56 / 161
56『正念寺の光奈子・6 第六回日本高校ダンス部選手権』
しおりを挟む
ミナコ転生
56『正念寺の光奈子・6 第六回日本高校ダンス部選手権』
光奈子の目は、釘付けになった……!
新聞の真ん中のページに『第六回日本高校ダンス部選手権』が、見開きいっぱいに載っていたのである。見出しの下には、最優秀や、優秀賞の学校の晴れ姿が何枚も紙面を飾っていた。
「え、全国ネットで放送!」
何とも言えない悔しさや、嫉妬心で胸がいっぱいになった。十月にFテレビでほとんど90分使って放送される。
高校演劇は、長崎で全国大会が行われ、大阪の高校が最優秀になった。そのことだけでもオモシロクナカッタ!
東京に比べ、大阪は質・量ともに半分だと思っていたからだ。それでも、このダンス部の目立ちようというか、厚遇ぶりにはムカツイタ! 参加校は、全国で235校に過ぎない。おそらく高校演劇の1/10ほどでしかないだろう。それが、それが……!
「それが、どうかした?」
いきなり、アミダさんが網田美保のナリで光奈子の横に現れた。ちなみに場所は、本堂の外陣(げじん)である。ご本尊の阿弥陀様にオッパンを差し上げたあと、新聞を取りに行って、ここで読むのが光奈子の習慣になっている。
大抵は、一面をザッと見て、パラパラと30秒ほどで全ページを眺めて、テレビ欄で二三分というのが平均で、最近の例外は、東京オリンピックの開催決定ぐらいのものだった。
でも、今日は違う。これを見てしまったのだ。
「不公平だと思わない。演劇部だって、こんなに頑張ってるのに!」
「そっかな?」
「え、なによ、それ!?」
アミダさんは、美保のニンマリ笑いのまま消えてしまった。
「朝から冷やかしだなんて、仏さんがやることじゃないわよ!」
と、ご本尊に当たり散らして、学校に行った。
「藤井、朝から機嫌が悪いな。なんかあったか?」
「なんにもありません!」
親切な担任にまで、当たり散らした。
「ちょっと、図書館にパソコン見にいこう」
昼休みに、網田美保が誘いに来た。
「YOU TUBEで、ちょっと見てご覧よ」
美保は、カチャカチャと『高校演劇』の動画を出した。そこそこにアップロードされているが、なんか日頃の稽古風景や、コンクールの断片みたいなのが多かった。
「けっこうあるじゃん」
「アクセス数見てご覧」
「あ……」
光奈子は納得した。高校演劇のアクセスは、何百ってのが大半で一万を超えるのは、ほんの数本。ところがダンス部は、数万というのがザラにあった。
「演劇部って、関心がひくいんだよね……」
「他人事みたいに言うんじゃないわよ」
「あたしは、がんばってるわよ!」
「じゃ、なんで『クララ』を演るわけ?」
「そりゃ、アミダさんが……」
「ほら」
「え?」
「ほんとうにやりたいのなら、やりたい本の二三本は持ってなくっちゃ。いつも台本は、篠田先生任せじゃないの」
「それは、昔から……」
「これ、見てごらん」
図書館の一角に部室が浮かび上がった。十人近い生徒が、熱い議論をしていた。実存主義とか、異化効果だとか、ベケット、イヨネスコ、その他いろいろ、光奈子の分からない単語で口角泡を飛ばしていた。どうやら、やりたい芝居がいっぱいあって、みんなで論議していいるようだ。
「これ、あんたたちの先輩。もう50年ほど昔のね」
「高校生じゃないみたい……」
「あのころはね……」
美保が指し示した書棚には、二段丸ごと演劇関係の本で埋まっていた。
「で、今は……」
ラノベが、それに変わっていた。
「レベルが、まるで違う……」
「まあ『コクリコ坂から』の世界だと思えばいい。あと、これ見て」
劇場いっぱいの観客、その中でかなりの割合で混じっている高校生。見ている芝居は、ことごとく大人の芝居だった。赤や黒のテント劇場もあった。そして、何十万冊という演劇の本、原稿、そしてカタチにならない芝居への情熱、そういうものが、ワッと光奈子に押し寄せてきた。
「ついでに、これも感じて……」
光奈子の心に、心地よいけど、荒々しい情念と疲労感が占めた。演劇部の部活では感じたことがないものだった。
「なに、これ……」
「あるダンス部員が、練習の終わりに感じているものよ」
「こんなに入れ込んでるんだ……」
「それが分かればいいわ。じゃ、またクラブで」
そう言って美保は、行ってしまった。
パソコンの電源を落とし、シャットダウンを待っていると、文学書のコーナーで、懐かしい気配がした。
「ひなの……!」
こないだ亡くなったばかりのひなのが、何冊も文学書を積み上げて……一心不乱に読んでいた。
56『正念寺の光奈子・6 第六回日本高校ダンス部選手権』
光奈子の目は、釘付けになった……!
新聞の真ん中のページに『第六回日本高校ダンス部選手権』が、見開きいっぱいに載っていたのである。見出しの下には、最優秀や、優秀賞の学校の晴れ姿が何枚も紙面を飾っていた。
「え、全国ネットで放送!」
何とも言えない悔しさや、嫉妬心で胸がいっぱいになった。十月にFテレビでほとんど90分使って放送される。
高校演劇は、長崎で全国大会が行われ、大阪の高校が最優秀になった。そのことだけでもオモシロクナカッタ!
東京に比べ、大阪は質・量ともに半分だと思っていたからだ。それでも、このダンス部の目立ちようというか、厚遇ぶりにはムカツイタ! 参加校は、全国で235校に過ぎない。おそらく高校演劇の1/10ほどでしかないだろう。それが、それが……!
「それが、どうかした?」
いきなり、アミダさんが網田美保のナリで光奈子の横に現れた。ちなみに場所は、本堂の外陣(げじん)である。ご本尊の阿弥陀様にオッパンを差し上げたあと、新聞を取りに行って、ここで読むのが光奈子の習慣になっている。
大抵は、一面をザッと見て、パラパラと30秒ほどで全ページを眺めて、テレビ欄で二三分というのが平均で、最近の例外は、東京オリンピックの開催決定ぐらいのものだった。
でも、今日は違う。これを見てしまったのだ。
「不公平だと思わない。演劇部だって、こんなに頑張ってるのに!」
「そっかな?」
「え、なによ、それ!?」
アミダさんは、美保のニンマリ笑いのまま消えてしまった。
「朝から冷やかしだなんて、仏さんがやることじゃないわよ!」
と、ご本尊に当たり散らして、学校に行った。
「藤井、朝から機嫌が悪いな。なんかあったか?」
「なんにもありません!」
親切な担任にまで、当たり散らした。
「ちょっと、図書館にパソコン見にいこう」
昼休みに、網田美保が誘いに来た。
「YOU TUBEで、ちょっと見てご覧よ」
美保は、カチャカチャと『高校演劇』の動画を出した。そこそこにアップロードされているが、なんか日頃の稽古風景や、コンクールの断片みたいなのが多かった。
「けっこうあるじゃん」
「アクセス数見てご覧」
「あ……」
光奈子は納得した。高校演劇のアクセスは、何百ってのが大半で一万を超えるのは、ほんの数本。ところがダンス部は、数万というのがザラにあった。
「演劇部って、関心がひくいんだよね……」
「他人事みたいに言うんじゃないわよ」
「あたしは、がんばってるわよ!」
「じゃ、なんで『クララ』を演るわけ?」
「そりゃ、アミダさんが……」
「ほら」
「え?」
「ほんとうにやりたいのなら、やりたい本の二三本は持ってなくっちゃ。いつも台本は、篠田先生任せじゃないの」
「それは、昔から……」
「これ、見てごらん」
図書館の一角に部室が浮かび上がった。十人近い生徒が、熱い議論をしていた。実存主義とか、異化効果だとか、ベケット、イヨネスコ、その他いろいろ、光奈子の分からない単語で口角泡を飛ばしていた。どうやら、やりたい芝居がいっぱいあって、みんなで論議していいるようだ。
「これ、あんたたちの先輩。もう50年ほど昔のね」
「高校生じゃないみたい……」
「あのころはね……」
美保が指し示した書棚には、二段丸ごと演劇関係の本で埋まっていた。
「で、今は……」
ラノベが、それに変わっていた。
「レベルが、まるで違う……」
「まあ『コクリコ坂から』の世界だと思えばいい。あと、これ見て」
劇場いっぱいの観客、その中でかなりの割合で混じっている高校生。見ている芝居は、ことごとく大人の芝居だった。赤や黒のテント劇場もあった。そして、何十万冊という演劇の本、原稿、そしてカタチにならない芝居への情熱、そういうものが、ワッと光奈子に押し寄せてきた。
「ついでに、これも感じて……」
光奈子の心に、心地よいけど、荒々しい情念と疲労感が占めた。演劇部の部活では感じたことがないものだった。
「なに、これ……」
「あるダンス部員が、練習の終わりに感じているものよ」
「こんなに入れ込んでるんだ……」
「それが分かればいいわ。じゃ、またクラブで」
そう言って美保は、行ってしまった。
パソコンの電源を落とし、シャットダウンを待っていると、文学書のコーナーで、懐かしい気配がした。
「ひなの……!」
こないだ亡くなったばかりのひなのが、何冊も文学書を積み上げて……一心不乱に読んでいた。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し
有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。
30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。
1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。
だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。
そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。
史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。
世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。
全くのフィクションですので、歴史考察はありません。
*あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。
魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで
ひーにゃん
ファンタジー
誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。
運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……
与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。
だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。
これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。
冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。
よろしくお願いします。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる