銀河太平記

武者走走九郎or大橋むつお

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268『西之島にセスナ機みたいに着陸する』

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銀河太平記

268『西之島にセスナ機みたいに着陸する』 東鈴 




 もし、地球というものに意識とかソウルとかがあるとしたら、地上の支配者である人類に不満やら期待やら言いたいことがいっぱいあるに違いない。地表に出現して、たかだか百万年あるかないかのクソ虫、目方を計っても世界中のアリンコの総重量ほども無い。そいつらが、三百年前には核を、そして二十三世紀に入ってからはパルスエネルギーを使うようになって、その使いようによっては母なる地球自体をも滅ぼしかねない――何様のつもりだ!?――と噴き出た不満やら期待やらが、堪えきれずに吐き出した毒。それが海上で凝り固まったような島。毒はまだまだ噴き出しきれずにモクモクと煙となって噴き出されているみたい。

 筋斗雲のキャノピーを通して見える西之島は、そんな風に見えた。

「ハハ、東鈴にも毒に見えたか?」

「ん? なんで分かるのよ!?」

「ずっといっしょにいるからなあ、どこか似てきてしまうんだろ」

「気持ち悪いんですけど」

「まあ、そう言うな。毒は使いようによってはクスリにもエネルギーにもなる。だから四万人……いまはそれ以上か……人が住むようになって、日夜パルス鉱を掘り出してる。面白い島アル……」

 ウィーーーン

 筋斗雲はマブチモーターそっくりの音を響かせて着陸態勢に入る。

「え、空港に下りるんじゃないの?」

「表玄関はつまらないアル」

 筋斗雲は垂直離着陸ができるんだけど、悟兵は、まるで大昔のセスナ機みたいにゆっくりと飛行場とも呼べない空き地目指して降りていく。

 空き地の右が海、左が緩い岩場、岩場には何本かの舗装されたのやら未舗装やらの道が見える。道は島の西やら東に伸びて、胡同とかナバホ村とかに繋がって、山の向こうの役所や新興住宅地に及んでいるんだろうね。いくつかの道はカンパニーの鉱山に繋がっているようで、鉱夫らしい人間やロボットが行き来している。

 空き地と海岸の間に『鳥居』と云うんだろうね、略字の門みたいなのがあって、関帝廟に似た、でも関帝廟よりは地味な祠の屋根。祠の向こうには、ささやかに漢明の国旗を立てた二階建て、たぶん漢明の連絡所。

 空き地から、ちょっと岩場に入ったところに小学校の講堂ぐらいの赤屋根。赤屋根には物干し台があって、洗濯ものがたなびいてる。あれが悟兵ご贔屓のお岩食堂。

「なに食っても美味しいぞぉ」

「あ、人がいっぱい出て来たぁ!」

「そりゃあ、孫大人の御来光だからなぁ、みんな心待ちにしてくれてるアルよ~~(^▢^)!」

 真っ先に予想停止位置に駆けつけてきたのは、赤白の巫女服にエプロンを付けたサルみたいなやつ。

「東鈴は初めてだ、愛想よくするアルよ~」

「分かってるわよ」

 カチャ

 キャノピーを開けると、目の前にサル!

「お帰り! 孫大人! お帰り! フーチャ……(☉Д⊙)」

 フーチャまで言って、サルの目が険しくなる。

「だれだ、この女? フーちゃんはいねえのかよ(ー"ー;)!」


 着いた早々、めっちゃ気分悪いんですけど!

 


☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)        輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟

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