212 / 393
200『お岩食堂の物干しにて』
しおりを挟む
銀河太平記
200『お岩食堂の物干しにて』越萌マイ
わあ…………ほどよい見晴らしだねぇ!
挨拶する前に劉宏は感動した。
お岩食堂の物干しは天井の高い店舗部分の上に継ぎ足しで作られた二階部分のその上にある。
普通の建物の基準で言えば四階建の屋上にあたるから、学校の屋上ほどの高さ。
「士官学校も物干場(ブッカンバ)は屋上にあってね、ちょうど高さもこんな感じ……あ、ブッカンバというのは物干しのことね。日本語の言語設定にすると軍隊用語のまんまで……ちょっと変えるね」
コクンと頷くような仕草。
「オフの時は、このボディーのデフォルトにしてるの」
「元は、王春華なのよね」
「うん、春華も大統領秘書なんかやってたから大人ぶってたけど、ベースはこんな感じ。春華はもういないけど、せめてオフの時はね」
「そうね、それがいいわね」
「身に合わない高さから見てると……」
判断を誤る?
「疲れるでしょ……洗濯物の匂いも素敵、シキシマ石鹸かな?」
「日本の洗剤も分かるの?」
「士官学校では青島石鹸使ってたの。青島石鹸はシキシマが漢字の敷島だったころに技術移転したから同じなのよ。絹物とかには向かないけど木綿や化学繊維には絶大な洗浄力。なんと言っても安いしね」
「そうなんだ、青島っていえばビールかと思ってたけど、洗剤もあったのね」
「わたしはね……漢明と世界の関り方を見直そうと思ってるの」
「関わり方?」
「うん、中国というのは古来統一と分裂を繰り返してきた。今の漢明は東北部や西部を手放しているわ」
「え、ひょっとして、今度は漢明じゃなくて大唐帝国にでも拡大するつもり?」
「ああ、それはナイナイ(^〇^;)」
両手をワイパーのようにハタハタさせる、この可愛さは反則だ。
「ただね、離合集散は東アジアの生理みたいなものだから、大統領のわたしがドーコー言っても抗えるものじゃないと思うの。日本が古来から一つにまとまっているのも生理だと思う。それと同じ、っていうか、現象的には真逆だけどぉ、これから一つになっていこうとするのを押しとどめるのは、かえって漢明にも、周囲の国々にも良くない気がする」
「うん、半分分かるかなあ……」
「それぞれの国や地方が自治権を持ったままで、ゆるやかな国家連合的な?……みたいな?……ぽいもの? そんな感じ」
「アメリカ的な?」
「南北戦争とかはしたくないし」
「むつかしいねぇ……」
「まあ、その第一歩として西之島といい関係でありたいわけですよ」
「それは同感……でも、なんで、そんな話をわたしに? 食堂の物干し場で話すことでもないような気がするけど?」
「あ、そうね。石鹸の匂いが同じなんで、ついね、話が膨らんじゃった(^_^;)」
「フフ、よかったら、あとで釣りでもする? 神社の裏良く釣れるし、魚はこの食堂でいくらでも調理してくれるし」
「あ、うん、いいね!」
「よし!」
話がまとまったところで、下からお岩さんの呼ぶ声。
お偉いさんが、みんな集まって来てるよお!
ふたり、手を振ったり頭を下げて下に下りていった。
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来 (おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ (あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二 (ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥 (児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵 (孫大人) 児玉元帥の友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室 (氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長 (マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席 (周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王 (ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟
200『お岩食堂の物干しにて』越萌マイ
わあ…………ほどよい見晴らしだねぇ!
挨拶する前に劉宏は感動した。
お岩食堂の物干しは天井の高い店舗部分の上に継ぎ足しで作られた二階部分のその上にある。
普通の建物の基準で言えば四階建の屋上にあたるから、学校の屋上ほどの高さ。
「士官学校も物干場(ブッカンバ)は屋上にあってね、ちょうど高さもこんな感じ……あ、ブッカンバというのは物干しのことね。日本語の言語設定にすると軍隊用語のまんまで……ちょっと変えるね」
コクンと頷くような仕草。
「オフの時は、このボディーのデフォルトにしてるの」
「元は、王春華なのよね」
「うん、春華も大統領秘書なんかやってたから大人ぶってたけど、ベースはこんな感じ。春華はもういないけど、せめてオフの時はね」
「そうね、それがいいわね」
「身に合わない高さから見てると……」
判断を誤る?
「疲れるでしょ……洗濯物の匂いも素敵、シキシマ石鹸かな?」
「日本の洗剤も分かるの?」
「士官学校では青島石鹸使ってたの。青島石鹸はシキシマが漢字の敷島だったころに技術移転したから同じなのよ。絹物とかには向かないけど木綿や化学繊維には絶大な洗浄力。なんと言っても安いしね」
「そうなんだ、青島っていえばビールかと思ってたけど、洗剤もあったのね」
「わたしはね……漢明と世界の関り方を見直そうと思ってるの」
「関わり方?」
「うん、中国というのは古来統一と分裂を繰り返してきた。今の漢明は東北部や西部を手放しているわ」
「え、ひょっとして、今度は漢明じゃなくて大唐帝国にでも拡大するつもり?」
「ああ、それはナイナイ(^〇^;)」
両手をワイパーのようにハタハタさせる、この可愛さは反則だ。
「ただね、離合集散は東アジアの生理みたいなものだから、大統領のわたしがドーコー言っても抗えるものじゃないと思うの。日本が古来から一つにまとまっているのも生理だと思う。それと同じ、っていうか、現象的には真逆だけどぉ、これから一つになっていこうとするのを押しとどめるのは、かえって漢明にも、周囲の国々にも良くない気がする」
「うん、半分分かるかなあ……」
「それぞれの国や地方が自治権を持ったままで、ゆるやかな国家連合的な?……みたいな?……ぽいもの? そんな感じ」
「アメリカ的な?」
「南北戦争とかはしたくないし」
「むつかしいねぇ……」
「まあ、その第一歩として西之島といい関係でありたいわけですよ」
「それは同感……でも、なんで、そんな話をわたしに? 食堂の物干し場で話すことでもないような気がするけど?」
「あ、そうね。石鹸の匂いが同じなんで、ついね、話が膨らんじゃった(^_^;)」
「フフ、よかったら、あとで釣りでもする? 神社の裏良く釣れるし、魚はこの食堂でいくらでも調理してくれるし」
「あ、うん、いいね!」
「よし!」
話がまとまったところで、下からお岩さんの呼ぶ声。
お偉いさんが、みんな集まって来てるよお!
ふたり、手を振ったり頭を下げて下に下りていった。
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来 (おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ (あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二 (ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥 (児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵 (孫大人) 児玉元帥の友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室 (氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長 (マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席 (周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王 (ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる