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266『孫鎮の空を飛ぶ』
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銀河太平記
266『孫鎮の空を飛ぶ』 東鈴
鈴麗のお骨をお墓に収めて、悟兵とあたしを乗せた筋斗雲は孫鎮の空を旋回している。
「このくらいの集落が悟兵には合っているのかもねぇ……」
百個余りの戸数は、愛着さえ持っていれば村全員の顔と名前が覚えられそう、そういう規模が悟兵には合っている。正直な感想だし、珍しくシンミリしている悟兵に掛ける言葉として適当だと思った。
「この孫鎮でも手に余る気がするアルよ」
「あら、弱気ねえ」
「鈴麗とは二言三言しか話したことないアル」
「仕方ないでしょ、モンゴルであんなドンパチが始まっちゃうんだもん」
「そうアルけどな……」
「何事も自分の目で見て、自分でやれることは自分でやっておこうという姿勢は悪くないと思うわよ」
「そうアルなあ……」
「そうよ、モンゴルへの足場も補強できたし、劉宏大統領との絆も確かめられたし、なにも間違っていないわよ」
「しかしなあ……連れて行ってやってたら、凛麗はあんな目には遭わせなかったアル」
「鈴麗は可哀そうだけど、まだ小間使い同然の鈴麗を連れていくのは無理だったでしょ。悟兵もそう思ったんじゃない」
「そうアルなあ……」
「それにさぁ、そういう言い方されると、わたしが付いて行ったのがひどく間違いだったように聞こえるんですけど」
「そうアルなあ……」
「もう、 数を言えるようになったばかりの子どもみたいに『そうアル』ばっかし。 いいかげんにしないと『そうアル・三・四大魔王』って呼ぶぞ。あたしだって、悟兵の秘書、相棒なんだからね」
「鈴麗を連れて行かなかったのは、老婆婆が強く勧めたせいもあるかもアル」
「ん、なにそれ?」
「老婆婆に言われると、取りあえず『否』の字が頭に浮かぶアル」
「老婆婆コンプレックス? ちょっとキショク悪いんですけど」
「よし、もう一度墓の上を飛んで北京に向かうぞ!」
「そうよ、劉宏大統領にも呼び出されてるんだから……って、ちょっと小回りし過ぎじゃない? 目が回りそうなんですけどぉ……ウプ(>・<)」
「え、こういう時って口を押えるアルないか?」
え、思わずお腹を押さえていた。
鈴麗が頬を染めてクスっと笑ったような気がした。
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく) 輸送船の船長 大統領府参与
朱 元尚 大佐 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟
266『孫鎮の空を飛ぶ』 東鈴
鈴麗のお骨をお墓に収めて、悟兵とあたしを乗せた筋斗雲は孫鎮の空を旋回している。
「このくらいの集落が悟兵には合っているのかもねぇ……」
百個余りの戸数は、愛着さえ持っていれば村全員の顔と名前が覚えられそう、そういう規模が悟兵には合っている。正直な感想だし、珍しくシンミリしている悟兵に掛ける言葉として適当だと思った。
「この孫鎮でも手に余る気がするアルよ」
「あら、弱気ねえ」
「鈴麗とは二言三言しか話したことないアル」
「仕方ないでしょ、モンゴルであんなドンパチが始まっちゃうんだもん」
「そうアルけどな……」
「何事も自分の目で見て、自分でやれることは自分でやっておこうという姿勢は悪くないと思うわよ」
「そうアルなあ……」
「そうよ、モンゴルへの足場も補強できたし、劉宏大統領との絆も確かめられたし、なにも間違っていないわよ」
「しかしなあ……連れて行ってやってたら、凛麗はあんな目には遭わせなかったアル」
「鈴麗は可哀そうだけど、まだ小間使い同然の鈴麗を連れていくのは無理だったでしょ。悟兵もそう思ったんじゃない」
「そうアルなあ……」
「それにさぁ、そういう言い方されると、わたしが付いて行ったのがひどく間違いだったように聞こえるんですけど」
「そうアルなあ……」
「もう、 数を言えるようになったばかりの子どもみたいに『そうアル』ばっかし。 いいかげんにしないと『そうアル・三・四大魔王』って呼ぶぞ。あたしだって、悟兵の秘書、相棒なんだからね」
「鈴麗を連れて行かなかったのは、老婆婆が強く勧めたせいもあるかもアル」
「ん、なにそれ?」
「老婆婆に言われると、取りあえず『否』の字が頭に浮かぶアル」
「老婆婆コンプレックス? ちょっとキショク悪いんですけど」
「よし、もう一度墓の上を飛んで北京に向かうぞ!」
「そうよ、劉宏大統領にも呼び出されてるんだから……って、ちょっと小回りし過ぎじゃない? 目が回りそうなんですけどぉ……ウプ(>・<)」
「え、こういう時って口を押えるアルないか?」
え、思わずお腹を押さえていた。
鈴麗が頬を染めてクスっと笑ったような気がした。
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく) 輸送船の船長 大統領府参与
朱 元尚 大佐 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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