真夏ダイアリー

武者走走九郎or大橋むつお

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55『ミリー、人質になる』

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真夏ダイアリー

55『ミリー、人質になる』    



 わたしたちは、ハドソン川を挟んだ小さな民間航空会社の飛行場にきていた。

 さすがのアメリカも、この時期、優秀なパイロットが欲しく、この航空会社も、若いパイロットを引き抜かれ会社も親会社に吸収され、飛行場は事実上閉鎖されていた。
 もう午後四時をまわっていたけど、夏も近い6月の太陽は、ほとんど空の真上にあった。

「……どうやって、ここに来られたの?」

 手にした銃が無くなっていることにも気づかずに、ジェシカが呟いた。事前にテレポの説明はしたが、実際やってみると、衝撃であるようだ。ミリーもショックで固まっている。

「トニーも、あなたと同じアバターとかいうにせ者なの……?」
「会ってみなければ分からない。コネクションを全部切られてるから、トニーが、ここに居るということしか分からない」

 ここを探り当てることも大変だった。インストールされた能力では探すことができず、教科書の中に隠していたアナライザーを使って、やっと探り当てたのだ。

 目星をつけた格納庫に向かうと、途中で格納庫のシャッターが開いた。わたしたちは駆け足になった。
 あと三十メートルというところで、エンジンの始動音がした。ダグラスDCー3が動き始めた。

「「「ストップ!!」」」

 わたしたちは、三人でダグラスの前に立ちふさがった。やがてトニーの姿をした省吾がタラップを降りてきた。

「あなたはトニーなの? それともトニーに化けたアバターとかいう化け物なの?」

 ジェシカが、銃を構えた。

「引き金は引かないほうがいい。そこのアバターと違って、僕はトニーの体そのものを借りてるからね」
「くそ……」

 悔しそうに、ジェシカは銃を下ろした。

「もう、ここまで来たら後戻りはできない。もうエンジン回しちゃったからね」
「……このダグラス、ミートボール(日の丸)が付いてる!」
「そう、この戦争で唯一、アメリカと日本で使った同じ機種。日本じゃ、ライセンス生産で零式輸送機っていうんだけどね」
「トニー、何をするつもり!?」
「戦争を終わらせる。多少強引なやり方だけど……おっとアバターの真夏君は大人しくしてもらおうか……ミリーおいで。いっしょにニューヨークの空を飛ぼう」
「だめよミリー!」
「だって……」

 意思に反してミリーの体は、トニーに近づき腕の中に絡め取られた。

「やることが終わったら、ミリーもトニーも返すよ。むろんトニー本人としてね」

 そう言うと、トニーはミリーといっしょにダグラスの中に消えた。
 そして、ダグラスは、そのまま速度を上げて、ニューヨークの空に飛び立っていく……。

「……これで、よかったの?」

 ジェシカが、ポツンと呟いた……。
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