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69『今度はうまくいく!?』
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真夏ダイアリー
69『今度はうまくいく!?』
「OSS(CIAの前身)が訓電を傍受し始めた、こちらも急ごう。そっちのモニターに出てる訓電を、記録上のものと照合してくれないか」
「え……すごい、もう十四部全部がそろってる」
「ああ、外務省が暗号化する前のものだよ。外務省の書記官の頭に細工をしてある。彼が筆記した段階で、こっちに届くようにしてある」
「わたしが、やったときより進歩している」
「そりゃ、こっちに半年もいるからね。いろいろと細工はしてある」
「……以前の訓電と中味はいっしょよ」
「よかった。単語一つ違っても、アウトだからね。じゃ、それをそのままプリントアウトして、大使に持っていってくれ。おれは、OSSの解読装置にブラフをかける」
「どんなブラフ?」
「解読したら、源氏物語の原文になる。まあ、日本の古典文学の勉強をしてもらうさ」
コンビニのコピー並の早さで十四部の訓電が正式な書式の平文で出てきた。
「大使、訓電です。もう正式な外交文書の書式になっています」
「すごいね、暗号文を組み直して、文書にするのに、普通でも二時間はかかるよ」
「そのために、わたしと高野さんがいるんです」
「そうだったね。来栖さん、こりゃ祝勝会の準備だね」
「そりゃ、国務長官に渡してからですね、大使館の周囲に怪しげな車が四台停まっています」
ブラフをかけおえた高野(省吾)がやってきた。
「OSSかね?」
「いえ、もっと下っ端の警察です。大使館から出てくる車は、十二時までは足止めするようにだけ命じられています」
「最後通牒を間に合わなくさせるため……だね?」
「ダミーの公用車を先行させます」
窓から、大使の専用車が一台出て行った。
「あんなもの、いつの間に用意したんだね!?」
「これが、わたしの仕事ですから。あの車は半日ワシントンDCを走り回ります……二台が付いていきましたね」
それから、大使二人は本当にポーカーを始めた。どういうわけか、高野まで加わりだした。
「負けたら、祝勝会の費用は機密費から出させてもらいます。それぐらいの流用はいいでしょう」
海軍出身の野村大使はニヤニヤし、生粋の外交官である来栖特命大使は苦い顔をした。
真夏も苦い顔になった。大使が出発するまでの間、ダミーの操作と把握は、真夏まかせである。
「高野君、顔色が良くなってきたね」
「ええ、いいカモが二匹もいますからね」
――なによ、わたしが来たから、老化が止まったんじゃない――
「あ、ダミーが検問にかかりました」
「え、国務省には近寄らないようにしてあるのに」
「それが、かえって怪しまれたんじゃないですか」
「あの車には、誰が乗って居るんだね?」
「自分の部下です。真夏君ほど優秀じゃありませんが」
――なによ、ただのアバターじゃないのよ――
――アバターなんて概念は、このお二人には分からないからね。二台目を出して――
真夏は、PCを使って二台目のダミーを出した。瞬間二台の車が動き出したが、二人が張り込みで残った。
ポーカーが来栖大使の負けで勝負がついたときに時間がきた。
前回と同様に、アメリカ人職員の車に大使二人と高野、そして運転は真夏だった。
「あれ、あの張り込みの二人、車に気づかないな」
「きっと週末のデートのことでも考えてるんでしょ」
ほんとうは、光学的なステルスがかけてあった。ツーブロック行って右折してから、ステルスを切った。ステルスのままでは、いつ事故をおこすか分からないからだ。
そして二十分後には無事国務省に着き、これも前回同様、秘書官を煙に巻いて、時間通りハル国務長官に最後通牒を渡すことが出来た。
――このままだと、もみ消されてしまうわよ――
――そう、これからが勝負――
高野(省吾)は腕時計のリュウズを押した……。
69『今度はうまくいく!?』
「OSS(CIAの前身)が訓電を傍受し始めた、こちらも急ごう。そっちのモニターに出てる訓電を、記録上のものと照合してくれないか」
「え……すごい、もう十四部全部がそろってる」
「ああ、外務省が暗号化する前のものだよ。外務省の書記官の頭に細工をしてある。彼が筆記した段階で、こっちに届くようにしてある」
「わたしが、やったときより進歩している」
「そりゃ、こっちに半年もいるからね。いろいろと細工はしてある」
「……以前の訓電と中味はいっしょよ」
「よかった。単語一つ違っても、アウトだからね。じゃ、それをそのままプリントアウトして、大使に持っていってくれ。おれは、OSSの解読装置にブラフをかける」
「どんなブラフ?」
「解読したら、源氏物語の原文になる。まあ、日本の古典文学の勉強をしてもらうさ」
コンビニのコピー並の早さで十四部の訓電が正式な書式の平文で出てきた。
「大使、訓電です。もう正式な外交文書の書式になっています」
「すごいね、暗号文を組み直して、文書にするのに、普通でも二時間はかかるよ」
「そのために、わたしと高野さんがいるんです」
「そうだったね。来栖さん、こりゃ祝勝会の準備だね」
「そりゃ、国務長官に渡してからですね、大使館の周囲に怪しげな車が四台停まっています」
ブラフをかけおえた高野(省吾)がやってきた。
「OSSかね?」
「いえ、もっと下っ端の警察です。大使館から出てくる車は、十二時までは足止めするようにだけ命じられています」
「最後通牒を間に合わなくさせるため……だね?」
「ダミーの公用車を先行させます」
窓から、大使の専用車が一台出て行った。
「あんなもの、いつの間に用意したんだね!?」
「これが、わたしの仕事ですから。あの車は半日ワシントンDCを走り回ります……二台が付いていきましたね」
それから、大使二人は本当にポーカーを始めた。どういうわけか、高野まで加わりだした。
「負けたら、祝勝会の費用は機密費から出させてもらいます。それぐらいの流用はいいでしょう」
海軍出身の野村大使はニヤニヤし、生粋の外交官である来栖特命大使は苦い顔をした。
真夏も苦い顔になった。大使が出発するまでの間、ダミーの操作と把握は、真夏まかせである。
「高野君、顔色が良くなってきたね」
「ええ、いいカモが二匹もいますからね」
――なによ、わたしが来たから、老化が止まったんじゃない――
「あ、ダミーが検問にかかりました」
「え、国務省には近寄らないようにしてあるのに」
「それが、かえって怪しまれたんじゃないですか」
「あの車には、誰が乗って居るんだね?」
「自分の部下です。真夏君ほど優秀じゃありませんが」
――なによ、ただのアバターじゃないのよ――
――アバターなんて概念は、このお二人には分からないからね。二台目を出して――
真夏は、PCを使って二台目のダミーを出した。瞬間二台の車が動き出したが、二人が張り込みで残った。
ポーカーが来栖大使の負けで勝負がついたときに時間がきた。
前回と同様に、アメリカ人職員の車に大使二人と高野、そして運転は真夏だった。
「あれ、あの張り込みの二人、車に気づかないな」
「きっと週末のデートのことでも考えてるんでしょ」
ほんとうは、光学的なステルスがかけてあった。ツーブロック行って右折してから、ステルスを切った。ステルスのままでは、いつ事故をおこすか分からないからだ。
そして二十分後には無事国務省に着き、これも前回同様、秘書官を煙に巻いて、時間通りハル国務長官に最後通牒を渡すことが出来た。
――このままだと、もみ消されてしまうわよ――
――そう、これからが勝負――
高野(省吾)は腕時計のリュウズを押した……。
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