76 / 109
76〔13日の金曜日〕
しおりを挟む
明神男坂のぼりたい
76〔13日の金曜日〕
ウ、ウンコふんでしまった!!
これがケチのつき初めだった。
いまどき東京でウンコ踏むってめったにないことだぜ。
東京オリンピックが、まだ準備段階の頃に、緑色のよく似合う都知事が記者会見で「東京は清潔な街です」をアピールしていて、意地の悪い記者が「わたし、昨日ウンコ踏んじゃいました」と反論。
「おや、それはレアなケースですね」
と返したら、記者席からは――そうだそうだ――という感じで笑い声があがった。
今のあたしは、その記者の気分(-_-;)。道行く人たちが、その時笑った記者たちみたいに思える。
ウンがついてケチが付く『明日香ウンケチ事件!』。バカなキャプションが頭に浮かぶ。
ティッシュであらかた落としたけど、そこはかと臭いが残る。
だけど、通学途中。家に帰って靴履き替える手もあったんだけど、先日の紫陽花アパートよりも学校寄りのところまで来ている。気持ちは迷いながら体が学校の方に向いていく。
犬のウンコぐらい、あらかた拭き取ったし、歩いてるうちに無くなる……という考えは交差点の信号待ちで甘いことを実感した。
信号待ちの人たちがあたしのこと見てる。
やっぱりそこはかとなく臭ってるんだ(;'∀')。
まるであたしがオモラシしたみたい。
しかたないので、公園の水道で、靴の中濡らさないようにして洗って、ティッシュで拭く。嗅いでみる……やっぱり、そこはかとなく臭いが残ってる。で、もっかいチャレンジ。
「ウン踏んじゃった?」
都知事を〇十年若くした感じのOLさんが声をかけてくれた。
「はい、とってもレアなことなんですけど」
「ほんとに、マナーの悪い人がいるものねえ」
そう言って、OLさんは携帯用の臭いけしを靴にスプレーしてくれた。
将来、この人が都知事に立候補したら、ぜったい一票入れるよ!
「じゃ、気をつけてね。今日は13日の金曜だし」
警句を残して去り行くOLさんに深々と頭を下げる。
13日の金曜日……改めてスマホをチェックすると、まごうことなき6月13日金曜の日付。
あたしにはさつきってのが憑いてる。
世間では滝夜叉姫で通っていて、丑の刻参りの発案者であったりする。神田明神の娘なんだから、せめてウン避けの御利益ぐらいあってもいいと思うんだけど、今では、ほとんどだんご屋のおねえちゃんで、頼りにならない。
明神さまに『開ウン御守り』というのはあるけど『ウン避け御守り』は無いよなあ、あったら買うのに。
バカなことを考えながら、次の交差点。
――あ、信号変わる!――
そう思ったら体が出ていた。そこに気の早い車が走り出して急ブレーキ! その車と、その後ろの車がクラクション。一応ごめんなさいと片手で謝る……ぐらいで許してもらえるほど、13日の金曜日は甘くない。
「ちょっと、そこのTGHの生徒!」
お腹の底から出てくるような声。道の向こうで怖い顔した女性警官のオネエチャン(なんで、こんな慌ててる時に二重表現!?)
「あなたねえ、高校生にもなったら信号ぐらいまもりなさいよ」
「はい」と、素直に言えないのが、あたしの欠点。枕詞が「だけど……」言ったしりから後悔。
「だけど、なんなの!」
ダメだ、婦警(女性警官なんちゅうリズムのとれない言葉は直ぐには出てこない)さん怒らせてしまう。
「なんでもありません。急いでたから、ほんとに不注意でした。すんませんでした!」
「その素直さを、どうして、もう10秒早くもてないのかなあ。今のは、ほんと、大事故寸前だったよ。だいたいね……」
と、5分ほど絞られて、やっと解放。
ダメだ、チャイムが鳴ってる、遅刻指導にひっかかる。なんでかチャイムがチャラ~ンポラ~ン、チャランポラ~ンに聞こえる。猛烈なダッシュで校門をくぐる。運動会で、これだけのダッシュしてたら、ゴール前で無様にコケなくてすんだのに。
あ、朝礼が始まる。ガンダムは遅刻にうるさい。教壇に立たされて絞られる!
と、思ったら、ガンダムが来てなかった。
「あ~あ、損したなあ!」
汗みずくだったので、タオルハンカチ出して顔拭きまくり、胸の第二ボタン外して脇の下まで拭く。
「どうしたん、明日香がこんな時間に来るなんて?」
「今日は、13日の金曜なの!」
言った言葉が、そのままウンコから、婦警のネエチャンのことまで思い出させる。ゆかりの言葉に合わせて美枝が言う。
「ひどい顔してるよ」
「ほっといて、生まれつきですねん!」
その時、腋の下からちょっと背中側に回った手が、ブラに引っかかって、ホックが外れてしまった。
ウ…………
「どうしたの、急に静かになって?」
「ちょっと、緊急事態……」
片手でゴソゴソやるけど、背中のホックには届かない。また、汗が流れてくる。そのとき麻友が後ろに回ってマジックみたいに、ホックを嵌めてくれた。
「え……?」
「ブラジルで、よく、この逆やって遊んでたの」
麻友の意外な一面を発見。やっぱり麻友は、いろいろ奥行きのある子だと思った。
とにかく、今日はついてない。
宿題はやったのに持ってくるのん忘れてるし、家庭科の調理実習では塩と砂糖を間違えるし、トイレに行ったら、用事済んでからトイレットペーパーが無いのに気がつく。ポケットをまさぐったら、朝のウンコのせいで手持ちのティッシュも切れてた。
「クソー!」
思わず唸ったら、ドアの上からトイレットペーパーの福音。
「これだろ、明日香」
美枝の声。
「サンキュ……」
とは言ったものの、個室の外で笑ってる気配。
クソ~!
放課後、宇賀先生を校長室の前で見かけた。ガンダムもいっしょだった。
気配で分かった。
宇賀先生は職場に戻りたいんだ。それを校長とガンダムの二人で思いとどまらせたんだ。あの怪我では、まだ無理なのは被ってる帽子見ても分かった。
宇賀先生は、あたしよりずっと前から13日の金曜日なんだ……。
76〔13日の金曜日〕
ウ、ウンコふんでしまった!!
これがケチのつき初めだった。
いまどき東京でウンコ踏むってめったにないことだぜ。
東京オリンピックが、まだ準備段階の頃に、緑色のよく似合う都知事が記者会見で「東京は清潔な街です」をアピールしていて、意地の悪い記者が「わたし、昨日ウンコ踏んじゃいました」と反論。
「おや、それはレアなケースですね」
と返したら、記者席からは――そうだそうだ――という感じで笑い声があがった。
今のあたしは、その記者の気分(-_-;)。道行く人たちが、その時笑った記者たちみたいに思える。
ウンがついてケチが付く『明日香ウンケチ事件!』。バカなキャプションが頭に浮かぶ。
ティッシュであらかた落としたけど、そこはかと臭いが残る。
だけど、通学途中。家に帰って靴履き替える手もあったんだけど、先日の紫陽花アパートよりも学校寄りのところまで来ている。気持ちは迷いながら体が学校の方に向いていく。
犬のウンコぐらい、あらかた拭き取ったし、歩いてるうちに無くなる……という考えは交差点の信号待ちで甘いことを実感した。
信号待ちの人たちがあたしのこと見てる。
やっぱりそこはかとなく臭ってるんだ(;'∀')。
まるであたしがオモラシしたみたい。
しかたないので、公園の水道で、靴の中濡らさないようにして洗って、ティッシュで拭く。嗅いでみる……やっぱり、そこはかとなく臭いが残ってる。で、もっかいチャレンジ。
「ウン踏んじゃった?」
都知事を〇十年若くした感じのOLさんが声をかけてくれた。
「はい、とってもレアなことなんですけど」
「ほんとに、マナーの悪い人がいるものねえ」
そう言って、OLさんは携帯用の臭いけしを靴にスプレーしてくれた。
将来、この人が都知事に立候補したら、ぜったい一票入れるよ!
「じゃ、気をつけてね。今日は13日の金曜だし」
警句を残して去り行くOLさんに深々と頭を下げる。
13日の金曜日……改めてスマホをチェックすると、まごうことなき6月13日金曜の日付。
あたしにはさつきってのが憑いてる。
世間では滝夜叉姫で通っていて、丑の刻参りの発案者であったりする。神田明神の娘なんだから、せめてウン避けの御利益ぐらいあってもいいと思うんだけど、今では、ほとんどだんご屋のおねえちゃんで、頼りにならない。
明神さまに『開ウン御守り』というのはあるけど『ウン避け御守り』は無いよなあ、あったら買うのに。
バカなことを考えながら、次の交差点。
――あ、信号変わる!――
そう思ったら体が出ていた。そこに気の早い車が走り出して急ブレーキ! その車と、その後ろの車がクラクション。一応ごめんなさいと片手で謝る……ぐらいで許してもらえるほど、13日の金曜日は甘くない。
「ちょっと、そこのTGHの生徒!」
お腹の底から出てくるような声。道の向こうで怖い顔した女性警官のオネエチャン(なんで、こんな慌ててる時に二重表現!?)
「あなたねえ、高校生にもなったら信号ぐらいまもりなさいよ」
「はい」と、素直に言えないのが、あたしの欠点。枕詞が「だけど……」言ったしりから後悔。
「だけど、なんなの!」
ダメだ、婦警(女性警官なんちゅうリズムのとれない言葉は直ぐには出てこない)さん怒らせてしまう。
「なんでもありません。急いでたから、ほんとに不注意でした。すんませんでした!」
「その素直さを、どうして、もう10秒早くもてないのかなあ。今のは、ほんと、大事故寸前だったよ。だいたいね……」
と、5分ほど絞られて、やっと解放。
ダメだ、チャイムが鳴ってる、遅刻指導にひっかかる。なんでかチャイムがチャラ~ンポラ~ン、チャランポラ~ンに聞こえる。猛烈なダッシュで校門をくぐる。運動会で、これだけのダッシュしてたら、ゴール前で無様にコケなくてすんだのに。
あ、朝礼が始まる。ガンダムは遅刻にうるさい。教壇に立たされて絞られる!
と、思ったら、ガンダムが来てなかった。
「あ~あ、損したなあ!」
汗みずくだったので、タオルハンカチ出して顔拭きまくり、胸の第二ボタン外して脇の下まで拭く。
「どうしたん、明日香がこんな時間に来るなんて?」
「今日は、13日の金曜なの!」
言った言葉が、そのままウンコから、婦警のネエチャンのことまで思い出させる。ゆかりの言葉に合わせて美枝が言う。
「ひどい顔してるよ」
「ほっといて、生まれつきですねん!」
その時、腋の下からちょっと背中側に回った手が、ブラに引っかかって、ホックが外れてしまった。
ウ…………
「どうしたの、急に静かになって?」
「ちょっと、緊急事態……」
片手でゴソゴソやるけど、背中のホックには届かない。また、汗が流れてくる。そのとき麻友が後ろに回ってマジックみたいに、ホックを嵌めてくれた。
「え……?」
「ブラジルで、よく、この逆やって遊んでたの」
麻友の意外な一面を発見。やっぱり麻友は、いろいろ奥行きのある子だと思った。
とにかく、今日はついてない。
宿題はやったのに持ってくるのん忘れてるし、家庭科の調理実習では塩と砂糖を間違えるし、トイレに行ったら、用事済んでからトイレットペーパーが無いのに気がつく。ポケットをまさぐったら、朝のウンコのせいで手持ちのティッシュも切れてた。
「クソー!」
思わず唸ったら、ドアの上からトイレットペーパーの福音。
「これだろ、明日香」
美枝の声。
「サンキュ……」
とは言ったものの、個室の外で笑ってる気配。
クソ~!
放課後、宇賀先生を校長室の前で見かけた。ガンダムもいっしょだった。
気配で分かった。
宇賀先生は職場に戻りたいんだ。それを校長とガンダムの二人で思いとどまらせたんだ。あの怪我では、まだ無理なのは被ってる帽子見ても分かった。
宇賀先生は、あたしよりずっと前から13日の金曜日なんだ……。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる