
「誰だ、お前は……ミリーは実在の人物だぞ!?」
ウソ……と、わたしは思った。ミリーは、この時代のアメリカに来るために作られたアバターだと思っていた。オペレーターはだれだか分からないけど、実在の人物のアバターを使うなんて、かなり余裕がない証拠。
「ここに来るまでに、誰かに会ったか?」
「ええ、ジェシカに。ついさっき、この家の前で」
「ジェシカは、いまごろ本物のミリーに会っているかもな……ここまでリスクを冒しながらやってくるなんて、相当情報を掴んだ幹部……オソノさんか?」
省吾は、わたしの正体は分からないらしい。
黙っておくことにする。
省吾がトニーというアバターでやろうとしていることは、とんでもないこと……らしいことは分かっている。そして、その実行が目前に迫っていることも。ただ、以前ワシントンDCに来たときよりも情報もアバターの設定も不十分だった。ことは急を要するもののようだ。
「わたしが、だれだか明かすことはできない。でも、あなたが、これからやろうとしていることは、どうしても阻止するわ」
省吾は指を動かし掛けた。テレポの前兆だ。わたしは反射的に――やめろ――と思った。
「くそ……テレポを封じる力も持っているのか」
わたしは、自分にそんな力があるとは知らない。ただ――やめろ――と、思っただけ。
「省吾……いや、ここじゃトニーね。トニーがやろうとしていることはルールから外れてる(具体的には分からないけど)やらせることはできないわ」
「まあ、いいさ。今日はまだ二日だ。時間に余裕はある。アバターとはいえ人間だ、いつまでも緊張状態で、僕の行動を邪魔できるわけじゃない」
「そう、あなただって同じ……根比べね」
わたしたちは、外見的にはソファーに座ってリラックスしていた。まるで恋人同士がくつろいでいるように……でも、精神的には、全力で対峙していた。一瞬も息を抜けない。
トントントン
そのとき、ドアのノッカーが鳴った。
「わたし、ジェシカ。やっぱ心配でやってきちゃった……トニー、トニー、居るんでしょ。ミリーもいっしょなんでしょ」
「ご指名だ、君が出てやれよ」
「いいわよ。近くに居さえすればテレポブロックは解けないから」
「半径どのくらい?」
「地平線の彼方ぐらい……はい、待って。いま開けるから」
ドアを開けると、ジェシカの明るい顔があった。
「やっぱ、気になってやってきちゃった……真実が知りたくて」
ジェシカの、すぐ横に本物のミリーが現れた。ドアの陰に隠れていたようだ。
「誰よ、あなた……!?」
本物がスゴミのある笑顔で詰問した。瞬間の動揺。やつはテレポしてしまった……。
53『禁断のテレポテーション』
「やあ、ミリー。ま、入ってくれよ」
「思ったより元気そうじゃないの、安心した」
「病気じゃないからね。ただ熱中しちゃうと、もう学校に間に合わない時間になってしまってさ」
「まさか、女の子がいっしょにいたりしないでしょうね?」
「もっとエキサイティングで魅力的なもの」
フレンドリーだったのは、そこまでだった。
玄関のドアを閉めると、厳しい顔で、わたしを睨みつけた。
「誰だ、お前は……ミリーは実在の人物だぞ!?」
ウソ……と、わたしは思った。ミリーは、この時代のアメリカに来るために作られたアバターだと思っていた。オペレーターはだれだか分からないけど、実在の人物のアバターを使うなんて、かなり余裕がない証拠。
「ここに来るまでに、誰かに会ったか?」
「ええ、ジェシカに。ついさっき、この家の前で」
「ジェシカは、いまごろ本物のミリーに会っているかもな……ここまでリスクを冒しながらやってくるなんて、相当情報を掴んだ幹部……オソノさんか?」
省吾は、わたしの正体は分からないらしい。
黙っておくことにする。
省吾がトニーというアバターでやろうとしていることは、とんでもないこと……らしいことは分かっている。そして、その実行が目前に迫っていることも。ただ、以前ワシントンDCに来たときよりも情報もアバターの設定も不十分だった。ことは急を要するもののようだ。
「わたしが、だれだか明かすことはできない。でも、あなたが、これからやろうとしていることは、どうしても阻止するわ」
省吾は指を動かし掛けた。テレポの前兆だ。わたしは反射的に――やめろ――と思った。
「くそ……テレポを封じる力も持っているのか」
わたしは、自分にそんな力があるとは知らない。ただ――やめろ――と、思っただけ。
「省吾……いや、ここじゃトニーね。トニーがやろうとしていることはルールから外れてる(具体的には分からないけど)やらせることはできないわ」
「まあ、いいさ。今日はまだ二日だ。時間に余裕はある。アバターとはいえ人間だ、いつまでも緊張状態で、僕の行動を邪魔できるわけじゃない」
「そう、あなただって同じ……根比べね」
わたしたちは、外見的にはソファーに座ってリラックスしていた。まるで恋人同士がくつろいでいるように……でも、精神的には、全力で対峙していた。一瞬も息を抜けない。
トントントン
そのとき、ドアのノッカーが鳴った。
「わたし、ジェシカ。やっぱ心配でやってきちゃった……トニー、トニー、居るんでしょ。ミリーもいっしょなんでしょ」
「ご指名だ、君が出てやれよ」
「いいわよ。近くに居さえすればテレポブロックは解けないから」
「半径どのくらい?」
「地平線の彼方ぐらい……はい、待って。いま開けるから」
ドアを開けると、ジェシカの明るい顔があった。
「やっぱ、気になってやってきちゃった……真実が知りたくて」
ジェシカの、すぐ横に本物のミリーが現れた。ドアの陰に隠れていたようだ。
「誰よ、あなた……!?」
本物がスゴミのある笑顔で詰問した。瞬間の動揺。やつはテレポしてしまった……。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる