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368『ハナと咸臨丸に向かう』
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銀河太平記
368『ハナと咸臨丸に向かう』お岩
ヤマブキ幼稚園を飛び立つと東に進んで荒川に出て、それからは荒川の上を東京湾に進んでいる。
乗っているのは筋斗雲。ハイスペックなボートだけど、皇居から南西はドンパチが続いていて陸上から行くわけにはいかないからね。
「……なんか似合わねえよなあ」
助手席のハナがプータレる。この為に用意した軍服が気に入らない様子だ。かく言う自分も窮屈なんだけど、公式に咸臨丸を訪れるんだ、お岩食堂のお仕着せというわけにもいかないさ。
「けどよ、いつの間に島に軍隊ができたんだぁ?」
「咸臨丸には扶桑のお偉いさんたちが乗ってるんだ、こっちもちゃんとしてリスペクトしなくちゃならないからね」
「でもよ、軍服でなくってもいいんじゃね?」
「軍隊じゃない、民間防衛隊だよ。島はいちおう日本領だからね」
「防衛隊? 聞いたことねえぞ」
「三日前に出来たところだからね。睦仁殿下の手前、いいかげんなかっこうで行くわけにはいかないのさ」
「でもよ、なんで詰襟? キュークツで仕方ねえ!」
「カッコいいからだよ」
「え、カッコいいのか?」
「ああ、よく似合ってるぞ」
「そ、そうか(^▽^;)」
制服を言い出したのは及川市長だ。将来の扶桑との関係を考えてキチンとしておけってことで、島を出る時に三人分の制服を渡された。マイさん、お岩(あたし)、ハナの三人分。マイさんは陛下のためにフリーハンドで居たいということで、わたしとハナの食堂組で向かっている。
「まだドンパチやってやがんな……」
東京湾に出るとキャノピーの右側から青山方面の戦闘が伺える。
二人とも西之島戦争を戦ってきたので、微妙に心がささくれ立つ。
「でも峠は越えてるな」
「おお、漢明のやつらが陽動かけてきやがった時に似てるかもな」
ハナは敵の陽動を逆手にとって敵の本体を壊滅させたことがある(147『待ち伏せ』)。その時戦死したのがフーちゃんの父親で、それでも戦後やってきたフーちゃんとは仲良くなった。島の人間はガサツだが寛容だ。
ピーー ピーー
ダッシュボードのアラームが鳴る。マイさんからの緊急電だ。
『名古屋と大阪で暴動が起こったわ、詳細は不明だけども、予想通り皇統会と菊水党と思われる。その他にも各地に不穏の様子、じゅうぶん注意して』
「了解」
一言返事して通話はおしまい。ハナがモニターを入れて情報を確認している。
「たぶん、こいつら戦法を変えてくるぜ……」
歴戦の野生児は、不敵にほくそ笑む。
ガサゴソ ガサゴソ
「ん?」
仕入れた蟹がまだ生きていて蠢くような音がする。
「ギク(=◇=;)」
「ハナぁ……」
「え、あ、なにも聞こえねえけど……あ、ちょ!」
後ろの荷物入れを開けると、目が覚めたばかりのペスがキョトンとしていた。
キャノピーの向こう、海軍と第七艦隊の間に咸臨丸が見えて来た。
☆彡主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 第一師団曹長、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府書院番士 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 第一師団軍医、一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中だった
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
扶桑 徳子 道隆の御台所
扶桑 道興 玄武守、道隆の弟、二人の息子(道次・道忠)と娘がいる
本多 兵二(ほんだ へいじ) 書院番士小姓頭、彦と中学同窓
胡蝶 元小姓頭 将軍直属の隠密
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 東鈴(妻) 悟遼(息子)
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく) 元輸送船の船長 大統領秘書官
朱 元尚 少将 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西之島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
御山 西之島の火山
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟
368『ハナと咸臨丸に向かう』お岩
ヤマブキ幼稚園を飛び立つと東に進んで荒川に出て、それからは荒川の上を東京湾に進んでいる。
乗っているのは筋斗雲。ハイスペックなボートだけど、皇居から南西はドンパチが続いていて陸上から行くわけにはいかないからね。
「……なんか似合わねえよなあ」
助手席のハナがプータレる。この為に用意した軍服が気に入らない様子だ。かく言う自分も窮屈なんだけど、公式に咸臨丸を訪れるんだ、お岩食堂のお仕着せというわけにもいかないさ。
「けどよ、いつの間に島に軍隊ができたんだぁ?」
「咸臨丸には扶桑のお偉いさんたちが乗ってるんだ、こっちもちゃんとしてリスペクトしなくちゃならないからね」
「でもよ、軍服でなくってもいいんじゃね?」
「軍隊じゃない、民間防衛隊だよ。島はいちおう日本領だからね」
「防衛隊? 聞いたことねえぞ」
「三日前に出来たところだからね。睦仁殿下の手前、いいかげんなかっこうで行くわけにはいかないのさ」
「でもよ、なんで詰襟? キュークツで仕方ねえ!」
「カッコいいからだよ」
「え、カッコいいのか?」
「ああ、よく似合ってるぞ」
「そ、そうか(^▽^;)」
制服を言い出したのは及川市長だ。将来の扶桑との関係を考えてキチンとしておけってことで、島を出る時に三人分の制服を渡された。マイさん、お岩(あたし)、ハナの三人分。マイさんは陛下のためにフリーハンドで居たいということで、わたしとハナの食堂組で向かっている。
「まだドンパチやってやがんな……」
東京湾に出るとキャノピーの右側から青山方面の戦闘が伺える。
二人とも西之島戦争を戦ってきたので、微妙に心がささくれ立つ。
「でも峠は越えてるな」
「おお、漢明のやつらが陽動かけてきやがった時に似てるかもな」
ハナは敵の陽動を逆手にとって敵の本体を壊滅させたことがある(147『待ち伏せ』)。その時戦死したのがフーちゃんの父親で、それでも戦後やってきたフーちゃんとは仲良くなった。島の人間はガサツだが寛容だ。
ピーー ピーー
ダッシュボードのアラームが鳴る。マイさんからの緊急電だ。
『名古屋と大阪で暴動が起こったわ、詳細は不明だけども、予想通り皇統会と菊水党と思われる。その他にも各地に不穏の様子、じゅうぶん注意して』
「了解」
一言返事して通話はおしまい。ハナがモニターを入れて情報を確認している。
「たぶん、こいつら戦法を変えてくるぜ……」
歴戦の野生児は、不敵にほくそ笑む。
ガサゴソ ガサゴソ
「ん?」
仕入れた蟹がまだ生きていて蠢くような音がする。
「ギク(=◇=;)」
「ハナぁ……」
「え、あ、なにも聞こえねえけど……あ、ちょ!」
後ろの荷物入れを開けると、目が覚めたばかりのペスがキョトンとしていた。
キャノピーの向こう、海軍と第七艦隊の間に咸臨丸が見えて来た。
☆彡主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 第一師団曹長、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府書院番士 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 第一師団軍医、一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中だった
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
扶桑 徳子 道隆の御台所
扶桑 道興 玄武守、道隆の弟、二人の息子(道次・道忠)と娘がいる
本多 兵二(ほんだ へいじ) 書院番士小姓頭、彦と中学同窓
胡蝶 元小姓頭 将軍直属の隠密
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 東鈴(妻) 悟遼(息子)
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく) 元輸送船の船長 大統領秘書官
朱 元尚 少将 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西之島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
御山 西之島の火山
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
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