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045『東屋・2 修学旅行に隠された秘密』
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銀河太平記
045『東屋・2 修学旅行に隠された秘密』ヒコ
思わず聞いてしまった。
何かと言うと、黙とう。
僕たちは、修学旅行を中断して帰国した。
中断の理由は、ミクのパスポートが盗まれそうになって取り返したり(けっきょく手の込んだやり方で再び盗まれた)、犯人を追跡したダッシュがケガをしたりとトラブルが多かったこと。宿泊予定だった民宿が何者かによって焼かれたことなどが理由だ。
そして、何よりテロリストによって学園艦が爆破されて多くの犠牲者が出ている。
食事の前に一分くらいの黙とうはあってしかるべきだと思う。
「種明かしをしておこう」
箸をとる前に上様は姿勢を正された。
「実は、爆破された学園艦に人は乗っていなかった」
えええええ!?
これには驚いた。
「実は、学園艦が君たち修学旅行生を乗せて地球の周回軌道に入った時には分かっていたんだよ。テロリストたちに狙われていることはね」
「本当ですか!?」
ダッシュが目をむいて身を乗り出す。
「ちょっと、落ち着きなさいよ」
ミクがたしなめて、制服の裾を掴む。
テルは、ポカンと口を開けて上様のお顔を凝視している。テルが超高速で情報を検証整理している時の顔だ。ダッシュが腰を下ろすと、ミクはすかさずハンカチを出してテルの顎に添える。涎が零れるのを防ぐためだ。テルが深い思考状態になると呼吸と拍動以外の身体活動や機能が落ちてしまうためだ。
「うん、扶桑の諜報組織は優秀だからね。地球の周回軌道に入ったころには分かっていた。実は、他の班は上陸さえしていないんだ」
「本当ですか?」
今度はミクが質問した。
「テロが予測される中で上陸はさせられないからね。上陸のシャトルに乗せた後は、いろいろ理由を付けて足止めしてあった。別にチャーターした船で、個別に帰国させてある」
「じゃ、俺たちだけが?」
「そうだ、君たちは対応能力が高いので、上陸してもらった。しかし、テロリストの接触は予想を超えた激しいものなので、君たちも帰還させざるを得なかったというところなんだ」
いったいなぜ?
これがアニメだったら、四人全員の頭の上に『?』が浮かんだことだろう。
「分かったのよしゃ!」
テルが、ミクの手を払いのけて、小学生のように手を挙げた。
「はい、テルくん」
「これは、森ノ宮しゃまを扶桑に亡命させるための、壮大なフェイクだったと思うのよさ!」
「さすが、平賀照くんだ」
「どういうことなんだ?」
ダッシュがついてこれなくて質問する。
「森ノ宮さまの救出を正面に出すと、大事になりゅのよさ。日本との外交問題にもなるし、敵の注目や攻撃も宮しゃまに集中してリスクが大きくなりしゅぎに、それで、あたしらの修学旅行を、襲撃されることを前提に組まれた……たぶん、幕府の隠密局あたりが作った救出劇……」
「いやあ、まいったなあ」
上様が、正直に頭を掻かれる。学校の先輩的な仕草。深刻な話をしているのに、どこか和んでしまう。
「あ……ひょっとしたや、靖国の……天皇陛下まで関わって」
「ハハハ、そこから先は、さすがに……ね」
上様は目を『へ』の字にして、やんわりと遮られる。
「あのう……」
「なんだい、緒方さん?」
「わたしのニセモノが、お城に上がったときいているんですけど」
「うん、昨日までここに居たよ。天狗党の諸君も混乱しているんだろうね、ちょっと尻尾を残していったんで隠密局が後を付けている」
「えと、被害とかは無かったんですか?」
「多少はあったかもしれないね……でも、敵も人間だよ。間近で接して見ないことには分からないこともあるからね(^▽^)」
一国の征夷大将軍とは思えぬ豪胆さに息を飲む。
「いや、さすがにやり過ぎだと、胡蝶や隠密局の服部にはしかられたけどね(^_^;)。さ、寿司ネタが温くなってしまう、試作の手巻き寿司を食べようじゃないか」
は、はい!
ムシャムシャ……
食べることになると呼吸まで一致するのは健康な高校生の証拠なんだろう。
「ネタのお魚は、二種類あるのよしゃ」
「え……」
「あ、そういうと」
たしかに、マグロもブリも二口ぐらい食べると分かるくらいに味が違う。
「どっちの方が美味しい(n*´ω`*n)?」
上様が、初めて調理実習をやった高校生のように聞いてこられるのが可笑しい。ミクなどは小さく「かわいい」と呟いて口を押えた。
「「「「こっちです」」」」
これも意見が一致して、同じものを指さす。
「ああ、やっぱりレプリケーターには勝てないかあ」
え?
ということは、上様は、どうやら魚の養殖にまで手を伸ばされているいるようだ。
※ この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥
森ノ宮親王
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
045『東屋・2 修学旅行に隠された秘密』ヒコ
思わず聞いてしまった。
何かと言うと、黙とう。
僕たちは、修学旅行を中断して帰国した。
中断の理由は、ミクのパスポートが盗まれそうになって取り返したり(けっきょく手の込んだやり方で再び盗まれた)、犯人を追跡したダッシュがケガをしたりとトラブルが多かったこと。宿泊予定だった民宿が何者かによって焼かれたことなどが理由だ。
そして、何よりテロリストによって学園艦が爆破されて多くの犠牲者が出ている。
食事の前に一分くらいの黙とうはあってしかるべきだと思う。
「種明かしをしておこう」
箸をとる前に上様は姿勢を正された。
「実は、爆破された学園艦に人は乗っていなかった」
えええええ!?
これには驚いた。
「実は、学園艦が君たち修学旅行生を乗せて地球の周回軌道に入った時には分かっていたんだよ。テロリストたちに狙われていることはね」
「本当ですか!?」
ダッシュが目をむいて身を乗り出す。
「ちょっと、落ち着きなさいよ」
ミクがたしなめて、制服の裾を掴む。
テルは、ポカンと口を開けて上様のお顔を凝視している。テルが超高速で情報を検証整理している時の顔だ。ダッシュが腰を下ろすと、ミクはすかさずハンカチを出してテルの顎に添える。涎が零れるのを防ぐためだ。テルが深い思考状態になると呼吸と拍動以外の身体活動や機能が落ちてしまうためだ。
「うん、扶桑の諜報組織は優秀だからね。地球の周回軌道に入ったころには分かっていた。実は、他の班は上陸さえしていないんだ」
「本当ですか?」
今度はミクが質問した。
「テロが予測される中で上陸はさせられないからね。上陸のシャトルに乗せた後は、いろいろ理由を付けて足止めしてあった。別にチャーターした船で、個別に帰国させてある」
「じゃ、俺たちだけが?」
「そうだ、君たちは対応能力が高いので、上陸してもらった。しかし、テロリストの接触は予想を超えた激しいものなので、君たちも帰還させざるを得なかったというところなんだ」
いったいなぜ?
これがアニメだったら、四人全員の頭の上に『?』が浮かんだことだろう。
「分かったのよしゃ!」
テルが、ミクの手を払いのけて、小学生のように手を挙げた。
「はい、テルくん」
「これは、森ノ宮しゃまを扶桑に亡命させるための、壮大なフェイクだったと思うのよさ!」
「さすが、平賀照くんだ」
「どういうことなんだ?」
ダッシュがついてこれなくて質問する。
「森ノ宮さまの救出を正面に出すと、大事になりゅのよさ。日本との外交問題にもなるし、敵の注目や攻撃も宮しゃまに集中してリスクが大きくなりしゅぎに、それで、あたしらの修学旅行を、襲撃されることを前提に組まれた……たぶん、幕府の隠密局あたりが作った救出劇……」
「いやあ、まいったなあ」
上様が、正直に頭を掻かれる。学校の先輩的な仕草。深刻な話をしているのに、どこか和んでしまう。
「あ……ひょっとしたや、靖国の……天皇陛下まで関わって」
「ハハハ、そこから先は、さすがに……ね」
上様は目を『へ』の字にして、やんわりと遮られる。
「あのう……」
「なんだい、緒方さん?」
「わたしのニセモノが、お城に上がったときいているんですけど」
「うん、昨日までここに居たよ。天狗党の諸君も混乱しているんだろうね、ちょっと尻尾を残していったんで隠密局が後を付けている」
「えと、被害とかは無かったんですか?」
「多少はあったかもしれないね……でも、敵も人間だよ。間近で接して見ないことには分からないこともあるからね(^▽^)」
一国の征夷大将軍とは思えぬ豪胆さに息を飲む。
「いや、さすがにやり過ぎだと、胡蝶や隠密局の服部にはしかられたけどね(^_^;)。さ、寿司ネタが温くなってしまう、試作の手巻き寿司を食べようじゃないか」
は、はい!
ムシャムシャ……
食べることになると呼吸まで一致するのは健康な高校生の証拠なんだろう。
「ネタのお魚は、二種類あるのよしゃ」
「え……」
「あ、そういうと」
たしかに、マグロもブリも二口ぐらい食べると分かるくらいに味が違う。
「どっちの方が美味しい(n*´ω`*n)?」
上様が、初めて調理実習をやった高校生のように聞いてこられるのが可笑しい。ミクなどは小さく「かわいい」と呟いて口を押えた。
「「「「こっちです」」」」
これも意見が一致して、同じものを指さす。
「ああ、やっぱりレプリケーターには勝てないかあ」
え?
ということは、上様は、どうやら魚の養殖にまで手を伸ばされているいるようだ。
※ この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
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児玉元帥
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マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
※ 事項
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