魔法少女マヂカ

武者走走九郎or大橋むつお

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088『M資金・25 ハートの女王・1』

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魔法少女マヂカ

088『M資金・25 ハートの女王・1』語り手:ブリンダ 

 

 
 迫りくるビーフイーターどもから全速力で逃げる!

 
 バッキンガム宮殿の衛兵に比べると、ビーフイーターどもはメタボのオッサンが多い。中にはシルバー人材センターから派遣されてきたようなロートルも混ざっている。

 逃げきれるぞ!

 実際、追いかけてくるビーフイーターどもの槍先は息をつくように乱れ始めている。

 わたしに任せてえええええええ!

 黄色い声がしたかと思うと、オッサンではないビーフイーターが抜きん出て距離を詰め始めた。

「「お、女のビーフイーター!?」」

 そう、ガタイは厳ついが、Fサイズはあろうかというホルスタイン顔負けの巨乳を揺らせ、槍を投げたら届くくらいの近さに迫ってきた。

『あいつ、史上初の女性ビーフイーターのキャロラインよ! 軍隊で二十年も務めあげて、善行章バリバリのネーチャンだから、ダッシュダッシュ! 負けるな牛女!』

 鏡の国のアリスが気楽に叫ぶ。

「あ、あんたらは高機動車に乗ってるんだからラクチンなんだろーけど、あたしは生身なのよ! さっきのレースで体力使い切ってるしい! そーだ、あたしも乗せてよ! 幌を畳んだら乗らないこともないでしょ!」

「だめだ! 高機動車とは言えT型フォードだぞ、そんな500キロもある牛女を載せられるかあ!」

「そんなこと言わないでええ!」

「あ、よせ!」

 牛女は四つ足の他に両手がある。四つ足で駆けながら両手でボディーの後ろにしがみ付く。

 500キロの荷重で、グッと車体が沈み込んで速度が落ちる。

『仕方のない牛女ね! これをお飲みなさい!』

 ミラーの中から鏡の国のアリスが投げたのは、小さな薬瓶だ。

「飲んだら、小さくなれるやつだ!」

 命が掛かると、たいていのことはやれるもので、マヂカは受け取ると器用に片手でキャップを外して一気飲みした。

『バカ、全部飲んだら……』

 不思議の国のアリスほどではないが、生まれたての子ネコほどに縮んで後部座席に飛び込んできた。

「お、おい、こんなところに入るなあ!(#´0`#)!」

 勢いか企んだのか、マヂカはオレの胸の中に飛び込んできた。

「緊急避難よ辛抱しなさい!」

 なんとか収まると、さすがに高機動車、ビーフイーターどもの手が届かないところまで逃げおおせた。

 

―― ニャハハ、なんとか逃げられたのニャー! 賞金なのニャー! ――

 前方に¥100000000の表示が現れた。

―― おまけに、これも付けとくニャー! ――

 ¥100000000の表示の下に赤黒ドレスのハートの女王が現れた。

 ヒッチハイクのように右手の親指を立て、左手でドレスの裾を摘まみ上げてガーターベルトの太ももまで露わにして挑発的な微笑みを湛えている。

 キーーーーーーーー!!

 そのおぞましさに、高機動車は急ブレーキをかけて急停車してしまった!
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