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67『再びのワシントンDC』
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真夏ダイアリー
67『再びのワシントンDC』
気が付いたら、ワシントンD・Cのマサチューセッツアベニューに、ボストンバッグを提げて立っていた。
西にポトマック川と、川辺の緑地帯が見える。関東大震災救援のお礼に日本から送られた桜が並木道に寒々と並んでいる。急ごう、今度は気後れもない。ぐずぐずしていては、後ろからジョ-ジがやってきて、不審尋問をされる。今度はジョージを巻き込むわけにはいかない。
そう思って、道を急いでいると、前から警官が歩いてきた。
ナニゲに歩いていればいいだろう。そう判断したが、近づいてきて分かった。その警官は、ジョージ・ルインスキだった。
――そうか、ジョージは日本大使館の警戒をしてるんだ。そのために、大使館の前の道を行ったり来たり……どうやら、前回とは、タイミングが五分ほどズレてしまったようだ。懐かしさと緊張感がいっぺんにきた。
「ハイ、お嬢さん。日本大使館にご用?」
「新任の事務官です」
「パスポートを見せてもらっていいかな?」
あの時と同じ。違う言い方をしようと思ったが、インストールされた言葉が反射的に出てくる。
「荒っぽく扱うと、中からサムライが刀抜いて飛び出してくるわよ」
「優しく扱ったら、芸者ガールが出てくるかい?」
「それ以上のナイスガールが、あなたの前にいるわよ」
わたしは、帽子を取って、真っ正面からジョージをを見上げてしまった。紅の豚のフィオが空賊のオッサンたちと渡り合っているシーンが頭に浮かんだ。これも前回といっしょだ。
「へえ、キミ二十二歳なのかい!?」
「日本的な勘定じゃ、二十三よ」
「ハイスクールの一年生ぐらいにしか見えないぜ。それもオマセなオチャッピーのな」
「お巡りさんは、まるで生粋の東部出身に見えるわ」
「光栄だが……まるでってのが、ひっかかるな」
「お巡りさん、ポーランド人のクォーターでしょ」
「なんだと……」
「出身は、シカゴあたり」
「おまえ……」
「握手しよ。わたしのお婆ちゃんも、ポーランド系アメリカ人」
「ほんとかよ?」
「モニカ・ルインスキっての」
「え、オレ、ジョ-ジ・ルインスキだぜ!」
「遠い親類かもね? もう、行っていい、ジョ-ジ?」
「ああ、また会えるといいな」
「そうね、楽しみにしてるわ」
「……緊張してんな?」
「だって、ハイスクールの一年生にしか見えない新米なんだもん」
「だれだって、最初はそうさ。オレもシカゴ訛り抜けるのに苦労したもんさ。でも今は……ハハ、マナツには見抜かれちまったがな」
「ううん、なんとなくの感じよ。同じ血が流れてるんだもん」
「そうだな、じゃ、元気にやれよ!」
「うん!」
ジョージは、明るく握手してくれた。やっぱり気の良い人だ……そう思って大使館の方に向いた。その刹那、イタズラの気配を感じた。
「BANG!」
ジョージは、おどけて手でピストルを撃つ格好をした。わたしは、すかさず身をかわし反撃。
「BANG!」
「ハハ、オレのは外されたけど、マナツのはまともに当たったぜ!」
「フフ、わたしのハートにヒットさせるのは、なかなかむつかしいわよ」
「マナツの国とは戦争したくないもんだな」
「……ほんとね」
こないだは、口から出任せだと思っていたが、この対応は、インストールされているマニュアルなんだ。もどかしかった。今度会ったらただではすまないのに……。
そして、大使館に入り、野村大使に会った。これも前回と同じ。
ただ、来栖特任大使が来たところから、前回と展開が変わってきた……。
67『再びのワシントンDC』
気が付いたら、ワシントンD・Cのマサチューセッツアベニューに、ボストンバッグを提げて立っていた。
西にポトマック川と、川辺の緑地帯が見える。関東大震災救援のお礼に日本から送られた桜が並木道に寒々と並んでいる。急ごう、今度は気後れもない。ぐずぐずしていては、後ろからジョ-ジがやってきて、不審尋問をされる。今度はジョージを巻き込むわけにはいかない。
そう思って、道を急いでいると、前から警官が歩いてきた。
ナニゲに歩いていればいいだろう。そう判断したが、近づいてきて分かった。その警官は、ジョージ・ルインスキだった。
――そうか、ジョージは日本大使館の警戒をしてるんだ。そのために、大使館の前の道を行ったり来たり……どうやら、前回とは、タイミングが五分ほどズレてしまったようだ。懐かしさと緊張感がいっぺんにきた。
「ハイ、お嬢さん。日本大使館にご用?」
「新任の事務官です」
「パスポートを見せてもらっていいかな?」
あの時と同じ。違う言い方をしようと思ったが、インストールされた言葉が反射的に出てくる。
「荒っぽく扱うと、中からサムライが刀抜いて飛び出してくるわよ」
「優しく扱ったら、芸者ガールが出てくるかい?」
「それ以上のナイスガールが、あなたの前にいるわよ」
わたしは、帽子を取って、真っ正面からジョージをを見上げてしまった。紅の豚のフィオが空賊のオッサンたちと渡り合っているシーンが頭に浮かんだ。これも前回といっしょだ。
「へえ、キミ二十二歳なのかい!?」
「日本的な勘定じゃ、二十三よ」
「ハイスクールの一年生ぐらいにしか見えないぜ。それもオマセなオチャッピーのな」
「お巡りさんは、まるで生粋の東部出身に見えるわ」
「光栄だが……まるでってのが、ひっかかるな」
「お巡りさん、ポーランド人のクォーターでしょ」
「なんだと……」
「出身は、シカゴあたり」
「おまえ……」
「握手しよ。わたしのお婆ちゃんも、ポーランド系アメリカ人」
「ほんとかよ?」
「モニカ・ルインスキっての」
「え、オレ、ジョ-ジ・ルインスキだぜ!」
「遠い親類かもね? もう、行っていい、ジョ-ジ?」
「ああ、また会えるといいな」
「そうね、楽しみにしてるわ」
「……緊張してんな?」
「だって、ハイスクールの一年生にしか見えない新米なんだもん」
「だれだって、最初はそうさ。オレもシカゴ訛り抜けるのに苦労したもんさ。でも今は……ハハ、マナツには見抜かれちまったがな」
「ううん、なんとなくの感じよ。同じ血が流れてるんだもん」
「そうだな、じゃ、元気にやれよ!」
「うん!」
ジョージは、明るく握手してくれた。やっぱり気の良い人だ……そう思って大使館の方に向いた。その刹那、イタズラの気配を感じた。
「BANG!」
ジョージは、おどけて手でピストルを撃つ格好をした。わたしは、すかさず身をかわし反撃。
「BANG!」
「ハハ、オレのは外されたけど、マナツのはまともに当たったぜ!」
「フフ、わたしのハートにヒットさせるのは、なかなかむつかしいわよ」
「マナツの国とは戦争したくないもんだな」
「……ほんとね」
こないだは、口から出任せだと思っていたが、この対応は、インストールされているマニュアルなんだ。もどかしかった。今度会ったらただではすまないのに……。
そして、大使館に入り、野村大使に会った。これも前回と同じ。
ただ、来栖特任大使が来たところから、前回と展開が変わってきた……。
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