銀河太平記

武者走走九郎or大橋むつお

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124『アルルカンの秘密・2』

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銀河太平記

124『アルルカンの秘密・2』心子内親王  




 じつは迷っています。


 なんだか、お風呂から上がった後、卓球をしようか、一杯やりながらのんびりしようかみたいにアルルカンさん。

「ふふ」

「あ、おかしいですか?」

「いえ、亡くなった母も、よく言っていたので」

「え、須磨宮さまが?」

「はい『母親としてのわたしは、卓球などをやって娘とコミニケーションを計ろうかと思うけど、年相応のオバサンとしては、一杯やってゴロゴロしたいわけよ』と言っていました」

「ほ、それで、なんと答えたんですか?」

「『勝手にすればあ、どっちにしても、ココは付き合いませんから』」

「まあ、薄情なぁ」

「そう思ったんですけどね『一杯やってゴロゴロなら付き合うわ』にしました」

「え、それ、おいくつの時?」

「十四になったばかりのころです」

「宮さまが薨去されたころですね……」

「はい、なんかベタベタしてましたね、あの頃の母は……」

「じゃあ、一杯やってゴロゴロしますか?」

「はい、もう少し浸かってから。せっかくの一番風呂ですから(^o^)」

「もちろん」

「アルルカンさんは……」

「アルルカンでいいですよ。言いにくいでしょ『アルルカンさん』は」

「あ、でも……」

「じゃあ、船長でいいですよ。みんな、そう呼んでますから」

「それじゃ、船長さん」

「さん無しで」

「じゃ、船長」

 さん付けを止すと、ぐっと近くなった感じになって、思わず顔を近づけてしまう。

「なんでしょうか?」

 アルルカ……いや船長も、グッと顔を寄せてきて、女学生同士みたいになってきた。

「義体になる前の船長は、どんなだったんですか?」

「おお、直球ですなあ」

「いけませんでした?」

「いえいえ、殿下も、なかなかの人たらしであられる」

「アハ、人たらし! なんだか美味しそう、みたらし団子みたい」

「じつはね、元々は、アクトロイドであったみたいなんですよ」

「アクトロイドって、俳優業に特化したロボットさんですよね?」

「ええ、ロシアや満州を中心に映画とか舞台とかやってたみたいです」

「みたい?」

「ええ、ポンコツになって、でも綺麗なボディーなんで売りに出されて、日本に輸送される途中、飛行機が撃墜されてしまったんです。その時、どうやらPIじみたことをやってしまったようなんです」

「PIって、パーフェクトインストールですか?」

「そう、乗客の誰か……女の人です。見当はついていますが、PIは禁断の技術ですし、そういうことを想定して作られたロボットでもありません。どうやら、ソウルの90%はインストールできたんですけどね、元のわたしも、インストールされた女の人も、固有情報がクラッシュしてしまって、こんな人間でもロボットでもない道化が誕生したというわけです」

「そうなんだ!」

 児玉元帥に似ている……そう思ったら、なんだかワクワクしてきた。

 西之島の人たちは、本人が切り出さない限り個人の素性を詮索しない。みんな毎日協力し合って生きていて「現在(いま)を生きて明日に繋がればいい」という感じ。以前、落盤事故が起こって、何人も犠牲者が出て、その半分くらいは出自が分からなくて島の慰霊碑に納められている。それからは、少しずつ変わっていったみたいだけど、それでも個人の出自や心情に踏み込むのはタブーに近い。わたしの出自なんて隠しようも無いんだけど、それでも、あれこれ聞かれることはほとんどない。

「わたしは宇宙海賊というカテゴリーの中に入れられていますけどね、根っこのところは商人だと自負してます。それも芸術的商人」

「芸術的商人ですか?」

「ええ、美しく商いをするんです。美学に反するような商売は、たとえ儲けが大きくてもやらないし、やらせません」

「ええと……誘拐も美学だったりします?」

「ええ、美学です」

「あ……そうか、美学だから、いっしょにお風呂とか入ってるんですね」

「その通りです」

「なるほど……」

「美しく商売をしようと思ったら、商売相手も美しい方がいい。いまの日本は美しいエンペラーが君臨されています」

「わたしの伯母さまですね」

「ええ、そして皇嗣殿下である須磨の宮さまが御薨去されて、現在の皇嗣殿下は、こんなにお可愛くていらっしゃる心子内親王殿下です」

「は、はい。可愛いかどうかは分かりませんが(^_^;)」

「いえ、可愛いです。銀河を股にかけて飛び回ってきましたが、こんなに人柄が良くて可愛いお世継ぎは見たことがありません」

「えと……」

「はい?」

「船長は、人をけなす前には、思いっきり持ち上げたりするタイプですか?」

「どうでしょう……殿下のお人柄を棚卸することは、このアルルカン誓ってありません。商売人の要諦はマーケティングリサーチです。こうやって、いっしょにお風呂に入るまでには、ご想像の百倍くらいは調査研究しております」

 ああ、なんか緊張する。

「殿下が、このまま皇位にお付きになれば、皇統の女系化が確定してしまいます」

「えと……」

「これからの日本、日本に影響を呼ぼされる世界にとって、これは大きな問題なのです」

「でも、皇統のことは憲法改正までやって、今上陛下に決まったわけですから……」

「憲法など、三千年の歴史の中ではハナクソみたいなもんですよ」

「ハナクソ……」

「近い将来、ふたたび日本は混乱に巻き込まれます。その萌芽は、西之島の沖にすでに現れています。その混乱の中で、日本は、もう一度皇統に関する問題を突きつけられます。三千年の歴史の流れの中では、殿下以外にも皇統を継ぐべき者がいます」

「それは……」

「扶桑の宮五世孫にあたる、扶桑幕府将軍、扶桑道隆。同じく、五世孫の森ノ宮親王。お二人とも火星にお住まいです。ここに、現憲法上の皇嗣である心子内親王殿下が火星にお住まいになったら、ちょっと面白い。それに、皇嗣の資格をお持ちの方は、他にもおられるかもしれませんしね……」

「ああ、もう……船長は意地悪です」

「悩める意地悪です。はてさて、火星のどこにお送りすべきか……よし!」

「どうするんですか!?」

「コーヒー牛乳の一気飲みをして、そして、卓球をしましょう! これが、順序でしょ!」

「むう……その前に、髪を洗って背中を流しましょう! 船長のは、大事なところを省略してます! お風呂は身をきれいにするところです」

「おお、これは一本取られました!」

 アハハハハ

 二人で笑っていると、湯気の向こうでガラス戸が開いてサンパチさんが、アルミカンさん達と一緒にお風呂に入ってきた。

 みんなで仲良くお風呂に浸かって、コーヒー牛乳を飲んで、大温泉卓球大会になりました。




※ この章の主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
森ノ宮親王
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン             太陽系一の賞金首 パイレーツクィーン:メアリ・アン・アルルカン(手下=ツナカン、サケカン)
氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘

 ※ 事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)



 
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