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82『ベータ星の秘密』

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時かける少女

82『ベータ星の秘密』         

 


☆………突然の攻撃

「ガンマ星なんかには行かへんぞ」

 マーク船長の答は簡単だった。

「なぜなの、船長?」
「ベータ星は、母星のガンマ星と係争中や。連邦の外交船でもないのに、行く義務はない」
「でも、王女様が困ってるって」
「忌々しいアルルカンめ、バルス、代わりに説明したってくれ。オレは寝る!」
「なんで、ふて寝……」

 キャビンデッキに降りる船長に一言言おうとしたら、バルスが話し始めた。

「係争中の星に儀礼ではなくて、王女の慰めなんかに行ったら、係争に巻き込まれてしまう」
「母星のガンマ星の支配宙域も広いわ。うまく行っても、その後、進路妨害されるかもしれない」
 コスモスが、あとを続けた。
「わたしも悪い予感がする……」
 ミナホがミナコの肩に手を置いて言った。
「どうも、あのアルルカン大使には裏があるような気がする」

「それにベータ星には、水銀の海がある」

「水銀の海?」
「星のあちこちに散らばっているけど、合わせると地中海ほどの広さになる。ベータ星人は水銀に耐性があるが、地球人には毒だ」
「水銀中毒になるのね」
「ああ、大気中の水銀濃度は、地球の95倍だ。地球人の滞在時間は一週間が限度だ。そんな星の王女様を慰めにいったら……分かるだろ、ミナコ」

「パルスキャノン反応。シールド展開!」

 コスモスが忙しく、パネルを操作する。バルスは、右舷のキャノン砲をオートにした。パルスキャノンをパルスキャノンで相殺するのだ。

「だめだ、30秒後に飽和攻撃になる。全弾はよけきれない。衝撃に備えろ!」

 そのとき、船長がパジャマ姿で駆け上がってきた。

「おい、船の識別コードがガンマ船になってるぞ!」
「こっちのモニターでは、地球船です!」
「コントロールをオレによこせ!」

 スタビライザーの限界を超えて、船長は曲芸のような操縦をしてパルス弾をかわしていく。ミナコはコックピットの中を転げ回った。

「あかん、次の三発ははよけきれん!」

 ドッゴーーーーーン!!

 直後に大きな衝撃がきて、ミナコは気を失った……。

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